第38話 現在公開可能な情報:オリヴィアと詩音はパイパン

 俺は、久々にブチ切れていた。走っていた。心に決めていた。


「あのド変態校長を、ぶっ殺す……!」


 このままでは璃子にこの世界が野球ゲームではなくド変態NTR抜きゲーだとバレてしまう――だとかなんとか以前の問題だ。


 璃子に危険が迫っている。

 璃子に俺以外の男の指など、一本も触れさせてたまるか。一生。


 ましてや、それがド変態校長だなんて……!

 学園内で何度か見かけたことはあるが、ハゲでデブでいつでも汗をダラダラかいているような、いかにもな汚じさん系間男であった。さすがユーザーから高評価を受けている老舗ブランドなだけある。


 不幸中の幸いだが、確かあのゲームの舞台はもっと夏真っ盛りといった感じだった。おそらくまだゲーム本編は始まっていないのではないだろうか。主人公くん(もちろん名前は知らん)があの生徒会長に無理やり生徒会執行部に引き込まれるのが次回作のシナリオスタートのはずだ。


 その生徒会長様に、俺は今から殴り込みをかける。残念ながら校長は既に退勤済み。しかし生徒会長はエロゲらしく遅くまで生徒会室に残っているっぽいので、まずはこっちから話をつけてやることにしたのだ。実際、ついさっきまで野球部合宿の見学に来ていたので、いるのは間違いない。


「おいコラ、クソビッチがよぉ! また例の動画で脅したろか、あぁん!?」


 本校舎二階にある生徒会室の引き戸を、ノックもなしに開け放つ。

 怒りに燃える俺の目に飛び込んできたのは、


「お、お、お、おほっ、おほっ! たまらんっ、野球部の汗臭い金玉臭たまらん」


 俺は黙ってドアを閉めた。


 落ち着け、いったん落ち着くんだ俺。そんなわけがない。このドアの向こう、神聖な生徒会室で一人、長いポニーテールの凛とした美女が、ファウルカップ(主にキャッチャーが股間に装着して硬球からちんぽをガードするための防具)にコンドームを被せたものに突っ込んだストローを鼻に入れてスーッと吸い込みながらエグゼクティブデスクの角にスカートの中のお股を擦り付けておほおほ言っていたなんて、見間違えに決まっている。


 俺は深呼吸して気持ちを落ち着かせ、もう一度ゆっくりとドアを開けた。


「おほぉっ、おふぉっ! おほっほっ!」


 見間違えじゃなかった。神聖な生徒会室で一人、長いポニーテールの凛とした美女が、ファウルカップ(主にキャッチャーが股間に装着して硬球からちんぽをガードするための防具)にコンドームを被せたものに突っ込んだストローを鼻に入れてスーッと吸い込みながらエグゼクティブデスクの角にスカートの中のお股を擦り付けておほおほ言っていた。


「お前……何をやってるんだ、生徒会長さん……」


「お? おほぉ!? お、お、お、おほっ、山田、久吾……!? な、何で君がまたここに……!? あ、イク。おほ」


 変態ポニーテールが何かビクンビクンしながら崩れ落ちていた。机の角がビチョビチョになっていた。


「何でと言われても、今すぐ聞きたいことがあったからなんだが、それを上回るくらい今すぐ聞きたいことが目の前にあってどうすればいいか、とても困惑してる」


「そ、そんな……!」


 変態おほニーテールは心底悔しそうに歯噛みをし、そして俺をキッと睨みつけて、


「不良と名高い君のことだ。このコンドームを所持していたことをネタに私を脅迫し、性奴隷にするつもりなのだろう!? 私は屈しないぞ! おほっ」


「余韻でイクな。ビクンビクンするな。コンドームとかどうでもいいほど脅迫ネタのオンパレードなんだよ、今のお前は」


 床に水たまりが広がっていく。うわぁー……。


 ドン引きしながら再度デスクの上のブツに目をやる。何度見ても、ファウルカップ(主にキャッチャーが股間に装着して硬球からちんぽをガードするための防具)にコンドームを被せたものにストローが突っ込まれている。見間違えじゃなかった。


「お前、野球部から盗んだファウルカップをオカズにしてたのか……ていうか、ファウルカップに被せられるほどのこのサイズってもしかして……」


 まぁ、間違いなく、以前俺がこいつのバッグに仕込んで脅しのネタに使ったコンドームだろう。俺が転生してくる前の山田久吾の所持品だ。だからXLサイズ。だからサガミ極薄タイプ。

 な、言っただろ、璃子。薄くてもこの強度。厚みと強度は必ずしも比例するものじゃないんだ。サイズ的にも厚み的にも俺には使い道がないんだ。泣いた。


「なっ、なななななっ……し、失敬な! わ、私がこの使用済みおちんぽガードを盗んだという証拠があるのか!? 私自ら購入したものかもしれんじゃないか! どうして盗品だと決めつけられる!?」


「『与儀』って書いてあるからだな。お前がいま自ら『使用済み』だと白状したからだな」


 ファウルカップに名前を書くな。どんなシチュエーションで役に立つんだ、その記名。うん、いま役に立ってるな。天国の親父さん、あんたの教育、あながち間違ってなかったのかもしれないぜ?


「くっ……! 誘導尋問……! なんと卑劣で鬼畜な……しかしそこまで暴かれてしまっては言い訳のしようもないか……あの日以来、私がこのコンドームをずっと吸い続けていたことも、コンドームの多幸感では物足りなくなってしまい、更なる快感を求めて、野球部からこの使用済みおちんぽガードを盗んできたことも全て、メス奴隷化の脅迫ネタにされてしまうのか……!」


「勝手に全部白状しやがった。コンドームを吸うって何だよ。コンドームの多幸感って何だよ。コンドームをゲートウェイドラッグみたいに言うな」


 以前、学園NTR作品におけるコンドーム所持の犯罪性を大麻に例えた俺だったが、あながち間違いではなかったようだ。俺が渡したコンドームたった一つをきっかけに、気高き生徒会長がここまで堕ちてしまったのだから……。コンドーム、ダメ。ゼッタイ。


「つーかもしかしてお前、一つのコンドームをこの二か月間吸い続けてたのか……? サガミの耐久性凄すぎだろ。さすが日本製。コンドームを吸うって何」


「仕方ないであろう! 高潔な生徒会長であるこの私が、コンドームを入手するルートなど持っているわけがない!」


「コンビニに売ってるぞ。日用品や文房具と同じケースに入って流通・納品されてるぞ。まぁいいや、俺が譲ってやる。そのサイズのものならあと七個余ってるから。一生使い道ないから」


「なっ……!? くっ……貴様、そうやって私をコンドーム沼に沈め、ゴム漬けにした挙げ句、野球部の不良共でヅケマンするつもりであろう!?」


「知らないワードが多すぎる」


「おほっ」


「とにかくコンドームは譲る。ゴム漬けとやらにもしない。俺が欲しいのは情報だけだ」


 やっと本題に入れた。


「情報か。私は不良のくっさい金玉を頭に乗せられ『ちんポニーテールだwぎゃはははは!』と下品にわらわれながら複数の不良おちんぽにおちんぽビンタされるのが最も屈辱的で最もおほってしまう。Fカップのパイパンだ。くっ……、この私がこんなはずかしめを受けるだなんて……!」


 入れなかった。


「俺はパイパンに興味ねぇんだよ。そんなことよりな、まずは現在の生徒会執行部のメンバーを教えろ。あとそのファウルカップは与儀に返せ。天国の親父さんに孫の顔見せられなくなっちまうだろ。俺は触りたくないから、お前が自分で与儀のバッグに戻しとけよ」


「分かった、お詫びとして新品を戻しておくと約束しよう……。ん? 生徒会メンバー? そんなものも知らないのか、貴様は。まずは会長の私。そして副会長のオリヴィア君。庶務の詩音しおん君。そして最近入った会計の璃子君だ。彼女とは君も関係が深いはずであろう? ちなみに書記のポストは空いている。おすすめの金玉がいたら紹介してくれ」


「…………っ! 璃子は、どんな経緯で入ったんだ……?」


「自薦だな。会長職以外の選任は私に全権があるわけだが、彼女は私が課した小論文と面接を見事突破したということだ」


 璃子が、自ら……いや、いま重要な点はそこじゃない。

 とりあえず、この学園のどこかに存在する主人公くんはまだ、生徒会に入っていない。ヒロインたちと出会っていない。NTR展開はまだ起こらない。


「しかし、璃子君は本当に優秀だな」


 会長がオホニーテールをさらっと揺らして立ち上がりながら言う。またガクガクしながら崩れ落ちた。こいつ余韻長すぎだろ。おほる度に白目剥くのキモすぎる。


「当たり前だろ。俺の妹だぞ? こんなド変態組織に入れておくわけにいかねぇ。すぐに退部? 退会? 退職? させるからな」


「何を勝手なことを。君にそんな権利があるとでも思っているのか。いもうとって……学園生の立場で気が早すぎるのではないかい? 君が百乃木もものき姉とねんごろであることは承知しているが」


「はぁ? 何が言いてぇのか全然わからん。気が早すぎる? 俺と舞香の関係に何か文句でもあんのか? テメェに……ん? 百乃木、姉? とは」


「いや、文句というわけではないが。一般論として、結婚前から相手方の妹を義妹扱いするのは非常識だというだけの話だ」


「ぎ、義妹……?」


 もしかしてこのド変態、何か勘違いしてんのか?

 話を整理すると、俺と舞香が結婚したら、璃子が俺の義妹になるって論理なんだよな、こいつの中では。


「つまり会長さん、お前、舞香と璃子が実の姉妹だと思ってるってことなのか?」


 まぁ、確かに前世ではそうだったわけだから、そこら辺がごっちゃになっちまうのも……ん?


 いや、おかしいよな、それは。

 そんな勘違いが成り立つのは、俺たち三人が前世で実の兄姉妹だったという前提があってこそだ。当然そんなことを露も知らない生徒会長が、そんな発想を持つわけがない。


「ん? もしかして、舞香君と璃子君は姉妹ではなかったのかい? 珍しい苗字だから、てっきり家族なのかと……んん? いやしかし、実際、君が今しがた璃子君を義妹扱いしていたわけで……おほぉん?」


 俺と同様、混乱した様子で首を傾げる生徒会長。混乱ついでにイクな。おほるな。ファウルカップに跨って腰カクカクするな。与儀の持ち物、他人の体液つけられすぎだろ。


「……待て、いや待て。いやいやいやいや待て」


「待たない。イク。おほっ」


 俺は、猛烈に嫌な予感がしていた。こいつが言っていることが整理されていくにつれ、ある一つの結論が頭の中で導き出されようとしている。


 いや、ないよな? ねーよな、さすがにそんなこと。


「なぁ、生徒会長さんよ。間違いねーんだよな? その……珍しい苗字ってのが、璃子のものだってのは。それとももしかして山田が珍しいって認識? そうだよな、山田璃子だよな?」


「おほ? 何を言っているんだ、君は。山田姓は全国で80万人以上いるんだぞ。君が何を聞きたいのかいまいち分からんが、当然、入会の際には厳格に本人確認をしている」


 …………。

 そりゃそうか。野球部入るときにだって、おそらく……じゃあ、置物じじぃ監督なんかは把握してるはずだよな? 璃子が口止めしてたのか?

 そういや、璃子が記録員としてのベンチ入りを全く希望してこないのだって、よくよく考えれば妙だよな……?


 え。嘘だろ。マジかよ。

 もはや俺の中でも、結論出ちゃってるじゃねーか。


「生徒会長……その、璃子の苗字ってのは、もしかして……」


「おほ乃木」


「ちゃんと言え」


「おほっ。百乃木。百乃木璃子君であろう?」



――――――――――――――――――――

読者様からノクターンノベルズでエロシーンを書いてほしいという嬉しいご要望をいただきました^^

需要があれば、本編完結後に書いてみようか検討中なのですが、読みたいという方がいたらコメントで教えてください^^

とか、こんなこと言われたら、優しい読者さん達は気を使って「読みたい」と言ってくれそうなのですが、いざ書いて投稿してみたら全然読まれなかったという展開は悲しすぎるので、割と本気のマジで読みたくて既に我慢汁垂れているという方だけご意見くれると嬉しいです^^

我慢汁垂れるほどではないなーという方は本当に全然スルーしてもらって構いませんからね! 本編読んで我慢汁垂らしてもらえているだけで十分幸せです^^

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