第5話

5話「休息」


老婆の家は、海辺の小さな木造の小屋だった。


招かれるままに小屋へ入る。


小屋は薄汚れていて、埃や蜘蛛の巣も目立っていたが、とても暖かみがあった。


「ささ、遠慮なく座りな。」


「失礼します」


きしんだ椅子に腰かける。


「いやぁ…お前さんも本当に大変だったねぇ…あんな国から逃げて来るなんて、立派だよ…それで話なんだが…お前さん、これからどうするんだい?」


何やら料理をしながら老婆が話しかける。


「…」


「いや、あなたがずっとここにいるわけにもいかないからねぇ…私ももう寿命は長くはないし、人を養えるかって言ったらね…

それに、こんなところで退屈だろう?

何かこっちでやりたいことは無いのかい?」


「俺の、やりたいこと…」


…そうだ、あの国を…


…いや、それは非現実的すぎるか。


たった1人の力で何かができるとは到底思えない。


「せっかく国外に避難できたんだ、いろいろな場所を巡るってのもどうだい?」


「…そう、ですね。きっとそれがいい。

…でもどこへ行けばいいのでしょう?」


「それを自分で考えるのが楽しいじゃないか。まぁでも、いきなり考えつかないだろうし、一つだけ教えてあげよう。」


「どこですか?」


「この海岸の裏にある山を超えていきなさい。そしたらリーデの首都があるはずよ。そこの民営集会所なら、あんたの事情を話せば泊めてもらえると思うし、いろいろ教えてもらえると思うよ。」


「民営集会所?」


「おや、知らないかい?民営集会所ってのは、街のいろんな人が集まって、話したり、食事したり、宿泊したりできる施設だよ。

市場みたいにいろんな物も売ってるのよ。」


「へぇ…そんな所があるんですね。」


「功翔にはないのかい?ああいう所がなきゃ、みんなどうやって暮らすんだか。」


…そんなことを話しているうちに料理ができたようだ


「ほら、お食べ。」


「なんですか…この料理…?」


赤茶色のどろどろとした液体に見たことのない物体…野菜?が入っているようだ…カレーか…?いや違う、香りが全然違う…。


「まぁいいから食べてみぃ。」


一口食べてみる

…!これは…肉や野菜の旨味、酸味、甘みがこのスープに凝縮されている…これは…美味しすぎる…!


「美味しい…ッ」


「パンと一緒にお食べ。」


このスープが香ばしい香りでふわっふわのパンによく馴染む…これは最高だ!


「これ…最高です…!!!」


美味しさのあまり、すぐに完食してしまった

体の隅々にまでエネルギーが染み渡ってくるようだった。満足感が半端じゃない。


「はっはっは!それはよかった!食に馴染めりゃその土地に馴染めるってもんだよ。作り方も教えてやろう…って、ありゃ、寝ちまったのかい?」


「zzz…」


(…まぁ、色々あってまだ疲れているんだろうねぇ。このまま寝かしといてやろう。)


老婆は麗也にそっと毛布を被せた。



5話  終

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コラム

麗也


・本名 三崎 麗也

・年齢 十三歳

・身長 159cm

・体重 45kg

・好きな物 母の作ったプリン

・嫌いな物 功翔

・見た目の特徴

 髪…茶色で短髪

 目…父譲りの黄色い目

 眉…細くて薄い

 鼻…高くも低くもない

 体型…華奢

 服…無地のシンプルな物が好み

 

その他

・家族以外の人とあまり関わったことがないためちょっとシャイ。老婆と話す時も初めは少し緊張していた模様。

・育った国が悪かったために少しひねくれているが家庭環境は良かったお陰で、基本的にはいい子であり、勉強もそれなりにできる。

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