CAR.12 ハチロク初試乗!!

「じゃあこれ、ハチロクの鍵ね。はい。」そう言って渡されたのはハチロクのキー。「ありがとう。」「キュルルルル......ヴォォォォ」エンジンをかけるとその振動がこっちにまで伝わる。








40年前のマシンとは思えない程に音が良い。「じゃあ、走り始めるから後ろからついて来て。」あたしはインテRの鍵を渡すと、シフトを1ローに入れ、走り始める。「ヴォォォ」「コク」「ヴォォォォ」シフトポイントが早いなぁ。これはラリー用の『クロスミッション』を組んでるかも。これだとどこの峠でもコーナーが来たときに2セカンドがピッタリ合うね。クロスミッションっていうのは標準のギヤ比から近づけたギヤを組み合わせたミッションのことを『クロスミッション』っていうんだよ。やっぱり乗るとこのマシンがどんな改造チューンされてるか分かるよね。おっ一つ目のコーナーだ。「コク」「ヴォウン」「コク、コク」「ギャーッ」5トップから4フォース、3サード、2セカンドまで落としてコーナーを横になって滑っていく。








バックミラーを見ると見事な『Fドリ』を決めながら拓夢くんがしっかりと追いかけてきている。あんなにたくさんの運転技術ドラテクを持っているんだから追いかけてくれるよね。

どこで、あんな技を身に付けてきたのかなぁ。





あたしとハチロクの下りはあっという間だった。「どうだった?」インテRの鍵を返すために話しかけて来た拓夢くんは聞く。「いつもはFFに乗ってるからFRは新鮮だったよ。」「俺もあんまりFFには乗らないから、俺も新鮮だったよ。」あたしと同じ気持ちだったようでなんか安心した。「ミャウ〜」「青空もハチロクに乗るのは楽しかったって言ってるよ。」「それはよかった。」





二人で上りを走って頂上の休憩所に戻ってきた。楽しかったなぁハチロクに乗るのは。気持ちが高ぶっちゃったからなんとも言えなかったけどハチロクがとても良いマシンだってことがよくわかった時間になったと思うんだ。それに拓夢くんについてももっと知ることができたと思う。もっと近づけるように頑張っていかなきゃ。「どうかした?」一人で考え込んでいると、拓夢くんに声をかけられた。「あ、えと、何でもないよ。」「そう...。」なんだか、おかしな事になっちゃったな。ごめんね。拓夢くん.....。




俺は明日も学校があるので、ヤビツとはここでお別れだ。今日最後のダウンヒルだ。しっかり楽しまないといけない。「コク」「ギャーッ」「ヴォウン」直角コーナーが迫ってきた。「くっ、きついな。」「ヴォウン」「コク」「ヴォウウウウ」




そして、麓に着いたとき、俺は心の底から楽しかったと思えるダウンヒルを走ったのだった。


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