第38話 第1章エピローグ

さとるくんの世界での戦いから5日が経過した。影山は何事もなかったみたいに学校で授業を受けていた。


(あれから5日か…)


影山がさとるを討伐し、影山が倒れた後、花子が影山と冬野を水吉の診療所まで連れていった。幸い、冬野は影山の妖術で怪我はなかったため、妖気欠乏症とだけ、診断を受け1日の入院で済んだ。問題は影山の方で、全身傷だらけで、妖気もほとんど空っぽ。水吉曰くもう少し遅ければ死んでいたという。妖気の補充、全身の治療をし、3日の入院で、今に至る。家に帰ると妹の朝に泣きながら叱られてしまったのだった。


(少し学校休んだけど、クラスメイトからの視線が少し怖かったな)


治療のために3日学校を休むことになってしまったが、復帰してみれば特に声をかけられることはなかったが、周りからの視線がやけに気になった。クラスメイトから純粋に心配しての視線なのだが、特に親しいわけではないので、どう声をかけたらいいかわからず、結果ジロジロ視線を送るだけという結果になっていた。しかし、そんなクラスメイトの心境を影山はわからないので、ただジロジロ見られているという現象が起きていた。


授業の終わりのチャイムが鳴り、昼休みとなったので影山は早々に荷物をもってクラスから抜け出した。


(なんか気まずい。これだから学校は休みたくない…)


影山はそそくさと移動し、いつもの屋上前階段に移動する。そして、いつもの変わりない風景に落ち着きを取り戻し、階段に座って息をついた。影山は鞄からクリームパンとジュースを取りだし、食べ始めた。


(今日の放課後はバイトかあ)


さとるくんの依頼に関して、大貴くんを連れ帰ることが出来たため依頼は達成となり、報酬を貰えた。だが、今回は運が良かっただけで、依頼人が死んでいた可能性は十分にあった。


「助かってホントよかったよな…」


影山がそう独り言を呟くと、階段の下から足音が聞こえる。少しして冬野が鞄をもってやってきた。


「やっほー、影山くん。一緒にご飯いい?」


「もちろん」


「それじゃ、お邪魔しまーす」


影山の隣に座り、鞄から弁当箱を取り出す冬野。その後は雑談をしながら共にご飯を食べた。最初の頃と比べて、影山も慣れてきて緊張することなく会話が出来ていた。


「影山くん、体の方はもう大丈夫?」


「うん、もう大丈夫」


「ならよかった。お互い無事に帰れてホントによかったね」


「ホントにな。1人で行ってたら死んでたよ。マジで。冬野がいてくれて本当によかったと思ってるよ」


「私も、影山くんいなかったら殺されてたと思う。だから、2人で行ったのは正解だったんだよ」


「だな」


へへっと2人は笑った。あの激闘を通して、2人の絆はさらに深まっていた。


「大貴くんも無事にお母さんのところへ戻れたし、とりあえず一件落着だね」


「とりあえずね。だけど、巡礼者にはまだ辿り着けてない。俺の目的はまだまだ先だ」


「それでも、代行を倒せたのは大きな進歩だよ。巡礼者倒すためにも、私たちもっと強くならなくちゃね!」


「そうだなー。…というか、冬野も巡礼者倒すことが目標になってないか?」


「影山くんが目指してるなら、それは私の目標だからね!」


「別に無理してついてこなくても…」


「私が手伝いたいの。影山くん1人じゃ何かと心配だからねー」


「…冬野はなんでそんなに俺に親身にってくれるんだ?」


純粋な疑問。影山の復讐に手を貸しても冬野には何のメリットもない。むしろ、危険な目に遭うというデメリットまである。それなのに、冬野は影山の手伝いをするという。その心境を影山は不思議に思った。対して冬野は立ち上がり、影山を見てニコッと笑った。


「秘密!」


顔を少し赤らめて冬野は「それじゃ、ガイストでまた会おうねー!」と言ってその場から立ち去ってしまった。取り残された影山は意味がわからないという感じでポカーンとしていた。一方、廊下を歩く冬野は朗らかな表情であった。


(好きな人の手伝いがしたいなんて、恥ずかしくて言えないからねー)


2人が昼休みに別れてから放課後となり、校門で偶然あった2人は共にガイストに向かった。先ほどの話を掘り返すことなく、雑談をしていた。


「久しぶりのバイトだなー」


「怪我も完治してようやくの復帰だからね」


「店長、働けてたのかな…」


「ま、まあ、流石に働いてると思うよ?」


日頃の行いから信用されていない九十九。影山は店に着いたら閉店してるのでは?とやや不安であったが、ガイストに着き、扉を開けると、なんだかんだダルそうに接客をしている九十九がいた。


「やっと着たか。早く手伝ってくれー」


客は数人程度しかいないが、それでも働いている九十九に影山と冬野は安心した。2人はエプロンをつけて、働く準備は整った。


「よし、今日からまた頑張るか」


「だね」


影山と冬野はいつもの学校と仕事の日常に戻る。影山と冬野の出会い、そして、巡礼者代行さとるとの戦い。そんな出会いと激闘があった4月の終わりも近く、物語は5月へと続くのであった。


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