第6話
6話「旅立」
麗也が翌朝、鳥の声と朝日の眩しさに目を覚ますと、そこには誰もいなかった。
…あれ?あの老人は…?
机の上には、一枚の紙、一冊の本、それと何かの瓶詰めが置いてあった。
…書き置きだろうか?少し見てみよう。
『麗也さんへ
あなたは今日、ここを出ることでしょう。
直接お別れを言えなくてごめんなさいね。
少し今日から1ヶ月程、とても大事な予定ができてしまってどうしても朝早くから出かけることになってしまったの。
そこに置いてある、料理のレシピ本と万能薬を持っていって頂戴。きっと何かの役に立つわ。
とりあえず、ここの海岸のすぐ後ろにある山を越えて、リーデの首都の集会所へ行きなさい。
野生動物と山賊に気をつけるのよ。
それでは。 フィーアより』
…そっか、残念…だな。
本当に短い間だったけど、確かに優しい人だった。感謝の一言くらいは伝えたかったな。
…そうだ、書き置きを残していくか。
感謝とこれからの旅への希望を紙につづり、机の上に置いておいた。
そしてレシピ、薬を手に取り、カバンに入れようとした…
…カバンの中身をいくらか無くしてしまったようだ…少し確かめてみよう…
そういえば大抵の荷物は船に積み込んだっけ…
色々と無くしてしまったのは痛いな。
そうだ、携帯電話…!
母に連絡を取らないと…
そう思い、麗也はカバンの中をまさぐった。
しかしカバンの中に入っていたのは少しの保存食と水入りのボトルだけだった。
…このくらいの荷物では多少心もとないな。
まぁなんとか…なるだろう。
そんなことよりも母さんは大丈夫だろうか?
そんな心配を胸に、小屋の外へと出る…
海は朝日を反射し、キラキラと輝いている。
功翔では見られなかったであろう、美しい景色だった。
なんだか少し元気が湧いてきた…気がする。
そうして麗也は、山へと足を踏み入れて行った…。
6話 終
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コラム
環境・生き物について
この世界では核戦争によって多くの生物が絶滅し、生態系は壊滅状態にありました。
しかしその後、生き残った人々の努力や、環境に素早く適応してゆく生物により、環境も整い、自然は復活を果たしたのです。
牧畜や農業、漁業、林業なども、現代と変わることなく行われています。
特に漁業は、戦争後に受けた影響が他より少なかったため、戦争直後の人間たちの食料調達に大いに役立った。
そのなごりで、魚を食べる文化はこの世界では全国共通となっている。
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旅人 あじフライ @ajifuraikochan
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