CAR.1 究極の1ミリ攻め

2024年7月。ヤビツ峠。「ヴォォォォ」「ヴォウヴォウ」「コク」ブレーキをつま先で踏み、かかとでアクセルを踏むというマニュアル車に使える技がある。これは一般的にヒール・アンド・トウと呼ばれる。少し眠気も襲ってくる頃だし缶コーヒーでも買って休憩するか。



そして、俺はヤビツ峠にある駐車場へ向かった。「ヴォウヴォウフッ」エンジンを切り、俺は車を降りた。



土曜の夜ということもあって、人の数は多い。

缶コーヒーを買うため、俺は自販機がある軒下の方に向かった。130円ちょうどを自販機に入れ、缶コーヒーのボタンを押す。「カコンッ」すると、「あれ?拓夢くん?だよね?」聞き覚えのある可愛い声が聞こえた。



振り返ってみると、星奈ちゃんがいる。なんでこんなところに彼女がいるのだろう。スキール音しか聞こえないようなところになぜ星奈ちゃんがいる?いつもは教室で数人の友達と、ファッションファッションってキャッキャキャッキャやってるとこしか見たことないのになぜ?流石にこれは偏見か。



俺が頭の中でグルグル考えていると、「....ねぇってば!!」急に背中を叩かれた。「ん....あ、何?」「何って、拓夢くんに私の車を見て欲しいなって言ってるの!!」星奈ちゃんはぼーっとしてた俺に怒鳴った。俺は言われるがままに星奈ちゃんについて行った。するとある車が見えてきた。リトラクタブルヘッドライトの車だった。ミッドナイトパープルを身に纏った車。

これはあの車か。『日産・180sx TYPEII』のRPS13型だ。ところでなんでこんな車買ったんだ?俺は聞いてみることにした。「なんでこの車買ったの?」すると星奈ちゃんが口を開く。「それはね、拓夢くんが走ってるの見てかっこいいなって思ったから。でね、お父さんに聞いたら『買うならFRにしなさい』って言ったからこれにしたの。ヒールなんとかってやつも練習してできるようになったんだ。」



まじかよ。それじゃあもう走り屋の完成形じゃねーか。嘘だろ!!手強い相手が出てきたな。「そうだ。ヒール・アンド・トウができんならちょっとバトルしない?」俺は聞いてみた。



「へ?ばとる?」「バトルしようよ。ね?いいでしょ?」俺はゴリ押しでバトルの承諾を得た。勝ってやるぜこのバトル。これから始まるバトル。楽しみだ。セッティングをすることにした。ヤビツの路面状況や、コーナーの数、天候でどのくらいの馬力にするか設定することをセッティングという。馬力はそのままにして、特に変更せずバトルすることにした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る