第13話 アイスクリーム大好き冬野さん
影山と冬野は市内の大型商業施設に来ていた。現在の時刻は16時10分。他校の学生がちらほら見られる時間帯。2人はフードコートでアイスを食べていた。
「それ、何個目だっけ?」
「んー、5個目」
冬野はチョコクッキー味のアイスを頬張り幸せそうな表情で食べている。すでにアイスを食べ終えた影山は幸せそうに食べる冬野を眺めていた。
「ここのアイスね、札幌の有名なアイス屋さんでしか食べられなかったの。でもね、二週間前にこの町にもできたのー!めっちゃ楽しみしてたんだよねー!」
「よかったな」
「うん。めっちゃ上手い!」
テンション上がっている冬野。そんな冬野を微笑ましく影山は見守っていた。すると、そんな表情を見て冬野はクスッと笑った。
「少し元気出た?」
「え?」
予想してない声かけに影山は少し驚いた。
「日曜日、私お見舞いに行ったけど影山くん。なんか元気なかったし。心配してたんだー」
「そう、なんだ」
影山が水吉の診療所で入院しているときに、冬野は1度お見舞いに来てくれた。診療所の場所は九十九から聞いて来てくれたようで、そのときに少し話をしたのだった。
「さて、影山くんも元気出たし、もう1個おかわりしてくるかな」
「まだ食べるの!?」
「うん、ストロベリーまだ食べてないしー」
そう言って冬野はアイスのおかわりを買いに行ってしまった。常人であればすでに腹の調子がイカれてるところであるが、冬野にはノーダメージどころか、回復してるようであった。
アイスを食べ終え堪能した影山と冬野はてきとうに歩き、服を見たり、本を見たりして楽しんでいた。そして、次に辿り着いたのはゲームセンターであった。
「ゲームセンターかあ。久しぶりに来たなあ」
「え、影山くん全然来ないの?ゲームセンター」
「うん。だってゲームセンターは陽キャが来る場所だろ?陰キャにはハードルが高すぎる」
もちろん陰キャであっても当然ゲームセンターに遊びに来る者はいる。現に今、1人で音ゲーや格ゲーをやってる人たちもいる。しかし、影山にとってその者たちはソロ充というぼっちを超えた存在。1人であるが、1人であることを気にしていない猛者なのである。一方、影山はというと1人で遊んでいてもまわりからの視線に怯んで集中して遊べない弱者ぼっちであるため、ゲームセンターに1人で来ることはできなかった。
「んー、まあよくわかんないけど遊ぼう。まずUFOキャッチャーやろ。推しのグッズ探すよ!」
冬野に言われるがままついていき冬野が立ち止まったところは、有名な国民的ゲームのマスコットキャラクターのぬいぐるみがあった。猫とウサギが合体したようなデザインのぬいぐるみに冬野は目を光らせていた。
「…ほしいの?」
「うん。でも、これは難しいかなあ」
「なんで?」
「アームが引っ掛かるところが全然ないでしょ?こういうアームって持ち上がらないよう設定してるし、正直無理ゲー。お金の無駄になるよ」
「ふーん」
冬野の説明を聞きながら、影山は財布を取り出し、お金を入れた。何気なくアームを動かし、狙いを定めて投下。そして、そのアームはピンポイントでぬいぐるみのタグの穴にすっぽりアームを通して持ち上げた。
「すごい…!ピンポイントでアーム通すなんて凄すぎる」
「まあ、手先は器用なもんで」
順調にぬいぐるみをゲットした影山。そのぬいぐるみを冬野に渡した。
「欲しかったんでしょ?どうぞ」
「いいの?」
キョトンとした表情を見せる冬野。影山は「うん」と頷いた。ぬいぐるみを受けとり、「ありがとー」と言って抱き締める満面の笑みの冬野。その様子に影山は正直見惚れ、可愛いと思った。その後、2人でレースゲームや音ゲー、コインゲームなど一通りゲームを堪能した。
遊び疲れで影山と冬野はベンチに座っていた。
「どう?楽しめた?」
「ああ。十分にな」
ぬいぐるみを大事そうに抱得ている冬野。2人が次のゲームを遊びに行こうとすると、影山にとって見たことのある人物を発見した。
「あれは確か、日上しおりさん?」
日上しおり。
影山たちの通う桜陵高等学校女生徒。黒髪ボブでスラッとした体格。身長は160センチ台と割りと高い。学年は2年生で、冬野ほどではないが、美人と評判が高い。だが、日上しおりには有名な1つの特徴がある。それは、有名YouTuberであること。
現役女子高校生でありながら、YouTuberをしていてチャンネル登録者は10万人。ジャンルはホラー系を投稿している。親が大企業で共に働いており、海外によく行っていることからほとんど家に帰れないため、親から与えられたマンションにて一人暮らしをしている。それをいいことにYouTuberを始め、大ヒットしたという経緯がある。学校としての取り決めはモラルに反しない範疇であればOKということになっている。
影山が日上を見ていると、日上は影山たちに気づくとこちらに近づいてくる。日上はというと影山ではなく、冬野の方を見ていた。
「雪じゃん。何してんのここでー?」
「友達と遊んでたところだよ」
「へー、ということはこの人が影山くん?」
「はじめまして、影山です…」
日上はジッーと影山を見る。人慣れしていない影山は反応に困りただ黙っていた。少しして日上はにたーと笑った。
「いい男じゃん。いい彼氏拾ったね雪ー」
と日上が言うと、冬野は若干顔を赤くした。
「か、彼氏じゃないよ!なんでそういう風になるかな!」
声がやや震える冬野。その反応をみて日上が面白そうにニヤニヤしてる。
「違うの?だって最近影山くんの話ばかりするじゃん。この前食堂で助けてもらってからなんてもう頻繁で、影山くん凄くかっこよくてー、優しくてー、面白くてーってずっと惚気てて…」
「わー!わー!もういいから!!何も言わないで!!」
慌てふためく冬野。冬野が慌ててる姿をあまり見たことがない影山にとって何だか新鮮な気持ちになった。
「やー、必死になってる雪ちゃん可愛い!」
日上は冬野を抱き締める。冬野は「もうやめてよー」と日上に子ども扱いされる。
「うちの子をこれからもよろしくね影山くん?凄く可愛くて素直な子だから、優しくしてあげてね」
「は、はい。わかりました」
「うん。そしたらデートの邪魔しちゃ悪いから。私は行くねー。バイバーイ♥」
早々に去っていく日上。冬野は疲れきった表情でため息をついていた。
「なんか、のほほんとした人だったね」
「アハハ、そうだね…」
冬野がそう言うと、シンと無言の空気が流れる。コミュ障の影山にとってこの空気は慣れなく、何を話せばいいかわからなかった。
(やばい。どうしよう。何を話せばいいんですか俺!?)
困惑していると冬野が頬を赤くして「影山くん」とボソッと呟き影山は「えと、何?」と返した。
「彼氏じゃないって言ったけど、別に嫌って言うわけじゃないから…その…」
「えーと、どういうこと?」
言っている意味がわからず影山は聞き返す。すると、冬野が「なんでもない!」と冬野は立ち上がった。
「お腹減ってきた!影山くん、アイス食べに行こ!」
「え!また!?」
「もやもやしたときにはアイスを食べるのが一番!さ、行こ!」
冬野に言われるがまま影山はついていく。その後冬野はアイスを5個食べ、影山は1個。冬野のアイス好きに恐れ入った影山であった。
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