第36話 手伝えよジジイ

「まさか、勝っちゃうなんてね…」


倒れた影山のそばに花子は立っていた。影山が息をしていることを確認すると、ホッとした表情で影山の頭を撫でた。


「よく頑張ったね、陸」


花子は気を失っている影山を抱え、同じく気を失って倒れている冬野も抱え、花子はトイレに向かった。


「ほほ、大変じゃな」


突然の老人の声で花子は振り返った。そこには、影山の知り合いであるぬらりひょんが立っていた。


「いつからいたの?」


「はて、いつからだったか。ジジイは物覚えが悪くてな」


「ボケ老人め。いるなら手伝ってよ」


「それじゃあ、若者の成長を阻害してしまう。若者の成長を見守ることがジジイの楽しみだからな」


「あっそ。それじゃ、あたし忙しいから」


「此度の戦いで、陸はさらに強くなったのう」


「…それで?」


「巡礼者なんて矮小なもののことはワシには興味はない。ただし、あれの脅威のための戦力となるのであれば、陸の力は必要不可欠だからのう」


「またその話?あたしは反対だよ。陸を巻き込むのは。それは九十九も同じだからね」


「とは言っても力を借りることにはなるであろう。そのためにも、力をより強固なものになってもらわなければな…」


「…本当は、戦いなんてしてほしくないんだけどね」


「ほほ、そんなに陸が可愛いのか?」


ぬらりひょんの問いに、花子はニヤッと笑い頷いた。


「当たり前でしょ?あたしの大好きな幼馴染なんだから」


それだけ言って、花子はトイレに向かった。残されたぬらりひょんは何も言わず、その場からふと消えてしまった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る