CAR.15 昔、会った事あるよね?
数年前、俺は3歳、あたしは7歳だった。俺の親父は当時、R32GT-Rに乗っていて、いろは坂に連れて行ってもらったことがあった。あたしのママは当時、S14シルビアに乗っていて、いろは坂に連れて行ってもらったことがあった。
その時、あたしと俺は隣同士の場所に駐車していて、ちょうど帰る時に、俺の親父があたしのママに声をかけた。『失礼ですが、あなたも走り屋ですか?』『そうですね。あなたもですか?』『私も走り屋です。まだまだですがね。』このような出会い方をしていた。俺とあたしはまだ幼かったので、あまり覚えていない。これは親父とママがそれぞれ、俺達に語ったお話である。
『ねぇ、君も車がスキなの?』未夢が拓夢の背中をツンツンして聞く。『え?ぼ、ボク?うん。スキだよ。この32GT-Rって車がスキなんだ。』当時、俺はGT-Rの時代に入っていた。俺が3歳の時は2004年だったのでR32はすでに生産終了しており、時代遅れだったかもしれない。だが
親父は自分のスキな車に時代遅れなどない。と言った。当時、あたしはS2000がスキだった。
S14シルビアの他にS2000もあったが、ママはあいにく乗ってくれなかった。シルビアは後部座席があるが、S2000は2シーターなので、
あまり使われることはなかったのである。『あの車は乗りにくいから。』と言われ、ガレージにしまわれた状態が何ヶ月も続いていたのである。
ある時、ママは『S2000乗ってみようか。』と言った。エンジンをかけるとまだ元気そうな音を奏でている。『まだ大丈夫よ。この調子なら。』ママはあたしに笑いかけながら言っていた。「ヴォォォォ」「コク」「ヴォォォォウゥ」『ねぇ、ママ、未夢も運転したーい。』あたしはダメ元で言ってみた。『まだ早いわよ。もう少し大きくなってからね。』やはり、思った通りの回答が返ってきた。あたしにはまだ早いのだ。アクセルにも足が届かないし、ステアの操作もこんな小さい手では無理である。ということでお預けとなってしまった。パパの書斎にあった中古車雑誌を見ると、当時のスポーツカーは『R34GT-R 158万』『S13 262万』『スープラ 147万』『R33GT-R 164万』などだった。中でもS2000は『S2000 312万』と載っていた。『これ、ほしいけどあたしのお小遣いじゃ買えないなぁ。』幼少期からそんなことを考える変わった女の子だったのだ。
そのいろは坂で会ったのが『昔、会ったことあるよね?』というフレーズに繋がるのだ。
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