三題噺「古びた地図」「消えた影 」「赤い風船」
ここはいったいどこなのか。ここはいったい。そもそもさっきまでの私はどこで何をしていた。
暑すぎる。あまりにも。渇く。喉よりも、もっと身体のすべてが渇ききっている。私はいつから歩いているんだ。全くわからない。遠くにたゆむ大きな川も、視界をはっきりと切り分ける薄紫も、それを統べるように浮かぶ真っ白な光も、一歩一歩にまるで応えない。
人間。遠くの川の揺らぎの裂け目から、人間。影を全身に受けた人間。それは川波の周期に合わせて足を前後にさせている。一体どちらに向かっているのか、そしてその規模もわからない。つまり私も―。
その影は瞬きとともに目の前に現れていた。
「どうして考える。どうして。信じればいい、見ればいい、欲しいままに。今まで、この瞬間、これからの断続的な流れをそうしてきたように。」
影は古びた地図を差し出した。それを受け取ると、影は消えた。消えた影の輪郭に紫、青、緑、黄色、それに黒。無数の風船が形作って、それらの中心には赤い風船が一つ。ひとつずつ、ひとつずつ、風船は上空の真っ白な光に吸い込まれていく。また一つ、また一つ。最後に残った赤い風船も―。
ここはいったい―。
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