第37話 野菜の皮向き懐かしいな
暗い部屋。朝だと言うのに、部屋のカーテンは閉めきっていて、カーテンの隙間から微かに朝日が差し込むだけで部屋はほとんど暗闇に包まれている。そんな部屋の中、ソファーに座り、テレビを見てる青年が一人いた。背が高く、髪は乱れていてボサボサしている。青年は退屈そうに朝のニュースを見ていた。
『次のニュースです。埼玉県川越市で三日前より行方不明となっている菊地晴人くんに関して、警察は二週間前にも行方不明となっている同じ市の杉崎綾香ちゃんとの件も合わせて、誘拐事件の可能性を視野にいれて捜査を始めると発表しました。警察では…』
「へー、捜査するんだー」
青年はスマホを取りだし、誘拐事件に関してネットで調べる。テレビでは言葉を控えていたが、ネットの掲示板では連続殺人犯の『巡礼者』の仕業だと盛り上がっていた。
「テレビでも、ネットでも君の話題で盛り上がってるよ晴人くん」
青年は後ろのテーブルを見る。そこには手足がテーブルに縛られて大の字になっている全裸の男の子がいた。口はタオルで縛られていて、話せないようにされていた。
「警察がこれから捜査するんだって、どんな捜査するんだろうねー?」
気だるそうに青年は話し、「よいしょ」と言って立ち上がり、男の子の様子を見る。男の子は恐怖に怯えた表情で縛られた手足を動かし、もがいていた。
「見つかったら俺逮捕されるのかな?逮捕されたらどうなんだろうね?人たくさん殺してるし、死刑になるのかな?まあ、それでもいいかもね」
青年は無邪気にフフッと笑う。
「でも死ぬ前に楽しいことはいっぱいやりたいな。君は死ぬ前にやりたいことってある?旅行とか、ゲームとか…」
「んー!んー!」
「あー、タオルで口縛られてるから喋れないよね。でも、タオルとっちゃったら舌噛んで死ぬかもしれないからね。仕方がないか」
青年は台所に向かって歩き出す。歩いている最中足に何かがあたる。下を見るとそこには全身包丁で刺された目をくり貫かれた中年女性の死体があった。青年は「そろそろ片付けなきゃなぁ」と言って台所の棚を漁る。
「お、あったあった♪」
青年は上機嫌で棚からあるものを取り出す。それは野菜の皮をむくピーラーだった。青年はピーラーを持って男の子のところに戻る。
「ねえ、これが何かわかる?野菜の皮をむくやつ。ジャガイモとか、ニンジンの。君くらいの年の小学生なら学校の調理実習とかで使ったことないかな?」
青年は一人事を話続ける。男の子は口を縛られているので、当然返事はない。
「俺昔ね、小学校の調理実習で野菜の皮をむくときにこれ使って皮むいてたの。そしたら、間違って自分の指の皮むいちゃってね。凄い痛かった思い出があってさー」
青年はピーラーで皮をむく動作をする。男の子は急に何の話をしてるのかわからず困惑していた。
「それで急に昨日そのこと思い出してさ、そしたら試してみたくなったんだよね。人の皮むくの」
青年はピーラーを持って男の子の手をつかむ。男の子はこれから何をされるのか想像がつき、できるだけ暴れるが、縛られているために手を振りほどくことはできない。その様子を楽しみながら青年はピーラーを男の子の腕に押し当てた。
「ああ、どんな感じでむけるのかなぁ。楽しみだ♪」
青年は何の躊躇もなくピーラーで男の子の皮膚を剥いだ。剥がれた箇所から大量に出血し、その激痛に男の子は「んー!んー!」と叫び、暴れる。しかし、縛られた手足を解放できず、逃げることはできない。その様子を見て楽しみながら青年は男の子の皮膚をどんどん剥いでいく。
「あは、皮むきって結構楽しいかも!」
「んー!んーーーー!んーーーー!」
痛みで叫び続ける男の子の声を聞きながら、青年は男の子の全身の皮を剥いでいく。青年は笑いながら少年がもがき苦しみ、痛がる様子を見てもやめない。じっくり時間かけて皮膚を剥いでいく。上半身の皮を全て剥いだところで少年は痛みで気絶し、全身の皮をむき終わると死んでしまっていた。
「死んじゃったかー。また新しいの調達しなきゃなー」
青年の両手は血で濡れていて、それが気持ち悪いなと感じた青年は風呂場に向かった。風呂場の扉を開けると、そこには全身皮膚が爛れている全裸の少女の死体が浴槽の中に沈められていた。その様子から熱湯の風呂に無理矢理入れられて溺死したようである。青年はそんな死体に気にせず、鼻唄を歌いながらシャワーを浴びた。
「ふう、スッキリしたー」
青年は風呂から出て着替えて、冷蔵庫から牛乳を取り出してコップに注ぎ、一口飲んだ。
「うまい!」
青年はソファーに座り、テレビを再び見始めた。
「なんか面白い番組やってないかなー?」
青年はてきとうにチャンネルを切り替えていく。そんなことをしながら、テレビを見ていると、後ろから突然足音が聞こえ、青年は振り返った。そこには白髪で白い着物を着た男が立っていた。
「あれ、狂骨じゃん。久しぶり。どうしたの?」
「お久しぶりです。光國様。一つ報告があり参りました」
「へー、何?報告って?」
「昨日、さとるが消滅しました」
「マジで?あの、さとるくんが?」
「はい」
「やったの滅幽会のやつら?」
「いえ。ガイストという心霊調査を請け負う喫茶店の者たちにやられました」
「ガイスト…。花子がいるところ?」
「その通りです」
「ふーん、そうなんだ…」
光國と呼ばれた青年はスマホでガイストに関して検索する。一般的な喫茶店のホームページの下に心霊依頼という項目があり、光國は興味深そうに見る。
「やっぱさとるくんじゃあ花子には勝てないか。強いからなあ、あの女」
「いえ、さとるは花子に負けたわけではありません」
「は?じゃあ、誰にやられたの?」
「影山陸という少年にやられました」
「影山、陸…?誰それ?いや、待てよ。どっかで聞き覚えのある名前だ。確か…」
光國は昔のことを思い出す。今まで殺してきた子供の中で唯一、邪魔が入り殺すことができなかった1人の少年のことを。
「思い出した。あのガキか…!」
光國はニヤッと笑った。
「面白いね。まさかあのガキが僕の部下を殺すまで成長するなんてね…!」
「光國様…?」
愉快そうにニヤニヤしている自分の主に怪訝に思っていると、「狂骨」と光國は呼んだ。
「東北にいるあいつを北海道き行かせてよ。たぶん手が空いてるでしょ」
「あの方ですね。わかりました。それでは、伝えます」
「それと、影山陸にも興味でてきたよ。僕もこれから北海道に行く」
「承知しました」
「狂骨は引き続き、たくさんの人を殺してて。それで、何かあったら報告するように」
「承知しました」
狂骨はそれだけ言い残して姿を消した。光國は一人になり、ソファーから立ち上がった。
「さて俺も移動しようかなー」
光國は狂骨から聞いた話を思い出す。
「北海道か。寿司に、ジンギスカン。北海道美味しいものたくさんあるし、殺しのついでに食べ歩きもしようかなー」
光國はスマホとカバンを持って出かける準備をする。
「徒歩で他のところも観光しながら、ゆっくりと北海道に向かおうかな。いざ、北海道グルメを目指して出発!」
光國は三人の死体を放置し、北海道を目指して旅立った。
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