第36話 【閲覧注意】ついに寝取られるメインヒロイン【鬱展開】
ま、ここで、はっきりきっぱりとフラグを折っておくのもアリだよな。
うん、むしろそっちの方がいい。鈍感主人公のようなダラダラ先延ばしが一番危険なのだ。
そんなことを考えながら、俺は佐倉宮と並んで夜道を歩く。
「さっきはありがとう、久吾君」
しばらく無言の時が流れていたが、おもむろに佐倉宮が口を開く。
始まったか……!
「いいって。マジで主将として当たり前のことしただけだから。ただの義務だから。仕事だから。そこに何の感情もないから」
「そう、なのね」
そう、なのよ。
「うふふ、久吾君ってそういうところあるわよね。昔は誤解していたけれど、この数か月で、あなたの本当の顔を知れたと思う」
「いや前までの俺が最悪のゴミ人間だったのは事実だからな。ただ、璃子にはそんな姿見せられねーってだけだ」
あと舞香にも。あいつにはNTRゲーのことは全然バレてもよかったわけだが、他の女にどうこうなんて真似は絶対できない。浮気になっちゃうからな、シンプルに。
って、そうだ。今のこの状況自体、ちゃんと伝えておくべきだよな。この世界での唯一の協力者であり、そして今は俺の婚約者でもあるんだから。二つの意味で報告の必要がある。
と、思ったが、やっぱマズいな、それ。
実は俺がサンプルCGなどで既に佐倉宮の裸体を見てしまっているという事実に気付かれてしまいそうだ。不可避なことだったとはいえ、ショックだろうしなぁ……。あの段階では、あくまでも絵だとしてしか俺の脳は認識していなかったわけだが、そこら辺をいくら言っても舞香は納得しないだろう。
ていうか、そうなんだよなぁ……。ただの絵とはいえ、俺はこいつの乳輪が小さいこととか、天然パイパンであることとか、情報として知ってしまってるんだよなぁ……。何か変な気分だ……。
「相変わらず、妹さん思いなのね」
「まぁな」
「でも、璃子さんが久吾君のようなお兄さんを大好きになってしまうのもよく分かるわ。だって、男らしいもの。……あの子とは……誠とは、違う」
「…………っ!」
ダメだ、そのセリフは。ついに出てしまった。主人公くんと間男キャラを比較するような言葉が! 「主人公くんのおちんちんとは全然違うのぉ!」なんて、NTR堕ちした時に吐いてほしい台詞ランキングトップ3に入るぞ! 幸いなことに俺のおちんちんはたぶん主人公くんよりも小さいが。幸いだ。泣きそう。
「いや、佐倉宮さん。そういうのは、ちょっと……」
「ねぇ、久吾君。二人だけで話したいことがあるって言ったでしょう? 本当は言おうかどうか迷いもしたのだけれど……やっぱり、あなたに聞いてほしいの」
俺の腕をギュッとつかみ、潤んだ瞳で見上げてくる佐倉宮。舞香の三億分の一くらい可愛い。そんなこと言ってる場合じゃない。
「待て待て待て待て。ちょっと待ってくれ佐倉宮さん」
「好きなの……!」
「――――」
決定的な言葉。やはり、そうなのか。これが、NTRゲームの世界なのか。どれだけNTR展開を避けようとしても、NTRヒロインは間男の手に堕ちようとしてしまうものなのか。それがNTRヒロインの性質であり、この世界の意志なのか……!
「どうしても好きなの! 誠のことが!」
「ダメだ佐倉宮さん、俺には舞香という心に決めた人が、あ、はい、そうですね。あなたは野茂誠のことが大好き。それが正しい」
ものすごく恥ずかしい勘違いをしていたようだ。この世界の意志だとかそんなフワッとしたものはない。
「好きで好きで好きで、昔から大好きで……どうしても、諦められないの……」
声を震わせる佐倉宮。何やら相当思い詰めている雰囲気だ。
「そ、そうか。それは素晴らしいことだと思うぞ。で、何をそんなに必死になってるんだ、今のお前は? 野茂は確かにクソ鈍感野郎だが、佐倉宮に恋愛感情自体はあるはずだぞ?」
俺は知っている。なぜならこの世界はNTRゲーだからだ。これはもうこの世界の意志がどうとかいう以前の話。大前提。主人公くんがヒロインに恋愛感情を持っていなければ、NTRは成立し得ない。佐倉宮が誰と何をしようともNTRにならないのだ。つまりは主人公くんである野茂はヒロインさんである佐倉宮が好き。さすが俺。論理的な愚兄。
「そう、思っていたわ、あたしも……。でも。でも……!」
そうして、この世界のメインヒロインは。充血した目で俺をキッと睨み付け。夜の住宅街で――悲痛な声を上げるのだった。
「寝取られたの! 大好きな幼なじみの誠を! あたしが先に好きだったのに! 寝取られたのよ! あなたの妹、璃子さんにね!! 璃子さんのことが好きなんだって!! ええーん!!」
ええー……。
――――――――――――――――――――
アホアホ佐倉宮のせいで少しまぎらわしくなってしまいましたが、もちろんモチモチ璃子(モチモチ)の方はモテモテ久吾(仮性包茎)にずっとモチモチ一筋なので、モチモチ過激派(仮性包茎)の皆さんはどうかご安心を!(モチモチ)
いつか本当にモチモチ過激派(仮性包茎)とか生まれるぐらいの人気作になってほしいんだが(真性憤慨)
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