第1話 新しい出会い
あきらは、宮田さんが訪れる日が来ることに、予想以上に心が揺れていた。玄関のチャイムが鳴ると、ドキドキと緊張が高まり、手のひらが汗ばんだ。扉を開けると、そこには予想以上に優しそうな笑顔の宮田さんが立っていた。
「こんにちは、あきらさん。私は宮田です。今日はよろしくお願いしますね。」
宮田さんの明るい声が部屋に響き渡り、その瞬間、あきらの胸の奥にあった重苦しい感情が少しだけ和らぐのを感じた。彼女は丁寧に靴を脱ぎ、リビングに入ると、部屋を見渡してから、あきらの目をまっすぐに見つめた。
「まずは、お話から始めましょうか。あきらさんが今、どんなことに困っているのか、少しずつ聞かせてください。」
あきらは最初、言葉が出てこなかった。しかし、宮田さんの優しい眼差しと、穏やかな口調に励まされるように、少しずつ話し始めた。家庭の厳しさ、学校でのいじめ、職場での罵倒。そして、両親からの過度な期待と虐待。それらすべてが重なり、彼は外の世界と断絶することを選んだのだ。
宮田さんは静かに聞いていたが、時折うなずき、共感の言葉をかけることで、あきらが話しやすいように努めていた。
「それは本当に辛かったですね、あきらさん。でも、今ここにこうして話してくれていることが、すごく大きな一歩だと思います。」
あきらは少しだけ、心が軽くなった気がした。宮田さんの言葉には、不思議と力があり、彼を前向きにさせるものがあった。
「実は、もう一つお伝えしたいことがあるんです。」宮田さんは微笑みながら言った。「感情日記というものをご存じですか?」
あきらは首を振った。宮田さんは説明を続けた。
「感情日記とは、自分の感情や経験をありのままに書き出すものです。それをインターネット上で公開することで、自分の気持ちを整理し、同じような経験をした人たちと共感を得ることができます。あきらさんも、試してみませんか?」
最初は戸惑ったあきらだったが、宮田さんの提案に少しだけ興味を持った。感情を文字にすることで、何かが変わるかもしれないと思ったのだ。
「やってみます。」
あきらのその一言に、宮田さんは大きくうなずき、嬉しそうに微笑んだ。
「素晴らしい決断ですね、あきらさん。これから一緒に、少しずつ進んでいきましょう。」
その日、あきらは初めて感情日記を書き始めた。最初は何を書けばいいのか分からなかったが、宮田さんのアドバイスに従い、感じたことをそのまま書き綴った。彼の心の奥に溜まっていた思いが、少しずつ解き放たれていくようだった。
その夜、あきらは久しぶりに少しだけ心が軽く感じられ、眠りについた。これからの未来が少しだけ明るく見えたのは、宮田さんとの出会いと、感情日記という新たな一歩があったからだ。
彼の新しい生活が、今、ゆっくりと動き出していた。
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