第1章 第3話 ぼっち、有名配信者に出会う

第12話 ぼっちが放課後遊びにいくわけないだろ

月曜日。

揺れる家の依頼が終わってから2日がたった。影山は通常通り学校を登校し、いつも通り授業を受けて、休み時間は机で寝たふりをして過ごした。昼休みは安息の地である屋上前階段に行こうとしたが、本日日直である影山は日誌を書かねばならないため、昼休みは日誌を書いて過ごしたのだった。


ちなみに日直はペアでやる仕事であるが、相方が陽キャ女子でコミュ障の影山では話しかけることができなかった。結局すべての業務は影山が行い、陽キャ女子は影山がすべてやってくれるのをいいことに業務を丸投げしていた。一応帰りのホームルームが終わると、陽キャ女子よりお礼として一口チョコをもらった。


学校での1日が終わり、本日掃除当番でもある影山。周りの当番が楽しそうにおしゃべりしながら掃除をしているのに対し、影山はせっせと箒を掃いていた。


(さっさと終わらせて帰ってゲームしよ)


今日はバイトもなく、学校が終われば特に予定のない1日であった。影山は黙々と掃除をしながらあることを考えていた。それは、土曜日に九十九から言われたことだった。


(俺もまだまだだよな…ペース配分、大切だな)


影山は自身の力量不足でここ2日間はやや落ち込んでいた。根は真面目な影山にとって叱られると数日は引きずるタイプである。


そんな落ち込んでいる影山にどう話しかけたらいいのかわからないクラスメイトたちは影山をそっとしていた。掃除が終わり、掃除当番のリーダーが担任を呼びに行き、5分後に来た。一通り確認し担任からOKを貰うと掃除は終わり、解散することとなった。影山が席に鞄を取りに行き、帰ろうとすると教室の外から「あ、影山くん!」と呼ぶ声が聞こえ、声の方向を見るとそこには冬野が教室に入ってきていた。突然の美少女の来訪で掃除で残っていたクラスメイトや放課後残っている廊下の学生が一斉に影山たちを注目していた。


「いたいた。もう帰るところ?」


「そうだけど…?」


「そしたら一緒に帰ろ。ずっと待ってたんだよ」


冬野は困惑する影山の手を握り、引っ張るようにして教室を出ていく。そんな手を引かれる様子をまわりの学生から見られ、まわりはざわついていた。


(や、ヤバい!めっちゃ目立ってるって!)


焦る影山。影山は「冬野、ちょっと待って!」と呼び止めた。


「手握るのやめて!めっちゃ目立ってるから!」


「そう?でも、手離したら影山くん逃げない?」


「逃げないよ!てか、何でそういう発想になるの?」


「うーん、なんとなく?ギャルゲーだと、恥ずかしがってヒロインに逃げられるイベントとかあるし」


「わかる。わかるけど!てか、俺は、ヒロインなのか?」


「てことになるね。よろしく、ヒロイン!」


冬野は笑顔で影山の肩をポンポンと叩く。まわりを気にしない陽キャ感は本当に主人公の貫禄だと影山は感心した。


「とりあえず、逃げないから。手を離してくれ」


「わかったよー」


冬野は手を離し、影山と冬野は並んで帰ることにした。校舎内を2人で歩き、まわりの学生はコソコソと2人を見て何かを話している様子が見られる。冬野はそんなことを気にしないで影山に話しかけ、対して影山はすごくまわりを気にして歩いていた。


(寝たふりしながら教室でまわりの話を聞いてると、俺と冬野が付き合ってるみたいな噂が出てきてるみたいなんだよな…)


食堂での揉め事の件以降、噂で影山と冬野出来てる説が噂として流れている。影山としては学校一の美少女と付き合うなんて恐れ多くてできないことと考えているが、冬野はどう思ってるんだろうと影山は思っていた。


「冬野は、その、噂聞いてるのか?」


「噂?何の?」


「何のって、その…」


影山は言い淀む。恥ずかしくて言えない。そんな様子を見て冬野はクスッと笑って影山の考えていることを察した。


「私たちが付き合ってるって話のこと?そんなの言わせとけばいいよー」


「冬野は気にしないのか?俺と付き合ってるなんて噂…」


影山は陰キャで、冬野は陽キャ。しかも影山は超イケメンというわけでもないのに対して、冬野は超美少女。立場が違いすぎてまわりから見たらアンバランスな関係である。尋ねられた冬野はいたずらっ子のような笑みを見せた。


「私は別に気にしないよ。…なんなら本当に付き合う?」


「な…!」


突然の一言に影山は赤面した。そんな様子を見て冬野はアハハと爆笑した。


「顔真っ赤!影山くん面白い!」


「う、うるせえ!陰キャをからかうな!たく、俺先学校出るから!校門で待ってるからな!」


影山は怒って先に行ってしまった。その様子を見て冬野はクスッと笑った。


「別にからかって言ったわけじゃないんだけどなあ…」


そうコソッと呟いた冬野の顔は少し、赤かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る