第5話 一瞬

 音を置き去りにした弾丸は、エンシェの魔法「永遠の炎エンシェントフレイム」を完全に取り込み召喚途中である粒子状の天使エンジェルを貫こうとした。

 

 —―が間に合わず、天使エンジェルは完全顕現を果たしその美しい身体を顕わにした。

 

 眩しいほどに光る黄金の髪、熱を感じさせない白い肌や白い衣服、天使エンジェルの翼は大きく広がっていた。

 美しい、と言えてしまうほどにそれは完璧な生命。到達点と言われるだけの、存在だった。

 

 けれど、その天使エンジェルは初めて見る形状だった。

 そもそも人の身体をした天使エンジェルなど想像すらしたことが無かった。純白の翼が無ければ、天使エンジェルとして認識することも難しかっただろう。


 天使エンジェルは、行使する者の思い描く"神の使い"が具現化した姿だ。

 つまり、彼は"特級案件"の中でも最上位の"異世界者"の可能性が高い。


 好都合、レインはそう思った。

 

 「時間遅延スロー

 

 天使の祈りによって天使を中心とし半径5mに遅延空間スロー・エリアが出来あがる。

 

 けれど、弾丸の速度は殺されることはなかった。

 

 弾丸へと込めた「妨害無効化」によって、その祈りは無意味になる。

 

 弾丸は、ゆっくりと天使の身体を犯した。

 肉がえぐれ、内臓が焼き切れるような鈍い音とともに—―

 

 「あぁ、そうだった――—―」

 

 教皇が何かを言い切る前に、弾丸は眉間をえぐった。

 そして、教皇の身体は原形が残らないほどにまで焼かれ、一瞬で灰へと変貌した。

 

 「ルタール・エルド執行完了」

 

 死亡確認を行った後静かに兵装トランスを解除した。

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