第20話 【有料級】作者が中学の頃から温めてきた至高のアイディアをついに大公開……!【後編】

「だいたいね、久吾」


 論破王こと舞香は酷く呆れたようにため息をつき、


「あんたの精液は、射精直後はスライムみたいにベッタベタだけど、すぐにサラサラになっちゃうんだよ。そもそも精液には液化の性質があるわけだけど、あんたのは、特にそれが顕著なの。早いの。精子が私の生殖器内をより効果的に移動できるようにするための重要な生理的過程ってわけ。あんたの精液は濃いだけじゃなく孕ませる能力もバカ高いってこと。私を絶対に孕ませるんだってゆー強い意志すら感じた。つまりはね、出したてホヤホヤの新鮮な精液じゃないと、粘着効果なんてないの。試合で使いようがないじゃん」


「ツッコミどころしかない」


「間違えた。ものすごく間違えた。『私』ってとこは『女性』に置き換えて。単なる言い間違えだから。あくまでも私も女性のうちに含まれるってだけの意味で他意はない。ものすごく言い間違えた」


「そこは言われるまでもなく脳内で変換しておいたから大丈夫だ、安心しろ」


「安心した」


 なんか胸に手を当てホッとしているが、そもそも兄の精液の性質を熟知していること自体頭おかしいという事実にいつか気付いてほしい。向き合ってほしい。


 言ってみれば、俺のベトベト精液がサラサラになるまでジッと観察してたってことじゃねーか。

 一体、何が目的で――


「あっ! それだ! それじゃねーか、舞香! よくやったぞ!」


「ちなみにあんたの精液は前世の頃から、え? なに? どしたん?」


「その『ちなみに』の話は聞かなかったことにするが、お前のおかげで凄いことに気付いたぞ! すぐにサラサラになるっつーことは、簡単に証拠隠滅できるってことじゃねーか! イニングの始まりに仕込んでおいて、ベタベタ粘着投球。だが、イニング終了時点ではサラサラになっているわけだから、さり気なくどこかで拭き取っちまえば絶対バレない! ズボンで拭き取ってカピカピになったとしても、それはまぁ体液だからいくらでも言い訳できる!」


「そんな言い訳される身にもなってほしい」


「そもそもまず、精液手に塗ってボール投げてくる奴がいるなんて発想、誰もするわけねーからな。バレねーだろ、もうこれ」


「ここまでで一番説得力ある主張だ……って、いやいや。は? ダメじゃん、それ結局。何の解決策にもなってないじゃん。確かに隠し通せる可能性は高いのかもしんないけど、私が指摘した問題点は何も解消されてないっしょ。出したてホヤホヤじゃないとダメって言ってんじゃん。『イニングの始まりに仕込んでおいて』って、どうやってイニングの始まりに出したてホヤホヤを……」


 そこまで言いかけて、ようやく俺の意図に気付いたのか、舞香は俺の顔をハッと見つめ――


「その通りだ舞香」


「あんた試合中に出すつもり!? マウンド上がる直前に!? ベンチ裏で!?」


「ああ、そこが俺のブルペンだ」


「なにカッコつけて言ってんの?」


 だが実際、それしかないだろう。

 もちろんあんな大放出をしてしまえば、身体的にも闘争心という点においてもダメージは避けられない。間男だから射精自体は何回でもできるが、ピッチングへの影響は別問題だ。そもそもあんな一気に出すとか、射精うんぬん抜きにして単純に脱水量という観点でヤバい。


「しかし、そうか。俺の精液の液化はそこまで早かったのか。隠ぺい工作という点ではメリットだが……そうなると、確かにこれが使えるのは一試合で1イニングのみになっちまいそうだな……。いくら量が多くてもサラサラになっちまったら使えねぇ。さすがに試合中に二回以上抜くってなると負担が大きすぎるしな。重要な場面を吟味して使っていくしかねぇわけか」


 こう言うと何か禁断の必殺技みたいでカッコいい。


「ん?」

 しかし舞香はなぜか首を傾げ、

「いや、ちょっとずつ出してけばいいじゃん」


「は?」


 なに言ってんだこいつ。


「いや、だから。1イニングで必要な分だけイニング前に出せばいい話っしょ。それを九回続ければいいじゃん。小分けしろし。なに一回一回全部出し切ろうとしてんの? 最大限気持ちよくなろうとしてんの? やば。変態じゃん、あんた」


「……お前は、いったい、何を言って……」


「だーかーらー! あんたが一発でビュルビュルできる最大量が500ミリリットルくらいなんだから、毎イニングごとに50ミリリットルずつピュッてしたとこで一旦ストップってのを繰り返してけば、九回まで持つでしょって言ってんの! 最後まで出し切らなければムラムラしたまんまなんでしょ、男の人って。じゃあ体力や気力的にも消費しないで済むじゃん」


 俺は、頭を抱えていた。


 まるで物分かりの悪いバカに言い聞かせるかのように説明してくる元妹。その性知識の乏しさに、この国の性教育の遅れに、絶望せざるを得なかった。

 俺たちが先日まで生きてきた世界の日本では、もしかしたらNTRゲームの世界以上に、間違った性知識が蔓延していたのかもしれない。


「舞香……お前、まさか……男が、一度始めた射精を、途中で自由自在に止められるとでも、思っていたのか……?」


「はぁ? そんなの――………………………でき、ないの……?」


「できるわけねーだろ!! なんだよ、射精の小分けって!」


「う、嘘、そんなわけ……それじゃあ、私が書いてたイチャイチャシーンが……」


 真っ赤な顔でブツブツ言いながら、やおらスマホを操作し始める舞香。

 お前なんつー小説書いてんだよ。そんなもん即行でBANしろ、カクヨム運営。


「あ、ほら! あるじゃん、久吾! やっぱできる! 分割射精!」


 ビシッと音がなるほどの勢いで差し出されるスマホ。その画面に表示されていた検索結果には、見たこともないワードが並んでいた。


「あ、甘出し……? 連続射精……?」


 特に気になったページを開いて、そこに書かれている解説に目を通していく。


「……なるほど、確かにAV男優なんかは、そういうテクニックを使っているはずだよな……」


 どうやら射精の小分けは、訓練によって実現可能なようである。

 そういえば俺も、セルフ焦らしプレイ中にちょっと出しちゃったけど、とっさに中断できた――みたいな経験が何度かあったような気がする。


「ほら見ろ! できるんじゃん! 久吾は童貞だから知らないだけ! 世のカップルはみんな小分けでイチャイチャしてるから! そっちのが高まった気持ちのまま長時間イチャイチャできるじゃん、だって!」


 それは絶対嘘だが、確かに甘出しであれば、体力もバイタリティも低下させずに済む。臨戦態勢を取り続けられる。


「わかった。今回はお前の意見の正しさを認めよう。お前の指示に素直に従う。俺は訓練によって、一か月以内にこのテクニックを身につけてみせる。そうすれば、毎イニング、新鮮な精液を使って、ベタベタボールを投げることができるようになるはずだ」


「ね、そうでしょ。始めっから私の言うとおりにしとけばいいんだよ、あんたは……ん? あれ? 何かいつの間にか私まで精液ボール賛成みたいになってる? むしろ推進派筆頭みたいになってる?」


 こうして、愛する妹を甲子園に連れていくための、新たな武器を俺は手に入れた。その名も、甘出し精液ボール。


 うーん、愛する妹にだけは絶対バレてはいけない……!



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第二章完です! 第三章も毎日更新してくからいろいろ入れてくれ! 最悪何も入れなくてもいいから最後まで読め!

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