第15話 エッチしないと頭が回らない



 山賊を皆殺しにした俺は、【蒼き炎】と共に帝都を目指して街道を進む。


 その道中、ナギはひたすら俺をヨイショした。



「ティオは凄いのです。色々と凄いのです。具体的に何がというと困るのですが、とにかく凄いのです」


「ティオさんって凄い人なんだなぁ」


「っ、そうなのです。ティオは、凄いのです」



 苦虫を噛み潰したように物凄く嫌そうな顔で俺をヨイショしているが、鈍感らしいシェナは気付かない。



「やっぱりククルカさんが言ってたことは誤解だよね!! ティオさんって親切で強くて、ちっとも怖くないですし!!」


「――ククルカが正しいのです」


「え? えっと、何か言いました?」


「あ、いや、何でもないのです」



 ボソッと本音を言うナギ。


 馬鹿正直なナギに嘘を言わせるのは酷だが、【蒼き炎】での俺のイメージを確固たるものにするには第三者の意見が最重要なのだ。


 いや、でも流石にナギにこの役割を任せたのは間違いだろうか。


 ダメだ。


 しばらくエッチしてないからか、どうも頭が回らない。

 帰ったらアヴィアたちのおっぱいを揉みしだいて回復に努めねば。



「ね、ねぇ、ナギさん。少し相談があるのだけど」


「何なのです? えーと、ノエル?」


「いえ、その、本当に大した相談ではないの」



 そう言ってシェナの親友、ノエルがナギにこっそり耳打ちをした。


 しかし、内緒話など俺は支援魔法で聴力を強化することで内容を盗み聞くことができる!!



「その、ティオさんってどういう女性が好みなのかしら?」


「!? わ、悪いことは言わないのです!! あの男だけはやめておくのです!! 人生の墓場が服を着て二足歩行で歩いているような奴なのです!! 骨の髄までしゃぶり尽くされて食べられないところは燃やして灰にして畑の肥料にする奴なのです!!」


「え、ええと?」



 俺は無言でナギに殺気を飛ばした。


 やはり俺をヨイショする役割を任せたのは失敗だったな。

 この場にいたら何も言わずとも俺をヨイショするナディアを連れてくるべきだった。



「!? な、なんでもないのです!! 今のは違うのです!!」



 ナギは俺の殺気にビクッと身体を震わせて、慌ててノエルに訂正する。


 まったくナギめ、あることないこと吹き込みやがって。

 俺は従順な者に対しては寛容だし、しっかり骨の髄くらいは残してやるとも。


 っと、そろそろその話もしないとな。



「シェナちゃん、ギルドに関することで少し大事な話をしてもいいかな?」


「ギルドに? なんですか?」



 俺はシェナに優しく微笑みながら、あることを提案する。



「もしよかったら、うちの【新星】と提携しない?」


「提携、ですか?」


「うん。F級やE級の小規模ギルドは今回みたいな事態に陥った時、とても危ない。下手したら全滅ということもあり得る」


「そう、ですね」


「そこで提携だ。レイドをする際、物資や人員を相互に補う。情報交換もしたいし、可能なら組合から回されるクエストの共有化もしたいかな。面倒な調整はこっちでするからさ」



 最も重要なのは最後の部分だ。


 ギルド同士が連携して組合から回されるクエストに挑むことは珍しくない。


 ここで俺がやりたいのは【蒼き炎】に面倒かつ報酬の悪いクエストを押し付けて、その実績を【新星】も受け取るというもの。


 楽で報酬のいいクエストは【新星】で独占して利益を得る。


 我ながら素晴らしい考えだと思う。



「それ、すっごくいいですね!!」



 俺の提案の本当の意味も知らないで目を輝かせて言うシェナ。


 まあ、想像通りの反応だ。



「たしかに今回、もしこちらに二倍の数がいたらハイオークも山賊も対処できたかもしれないですもんね」


「うん。それにうちは熟練の冒険者が何人もいる。教えられることもあるはずだよ」


「ちょっとノエルと相談してもいいですか?」


「もちろん」



 流石に即答はしなかったか。


 でもまあ、何事もトントン拍子で決まることの方がむしろ稀だろう。


 それに【蒼き炎】の頭脳は他ならぬノエル。


 そのノエルはシェナから俺の提案を聞き、こちらの様子をちらちら窺いながら頬をポッと赤らめて頷いた。



「そ、それは名案ね!! 提携の話、是非とも受けましょう!!」



 頭脳を惚れさせたら後は楽チンだな。


 提携の話は誰も疑問を抱くことなくトントン拍子でまとまった。


 ああ、可哀想に。


 これから自分達が搾取されるとも知らずに信頼した目で俺を見つめちゃって。

 でも俺は俺に従う者に寛容なので、使い潰すような真似はしない。


 精々長くうちのギルドに貢献してもらおう。


 え? もし【蒼き炎】に俺の企みがバレてしまったらどうするのか、だって? 何も難しい話ではない。


 その時は正面から潰せばいい。


 シェナやノエルのような爆乳美少女だけは残して男共は追い出す。


 そのために色々と仕込むのは面倒だろうが、そういう苦労があってこそ、得たものに価値と愛着が湧くというもの。


 でもまあ、面倒は面倒なので帝都に帰ったら契約書を用意するつもりではいるがな。


 数日後。


 俺とナギと【蒼き炎】のメンバーはようやく帝都まで帰ってきた。


 帝都を囲む防壁を潜り、クエスト中に起こった出来事を報告しようと冒険者組合の建物へ向かう途中。



「っ、ちょっと!! なんでアンタがシェナたちと一緒にいるのよ!?」


「なんでって言われても。ただの偶然だよ」



 俺はククルカと遭遇した。


 相変わらず思いっきり揉みしだきたくなるような爆乳である。

 くっ、ここしばらく女を抱いてないから本当にやってしまいそうだ。


 でも今は我慢。


 頑張って帝都までの道中で【蒼き炎】からの信頼を勝ち取ったのだ。


 下手なことをして信頼を損ねたくない。



「シェナ!! そいつには気を付けなさいって言ったでしょ!! そいつは危ない奴なの!!」


「き、きっと何かの誤解ですよ、ククルカさん」


「はあ!?」


「危ないところを助けてもらいましたし、道中も気配りができて楽しい旅になりましたし。やっぱりククルカさんはティオさんを誤解してると思います!!」



 ククルカが信じられないものを見るような目でシェナを見つめた。


 否、シェナだけではない。


 サブマスターのノエルやその他の【蒼き炎】の面々までも同じように見ている。


 悪いな、ククルカ。


 お前が目にかけていた【蒼き炎】の中では、お前よりも命の恩人である俺の方が信頼できる相手になったのだ。


 それ以上ククルカは何も言わなかった。


 ただ俺を無言で睨みつけて、足早にその場を去っていく。

 正直あの爆乳をぶるんぶるん揺らしながら睨まれても、ちっとも怖くない。


 むしろ興奮してしまった息子を沈めるために、俺はアヴィアたちの待つギルドホームに向かうのであった。


 アヴィアやナディア、カレンでは足りない。


 アルネリアもギルドホームに招いてハーレムエッチと行こうか。






―――――――――――――――――――――

あとがき

どうでもいい小話


作者「エッチしないと頭が悪くなる系主人公」


テ「悪いか?」



「ナギかわいい」「ククルカ可哀想で草」「ええんやで」と思った方は、感想、ブックマーク、★評価、レビューをよろしくお願いします。

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