天使にあった話 後編
天使…天使か。
どうやら私は天使を助けてしまったらしい──
「でも一体なぜ天使さんがこんなところにいるんだい?」
(そうか、天使…架空の存在だと思っていたが天使が実在していたことを考えると天国も迷信なんかではないのかもしれないな)
私は天使を目の前にそんなくだらないことを考えていた。
それに対し天使は反論する
「えっ!信じちゃうんですか!?
天使ですよ!天使!いかなりおかしなこという女だと思うところですよ!
疑われる前提で話したのになんですぐに──」
そんなの決まっている…
「君のことを本当に天使だって思うくらい美しいと思ったから…。」
我ながらつい臭いセリフを吐いてしまった。
「えっ…ええ、からかってます?」
彼女は僕のセリフに対し動揺が隠せていない。
「本気だよ…本当に真面目に。」
なぜ自分で口説くような真似をしてしまっているのか分からなくなりながらも言葉を続ける。
「でも、君が天使だとして行く宛はあるのかい?」
「それが…私天国を追放されちゃったみたいでどこに行けばいいものか…
あ、でもえぇーとあ、貴方に迷惑をかけ続けるわけにも行かないのですぐにでも出ていきます。」
「神代優希、です。迷惑なんかじゃありません。私はもっと貴方といたいです。ずっとここにいてくれも構いません。」
すると彼女は答える
「う、嬉しいです!私はシルファ…シルファって言います!私もこれから貴方と一緒にいたいです!」
ここから私とシルファの生活が始まった。
自分でもどうしてここまで入れ込んでしまったかのか分からない…
でも多分彼女の放つ魅力に強く惹き込まれていたんだと思う。
──シルファと出会って数日が経ったが状況はあまり良くなかった。
それは私の上司が以前の失態を押し付けて来たことで会社での地位が下がり不当な扱いを受けるようになったからである。
シルファと同居し始めたものの仕事の関係であれから最低限の会話しか交わすことは出来ていない。
このまま不当な扱いを受け心身ともに弱っていくのならばいっそ転職も視野に入れたいのだが、以前退職届けを提出しようとしたときに上司によって破り捨てられたことを考えると第1に受理されるかが心配だ。
シルファにあんなカッコつけたセリフを言った手前自分が弱っていく姿を見せてしまっているのが恥ずかしかった。
その夜、相変わらず遅くの時間に帰宅した私は部屋が明るいことに気がついた。
どうやらシルファがまだ起きているようだ。
「ただいたシルファ。
こんな時間まで起きてどうしたんだい?」
疑問に思ってそうシルファに尋ねるとシルフィが後ろを振り向いた。
「神代さん…休んでください。
いつもいつもこんな遅くに帰ってきて
ほとんどの場合私が朝起きた時にはもう居なくなってる。
おかしいですよ!普通じゃなありません…
天国から色々な人間を見てきたけど神代さんの会社はおかしいですよ…。」
シルファは──泣いていた。
シルファにこんな心配をかけていた自分が恥ずかしかったし悔しかった。
私はシルファに心配をかけないためにどうやってでも退職する覚悟を決めた。
──次の日
私は退職届を持って出社したのだが出社して早々、私は社長室へと呼ばれた。
一体どうしたのかと考えていると社長室から上司の社長、そして以前失敗した取引先の社長──坂下さんの声が聞こえてきた。
「そ、そんなのデタラメだよパパ!」
「そうです…ウチの息子がそんなことをするはずがありません。
坂下さんはアイツに唆されたんですよ!」
「はっはっは 面白い冗談ですなぁ
つい先日、お宅の神代さんと息子さんががプレゼンに来た際その資料を無くした様子も、その後神代さんにプレゼンを1人でやらせたことも私はしかとこの目でみたのですが?」
「そ、それはぁアイツが悪いんだ!」
「話になりませんね…」
そう言って坂下さんは社長室を出ていこうとこちら側に移動してきた。
よく分からないがどうやら坂下さんは私のことを庇ってくれているようだ。
「おや、坂下くんではないか。
実は君に話があってね──」
どうやら坂下さんは以前の私のプレゼンをかってくれていたらしく、こんな会社に居ては才能が腐ってしまうと坂下さんの元で働く提案をされた。
坂下さんの会社は今のところよりも規模も大きく、今の会社を退職しようと考えていた所であった自分にとって都合が良すぎるくらいだと思った。
どうやら坂下さんは私が不当な扱いを会社から受けたことを知っていたらしく、どうしてそんなことを…と思っているとその答えはすぐに告げられた。
「うーん…不思議なことに君が会社で不当な扱いを受けているから助けて欲しいと語りかけられる夢を見てねぇ…
でもただの夢にしては現実感もあったし、なにより頼んできた子がめっぽうな美人さんで
念には念をということで今日確かめに来たんだよ。」
坂下さんの言葉にシルファが何かしたことがすぐに分かった。
その日はすぐにシルファの元へと帰り今日あった出来事を報告する。
「良かった…坂下さんに無事伝わったんだ。
神代さんが助かって良かった、良かったよぉ…。」
シルファは泣いていた。
シルファが一体何をしたのかは分からないけどこの日はただシルファに感謝の気持ちを抱きそっと抱きしめた──
それからの生活は充実していた。
会社でも不自由はなくシルファとの時間も充分にとることが出来た。
シルファと出会ってから1年が経った頃私はプロポーズを決行した。
シルファは泣いて喜んでくれて私も泣いた。
結婚式では現会社や元会社で仲の良かった同僚に学生時代の友達に恩師、私の親族と色々な人が祝ってくれた。
それから更に月日は流れシルファの妊娠が発覚した。
嬉しかった──
ついに自分とシルファの愛の結晶が出来たことが…
私は坂下さんにその事を報告すると坂下さんは自分の事のように喜んでくれて奥さんに支えるように言ってくれた。
時間は流れ──ついにその日はやってきた。
シルファが救急車で運ばれる。
子供を産もうとするシルファの手を握る
「シルファ!頑張れ!頑張るんだ!」
結果からいうと──子供は無事に生まれたがシルファは亡くなった。
シルファは体があまり強くなかったのだ。
初めてであった日もシルファは道端で倒れていたがそれはシルファの身体が天使として衰弱しきっており天国にいる資格を失ったからだと妊娠中に告げられていた。
それと同時に子供を産めば自分の体が耐えられないことも告げられた私は子供とシルファを天秤にかけた。
シルファに生きて欲しかった…でもシルファは子供も選んだのだ。
私はなによりもシルファの意思を尊重したかった。
産まれた子供にはエンジェと名付けた。
天使であったシルファによく似た子でこの子は命に変えても守ろうと思った。
エンジェは成長するにつれ更に美しく育っていった。小学生に上がる頃には既に私は息子であるエンジェにシルファの影を見るようになっていた。
我ながら最低だ──
自分の子供に最愛の嫁を見るなんて。
ある日、エンジェになぜ髪を伸ばしてるのか肌を守るのか聞かれた。
「お前は母さんに似てとても美しい髪を持っている。
そんな髪を切るのなんて勿体ないし
この美しい髪を切られたら私は悲しいよ。
それにお前の肌は人よりも弱い。
せっかく母さんに似た容姿があるんだからそれを大切にした方がいい。」
私はエンジェに髪を切って欲しくなかったし肌も美しいままでいて欲しかった。
これは私のエゴだ。
エンジェの容姿がシルファのようであることで私の中のシルファがずっと生きてるように感じたいがための。
それから少し経ち、またエンジェが質問をしてきた。
「お父さん!僕のお母さんってどこ出身だったの?」
私は息子の質問に対し、どう答えるか少し悩んでから答えた──
「うーん…そうだなぁ 信じられないと思うけどお前の母親は空の上の天使がいる楽園出身だよ。」と
価値はあった僕と価値がある君 ゆずリンゴ @katuhimemisawa
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