三題噺「割れた鏡」「秘密のレシピ」「夜の海」
ヘッドライトを頼りに下り坂を降りていく。シフトペダルを蹴り上げる。昼間なら木々の隙間から、割れた鏡が散らばったみたいに眩しい海が見えたと思う。そんな時間に外へ出たのはもうずいぶん前のことだから確かじゃない。アクセルをギリギリまで開ける。リアブレーキを踏みつけて、カーブに入る。右足を踏み込んで、身体を傾けて、やや内回りに。この後すぐに左への急激なカーブが待っていることを知っているから。踏み込んだ右足からすぐさま左足へ体重移動。リアブレーキとアクセルのバランスを身体の全体で感じ取り、ギリギリまで車体を左へと倒す。目線は常に自分のライン上へ。リアブレーキとアクセルの優劣を完全なものにして、身体を起こす。私は夜が好きだ。
引きずる波音。これは地球が熱々の味噌汁を吸うのに似ている。地球は癇癪を起して町中を飲み込もうとする。それはいつも太陽が出ている時に起きる。夜にそれが起きないのはきっと月が彼を宥めてくれているから。だから私は夜が好きだ。夜を統べる月が好きだ。
夜の海が好きだ。澄みも淀みも、生も死も、すべてがここにはなくてただ壮大なだけ。昼間の熱がすっかり消え去った砂浜に腰かけて、海との境目を想像する。熱を伝えては引き、諦めきれなくてまた伝えては―。
私は美しくなりたかった。ただ純粋に美しく。それはすごく大変なことだった。周りのみんなは美しくなりたがらなかったから。欲望のままに過ごして、誰かを裏切って、それを後悔する振りをして、それらを美しいことと思いこんで。まるで自分だけの秘密のレシピみたいに思い込んで。出来上がるものは全部同じものなのに。共感、共感で作ったものだから。
私は夜が好きだ。私の輪郭を溶かしてくれるから。
ChatGPT三題噺 丁原口上 @teihara_factory
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