第5話 幼馴染みが家にいるのは当然のことだよな?

「ただいまー」


帰宅した影山。家に入ると奥から「おかえりー」と返事が帰ってきた。リビングに入るとソファで横になってスマホをタップしている少女がいた。


冬野朝。

影山の妹で13歳。中学生。母は他界し、父は仕事で滅多に家に帰ってこない影山家にとって料理番をしてるのが冬野朝である。影山も一応料理ができるのだが、影山が作る料理は例外なく全て激甘になるため影山は家で料理を作るのは禁止されている。


「兄ちゃん、ご飯食べる?」


「食べるよ。自分で用意するから朝は横になってな」


「いやいや、あたしもご飯まだだし。一緒に用意するから兄ちゃん座って待ってていいよ」


と言って朝は台所へと向かっていった。昔からてきぱきした性格の妹で影山は昔から自分にはもったいない妹だなあと思っている。朝が作ったから揚げとサラダ、ご飯と味噌汁をもってきて2人でご飯を食べ始めた。


「洗い物は俺がするから」


「サンキュー。あ、兄ちゃん、アニメ見ようぜ」


「いいよ。何見る?」


「最近始まったやつ、なんだっけ?ゾンビのやつ」


「ゾンビだけど恋していいですか?だっけ?」


「そうそう、それー。かけて」


「おけー」


朝も影山の影響を受けてオタクである。ただ、影山と異なるのは生まれつき霊感はなく、コミュ障でもないので友達は普通にいる方である。


「あー、そう言えば兄ちゃん」


「どしたー」


「花子さん兄ちゃんの部屋でゲームしてるからー」


「知ってる。家入ったときに上から妖気感じてたから」


「妖気ねー。あたしは霊感ないからよくわかんないけど。便利だよねー」


「一朝一夕だよ」


影山と朝はアニメを見ながら晩御飯を食べ、2人が食べ終ると影山は洗い物を済ませ、風呂に入るため服をとりに自分の部屋へと向かった。部屋の前まで来ると、中からゲームの音が聞こえてくる。影山は特に気にしない様子で扉を開けた。


「おう、おかえりー」


部屋の中には小学生六年生ほどの見た目のおかっぱの美少女がテレビゲームをしていた。


彼女の名前は花子。かの有名なトイレの花子さん本人である。つまり、人ではない妖怪である。そして、影山の幼馴染みである。

影山が小学生の頃、虐められていたときに唯一影山と遊んでくれていたのが花子である。トイレでいつも泣いていた影山を見て、花子が気にかけるようになってからが馴れ初めのきっかけである。それ以来一緒にゲームや漫画、アニメを見るような仲となり、高校生になった今でも時折家にフラッと来ては影山と遊ぶくらいには仲良しである。基本的に幽霊や妖怪は霊感がある者にしか見えないが、花子は姿を意図的に透過させずに姿を現すようにしているので、霊感のない朝にも見えていて昔から朝とも付き合いがある。


「花子、またゲームしに来たのか」


「まあね。このゲーム、前から注目してたやつだし、朝から勝手にやらしてもらってたよ」


「別にいいけど、ネタバレしないでね。俺、そんなにまだ進めてないし」


「おけ、おけー、てか、海のステージの話めっちゃエモくなかった?」


「だからまだそこまで行ってないし!ネタバレするなって!」


「へーい♪」


イタズラっぽく花子は笑い、ゲームを続行。影山は「風呂入るから、服もってくよ」と言うと、影山は服を持って風呂場へと向かった。影山は服を脱ぎ、風呂場に入ってササッと頭と体を洗い、浴槽に浸かった。


「はぁ、生き返るー」


湯の中でのんびりする影山。あらためて今日の1日を振り返る。


(ぼっちの俺がクラスの美少女とバイトして、帰り道一緒に歩くか…。昨日までの俺に言っても信用して貰えないような陽キャイベントだなあ…)


と思い出をのんびり振り返っていると、突然風呂場の扉が開かれた。そこには全裸の花子がいた。


「よう!来ちゃった!」


イタズラっぽくニヒヒっと笑って見せる花子。影山は顔を赤くしてすぐに目を反らした。


「バカかお前!何やってんの!?」


「何って、一緒に風呂はいっかなと思って。何?恥ずかしいのー?」


「当たり前だろ!出てけよ」


「えー、昔は一緒に入ったじゃん。けちけちすんなよ」


そう言うと花子はイタズラっぽく笑いながら、出ていく様子なく風呂場に入って頭を洗い始めた。影山は諦めて花子を見ないようにして顔を背けた。


「なあ陸よー。学校はどうなんだー?」


「どうって、普通だよ」


「…そっか。なんか話したいことあったら、あたしに相談するんだぞ」


「…お、おう」


(まさか、俺が心配で話に来たのか?)


小学生の見た目であるが、影山にとって花子は昔から姉のような頼りがいのある存在である。そのため、一緒にいると時折安堵感を感じることがしばしばあった。

影山がしみじみとしていると、「どっこいしょ」と言って花子が浴槽に入ってきた。そして、影山の股の間に座り込んだ。


「何やってんのお前!?」


「だって、あたしの体見るの恥ずかしいんだろ?」


現状花子が影山にもたれ掛かっていることで、影山が花子を後ろから抱き締めているような構図となっている。


「俺はもう上がるからな」


「どうした急に?もしかして反応しちゃった?もう、陸ったらロ・リ・コ・ン♪」


「と、とにかく!俺は上がる!」


「あれ、否定しないの?もしかしてマジで反応してるの?」


「正常な男なら普通反応するわ!」


そう言って影山は立ち上がり、浴槽を出て風呂の扉を開けると、そこにはちょうど洗濯物を回収しに来た妹が目の前に。裸の少女が風呂にいて、下が立派になっている全裸の兄が朝の目の前にいた。


「…変態」


蔑む目で朝は脱衣所の扉を閉めて出ていった。


「朝ー!待ってくれ!!誤解だ!!!」


その必死になっている影山の様子を見て爆笑する花子であった。



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