第13話 真剣なお付き合い
練習開始から二時間半ほど経った辺りで、俺は部員を集めた。
「よし、全体練習はこれで終了だ」
俺の宣言に、部員たちが目を丸くする。
「え、こんなもんですか?」「甲子園行くにはもっとやらないと足りないのでは……」といった感じで戸惑っているようだ。
うん、やる気に満ち溢れているな。さすがお前らだ。
「もちろん練習自体はまだ続くぞ。ここからは筋力トレーニングだ。俺たちはこれから四か月でとにかく筋肉をデカくして、パワーで勝っていく」
俺は自分の考えを部員たちに説明していく。
これが強豪校を打ち破っていくための唯一の方法であり、そして、お前らが生まれ持ったギフトを活かすための最善の方法なのだと。
射精量がイカれているのは、俺だけではない。
佐倉宮琴那を快楽堕ちさせた山田久吾は、他の部員たちにも彼女を廻させる。
その際の奴らの射精量は――山田久吾には遠く及ばないものの――常人離れしたものだった。エロシーンのサンプルCGだけは公式サイトでしっかりチェックしているから間違いない。
こいつらはNTR抜きゲーの竿役として、汁男優として、尋常ではないテストステロン値を持っている。
つまり、ステロイドユーザー以上に筋肉が肥大しやすい。怪物のようなパワーを短期間で身につけられてしまう可能性がある。
そしてまた、寝取られ主人公である野茂誠の寝取られ鬱勃起射精もなかなかの量のようだ。
こいつはうちでは唯一中学でも有望な選手だったようだし、しかも左投げでもある。俺に次ぐ二番手投手として育ててやることにしよう。
そう、それこそが俺の立てたプランなのだ。
俺だけでなく、部員全員のフィジカルを鍛えまくって、技術・センス・経験で勝る強豪校を、強引にねじ伏せてしまう。
俺たちが甲子園に行くための筋道はそれしかない。
といったことを、射精量云々は上手く誤魔化しながら部員たちに説明する。
まぁ後でエロ話でもする流れで教えてやったりする分にはいいが、この場には璃子もいるのでできない。野球ゲームのキャラの射精量が常人離れしているわけがないからな。
「と言っても、バーベルを扱うのには最低限の筋力と柔軟性も必要だからな。二・三年はトレーニングルームでビッグスリーと懸垂・ミリタリープレス、一年はしばらくは自重トレーニングとモビリティワークを中心にやっていこう。まぁ、優秀な奴にはすぐにバーベル持たせてやるがな!」
俺の指示に、威勢よく応える部員たち。
不十分な説明にはなってしまったが、モチベーションが高まっているおかげか、勢いで何とかなった。ってか別に、射精量とか関係なく、筋トレが最重要ってのは事実だしな。
部員たちはそれぞれ「よっしゃ、やる気出てきたぜ!」「ベンチ百は挙げるわ」「先輩、トレーニングフォーム指導してください!」とギラギラした目で散っていくが、
「あ、ちょっと待ってくれ。一つ言い忘れていたことがある」
その一言で、俺は皆の足を止まらせ、
「舞香、ちょっと」
「ん? なに、どったの」
元妹の手を取り、自分の隣に引き寄せる。キョトンとする舞香の肩を抱き寄せ、そして軽く咳払いをしてから、
「気付いている奴もいたかもしれないが、俺と舞香は正式にお付き合いしている。ものすごく真剣にものすごく清く健全なお付き合いをしている。決して野球には悪影響をもたらさない――否、むしろ清き愛の力で俺を一段上の選手に引き上げてくれるような、プラトニック極まりない交際をしている。舞香は俺にとってものすごく大切な、世界でたった一人の恋人なんだ。だから変な勘違いをしないように。な、舞香?」
「あ、はい、うん。ものすごく恋人。ものすごく大切にされてる。ものすごく愛し合ってる。私、ものすごく久吾の恋人」
何かフッと力が抜けたかのように、スンとした真顔で淡々と喋っているのが気になるが、とにかく俺の意図は察してくれたようだ。上手く対応してくれた。
部員たちは目を丸くしてはいるが疑っているようではないし、主人公君に至っては熱い目をして「さすがキャプテン……!」とか呟いている。
メインヒロインさんは顔を赤くして両頬を押さえている。大人っぽい立ち居振る舞いの大和撫子だが、恋愛経験は乏しく、免疫が低いのだ。ものすごく寝取られそう。だが寝取らない。なぜなら間男であるはずの俺に、この世でたった一人の愛する人ができてしまったからだ。
そして、璃子はと言うと。
「……………………うふふ、いいんですよ。ええ、いいんですいいんです。だって兄さんはパワプロくんですもんね。うふふ……♪」
とか何とか呟きながらとてもニコニコとしていた。こわい。不穏すぎる。ニコニコしているのに口から血が垂れている。
「まぁ、それだけだから。悪いなみんな、引き止めちまって。トレーニング再開してくれ! マネージャー陣はフォーム撮影と、重量・レップ数などの記録を頼む。撮影は横・後ろ・前からなどいろんな角度で――って、ん? 舞香?」
「きゅうごのものすごく恋人なきゅうごのプラトニックものすごく私はものすごく清い世界のものすごくやくそくなきゅうごのわたしはおよめさ――」
「舞香!? どうした、おい、大丈夫か!」
「きゅうご」
「それはどっちのきゅうごだ……?」
意味不明な呪文を唱えながら、俺の腕の中で倒れてしまう舞香。壊れてしまった。もはや自分の足で立つつもりはないようで、俺に全体重を預けてきている。仕方ないからお姫様だっこしてやる。部室のソファまで運ぼう。
「うーん、どっちも! わたしどっちもきゅうご」
うーん、ものすごく都合悪いな、この(元)妹。可愛いからいいけど。
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