第14話 危ないって言っても無駄だよ
冬野と遊びに出掛けてから3日がたった。影山と冬野は徐々に仲を深め、影山が1人で休み時間ゲームをしているとたまに冬野が遊びに来るようになった。影山としては非常に嬉しいことなのだが、冬野が在らぬ噂をたてられて交遊関係に支障が出ていないか影山は心配していた。しかし、冬野にそのことを尋ねると「そんな程度で支障が出るなら友達じゃないし、いらない」とイケメン回答が来て、影山は素直に感動したのだった。
今日も冬野は影山のところに遊びに来ていた。影山はやや上段の階段でゲーム、冬野は影山より3段下がったところの階段に座ってスマホをいじっていた。
「どう、倒せた?」
「いやあ、まだ戦闘中。装備の強化まだ甘いかも」
影山はコマンドRPGのボスに挑戦中。冬野のアドバイスを聞いてから挑戦しているが、なかなかに苦戦していた。
「裏ボスだからホント強いよ。HP半分切ったら第2形態になるから、初回は防御しないと全滅するよー」
「マジで!?それ早く言って…ああ、全滅したー…」
「ごめーん。私も言うの忘れてた」
「いやいいよ。こういう初見殺しもゲームの醍醐味だからねー」
何だかんだゲームトークを楽しむ2人。すると、下からコツコツとこちらに向かってくる足音がする。教師が来たかもしれないと思い、影山は咄嗟にゲームを隠した。しかし、上がってきたのは意外にも以前ゲームセンターで会った日上しおりであった。
「ここにいたんだ雪。探したよー」
「どうしたの、しおり。私に用?」
「まあねえ」
日上は影山のことを気にせず、冬野のとなりに座った。
「実はさ。今度新しい企画やってみようと思って」
「企画って、YouTubeの?危ないことじゃないよね?」
「あー、どうかなあ…」
濁す日上。その日上をジトーと見つめる冬野。
日上のYouTubeチャンネルは主に心霊系の動画をあげている。基本的には都市伝説の検証やオカルト系の話の紹介をメインに行っている。中にはなかなかヤバそうな都市伝説や心霊スポットにも突っ込んでいるのでオカルト界隈ではなかなかに刺激的で人気がある。
「それで、何するの?」
「えーと、1人かくれんぼやってみようかなって」
一人かくれんぼ。
2006年頃ネットで流行った都市伝説である。降霊術の一種とされていて、誰もいない家で行う。ネットでは怪奇現象が起こると言われ、大いに盛り上がっていた。やり方は以下の通りである。
①ぬいぐるみを用意し、中身をすべて取り出し米と自分の爪を入れて、赤い糸で縫って閉じる。
②隠れ場所をあらかじめ決めておき、そこに塩水を置いておく。
③午前三時になったら風呂場でぬいぐるみに「最初の鬼は◯◯(◯◯は自分の名前)」と三回言って、水をはった風呂桶に入れる。
④家中の電気を消し、テレビは砂嵐の状態にして目をつぶって十秒数える。
⑤刃物を持って風呂場に行き、「××(××はぬいぐるみの名前)見つけた」言って刺す。そして「次は××が鬼」と話し、塩水のある場所に隠れる。
⑥隠れて終わらせる場合は塩水を少し口に含んで、ぬいぐるみに残りの塩水と口に含んでいる塩水を順にかけて「わたしの勝ち」と三回宣言して終了となる。なお、一人かくれんぼは二時間以内に終わらせること。使ったぬいぐるみは燃やして処理することが絶対である。
「これって一応降霊術ってやつでしょ?危険なのかどうか雪に確認しようと思ってさ」
「えー、私もわかんないよ。それに危険だと思うならやめれば?」
「うーん、でも再生数稼げそうなんだよねえ」
なかなかに諦めようとしない日上。影山が黙って話を聞いていると、冬野が階段を少し上がり、影山の隣に座った。
「ねえ、影山くんからも言ってあげて。危ないからやめなって」
「そうだね。日上先輩、俺もやめた方がいいと思います」
「えー、影山くんもそう言うの?」
「俺としては素人が降霊術をやることには反対です。普通に危ないですから」
「んー、なんか影山くんオカルト系に詳しそうだね。よかったら何で危ないか聞いてもいい?」
興味深そうに見つめる日上。影山は余計なことを言ってしまったかもと少し後悔しながらしぶしぶ話すことにした。
「降霊術はその言葉通り霊を召喚することです。ちゃんとした手順と強い妖気を持つ持ち主であれば、任意に霊を呼び出すことができます」
「なるほど。それで?」
「でも、素人がやった場合には任意の霊を呼び出すことはできません。つまり、ランダムで呼び出されるってことです。害のない人や動物の可能性がありますが、中には害のある悪霊を呼び出す可能性もあります」
「ふーん、害のある悪霊ってどのくらいの可能性で出てくるの?」
「なんとも言えないですけど、悪霊事態滅多に出ないので、そうそうに現れるってことはないと思いますけど…」
「てことは、1人かくれんぼやっても大きな害がある可能性は低いってことだね!」
「いや待ってください!万が一にも悪霊が出た場合には何が起こるかわからないです。ですから、やらない方がいいですよ!」
「まあ、それくらいの危険性がある方が刺激があるからね!色々教えてくれてありがとう影山くん!よかったらチャンネル登録してね!バイバーイ!!」
そう言うと颯爽と去っていく日上。影山が「ちょっ、先輩!?」と呼ぶが日上が止まることはなかった。そんな日上を見て冬野は頭を抱えていた。
「あの状態になったらしおりはもう止まらないよ影山くん」
「ごめん、余計なこと言ったよな俺」
「いや、気にしないで。影山くんと私から何言っても結局は実行してると思うから。それに、しおりは安全性の確認をしたくて聞きにきたわけじゃないと思うし…」
「それって、どういうこと?」
「私たちに1人かくれんぼをすることを知って欲しかったんだと思うよ。なんかあったときに助けてもらうように。あの感じ、今日の夜にでも生配信すると思う」
「…冬野、なんか慣れてるって感じがあるけど、こういうのよくあるの…?」
影山の問いに、冬野は無言で頷く。影山は静かに同情した。
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