第3話 面白いよねこのゲーム

翌日、相変わらず屋上前の階段で影山はゲームをしていた。


「お、隠しエリアあるじゃん」


昨日と変わらず高難易度死にゲーをプレイし、1人で呟く影山。敵にやられ「マジか~」と発声し、ロード画面になったところで体をのけ反りはぁとため息をついた。


(こんなところで、1人でゲームしてていいのかな…)


影山が1人でコソコソゲームしている間にもクラスメイトたちはおしゃべりをしたり、体育館で遊んだり高校生らしくエンジョイしているだろう。せっかくの高校生活をこんなことで費やしていいのだろうかと影山は自問自答する。


「良い分けないよな…」


そう呟く影山。人と関わらないことで、かつて受けた虐めを受けないという安心感はある。しかし、1人で寂しいという気持ちもあった。自分も青春をしたいという思いはある。


「あー、どうしたもんかぁ」


と影山が言った瞬間。


「どしたの?影山くん?」


突然、後ろの屋上の扉が開き、そこからヒョコっと学校の美少女冬野雪が現れた。突然の出来事で影山は「うわ!?」と驚き、ゲームを落としかけたがなんとか掴み直しゲームを落とさずにすんだ。


「あ、ごめんごめん。驚かすつもりはなかったんだ」


「ふ、冬野さん?なんで屋上に?てか、屋上は立ち入り禁止のはずじゃ…」


「ん?まあ、そうだね…」


冬野はパタンと屋上の扉を閉めて、影山の隣に座った。女の子のいい香りがし、しかもあまりにも距離感が近いため影山は顔を赤らめ緊張した。それと同時に影山は冬野に対してやや違和感を感じた。


(あれ、この感じ…)


影山がある違和感を感じつつ、緊張していると冬野はそんな影山を気にせず話し始めた。


「たまーに隠れて屋上で昼寝してるんだよねー。だから影山くんがいつもここでゲームしてるの知ってたんだー」


「そう、なんだ…」


何気に1人でコソコソゲームをしているのがバレていたことで、普段ブツブツ呟きながらゲームをしていたことを思い返し、影山は恥ずかしくなった。


「あの、何で俺の名前知ってるんですか?俺たちそんなに面識ないですよね?」


「面識はないね確かに。でも、私は結構君に興味持ってたんだよ?」


「え?なんで?」


「君、何気に学年2位でしょ?私とそんなに成績変わらないみたいだし、前から気になってたんだ。どんな人なのかなぁって」


「へー、そうなんですね…」


まさか自分という存在が学校一の美少女に認識されているとは夢にも思っていなかった影山だった。


「あと、私のこと敬語で呼ばなくていいし、なんならさんもいらない。同じ1年だし気安く呼んでいいよ」


「お、おう。わかった。それで、冬野はここにいていいのか?せっかくの休み時間を俺と過ごすなんて勿体ないと思うんだが…」


「勿体ない?なんで?」


「そりゃあ、俺みたいな陰キャと話しても冬野には何のメリットもないだろうし」


「メリットって、別に私が話したいから話す。それだけで十分でしょ。気にしない気にしない!」


と背中をポンポンと叩く冬野。影山は冬野が思っていたよりフレンドリーな感じの人と知れて少し安堵していた。そんな気持ちを我知らず、冬野は「それよりもさ!」と言ってゲーム画面に指を指した?


「これって、超死にゲーのアルカナソウルでしょ?いいチョイスだね影山くん」


「え、冬野このゲームのこと知ってるの?」


「まあねー。私もやってるし」


冬野は「ちょっと見せて」と言って影山からゲームを預かる。そして、ゲームをポチポチと押して「なるほどねえ」と冬野は呟いた。


「ごりごりの戦士ビルドでやってるんだねー。これ沼地のボスでめっちゃ苦戦しなかった?」


「そうそう、そうなんだよ!足場悪くて移動しづらいのにボスの方を普通に動けて遠距離攻撃してくるし、めちゃくちゃ時間かかったよ」


「わかる。あの遠距離は確かにウザかった。でも、勝ったときの達成感はヤバかった」


「だよな。脳汁が止まらん感じがした…」


と影山はノリノリで話している途中でハッと我に変える。


「冬野ってもしかして、ゲーマーなのか?」


「まあねー。ゲームは大好きだよ。屋上で休んでるときにアルカナソウルの音聞こえてきてたから、影山くんといつか話してみたいと思ったんだよねー」


「そうなんだ…」


影山は照れくさそうに頭をかく。その動作を見て冬野はクスッと笑って、「ねえねえ、ドラゴンのボスってもう倒した?」と聞かれ影山は自身のゲーム進行度を話した。それからは、アルカナソウルの話に加えて他のゲームの話を夢中で話した。楽しくて、影山にとって心踊る時間だった。


夢中で話していると、授業10分前の時間になっていた。時間をスマホで確認していた冬野が「そろそろ戻らないとねー」と言って立ち上がり階段を下り始めた。階段は滅多にない楽しい時間だったので名残惜しそうに自身も立ち上がった。冬野はそんな影山の表情をみてクスッと笑って階段を少し上がり、肩をポンと叩いた。


「残念そうな顔しないの。また一緒に話そ?あ、それとLINE教えてよ。そしたらいつでもゲームトーク出来るし!」


「あ、LINE?いいのか?」


「遠慮なんてしなくていいの。ほら、交換しよ」


と言って冬野はてきぱきと連絡を交換する。その手際の良さに影山は冬野に任せっきりだった。


「はい、これでOK。それじゃ、またね影山くん!」


手を振りニコッと笑うと冬野は小走りで自分の教室へと戻っていった。影山は1人呆然としていた。まさか、自分にこんな青春ができるとは思っていなくて心臓をドキドキさせていた。


「なんなんだよ、これ…」


影山は階段を降りる。そして、ドキドキしつつ冬野のことを考える。


(それにしても、あの感じた気配、間違いないよな…)


楽しくてドキドキした心境と冬野に感じたある違和感のことを考えながら影山も急いで教室へと戻っていった。



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