第31話 屋上でのやりとり

「よしよし、トイレの方に行ってるね」


校舎の屋上。金網に背を当てて、さとるはそう呟いていた。目で見なくても校舎内での人の動きをさとるは感覚で理解することができる。そのため、花子が影山たちの方に向かわず、トイレの方に向かっていることはすぐに理解できた。


「ありがとね狂骨さん。あなたの力を借りれて良かったよ」


さとるの目の前には白い長髪で白い着物を着た1人の男が立っていた。無表情で感情のない瞳でさとるのことを見ていた。


「構わない。全ては光國様のためだ」


「光國様のためね…狂骨さん、名前バレしたらまずいからあまり口に出さないほうがいいと思いますよ?」


「む、そうか」


(この人、頭良さそうなのにたまにアホなんだよな…)


目の前の無表情男にそんな考えがさとるの頭によぎる。そんなことを考えていることも知らずに狂骨は「さとる」と呼び掛けた。


「この後はどうする?」


「狂骨さんが用意してくれた妖怪を無駄にはしたくないし、僕はあの子達を殺してくるよ。まあ、その前に僕たちの部下が殺してるかもしれないけど」


「わかった。後はさとるにまかせる。花子の実力をこの目で見れたのはよかった。あとは他に仕事があるので帰らせてもらう」


「うん。バイバイ狂骨さん」


「さとる」


「ん?なんです?」


「油断はするな。万が一お前に消えられたら困る」


「…狂骨さん、まさか、僕があんな若造たちに負けると思ってるの?」


若干の苛立ち。負けると思われていることで、さとるの表情に変化が生じる。しかし、狂骨はそんなことは気にしなかった。


「今のお前は戦力が2分の1になっている」


「それが何でしょう?戦闘力は僕の方が全然上ですよ」


「お前は慢心するところがある。それが命取りになることもある」


「考えすぎですよ。僕は真面目に戦います」


「…そうか。なら、いい」


狂骨はそう言うと、その場から去っていった。


「堅物が。すぐに追い抜いてやるよ」


いなくなった自分の上司に、さとるは苦言を吐いた。


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