第5話 普通の謝罪では満足できない
奴隷を買ってから一ヶ月後。
「ほっ!!」
「グギャ――ッ!!!!」
俺は穂の代わりに剣が付いた槍を勢いよく振り下ろし、ライトニングドラゴンの首を鱗ごと叩き斬ってやった。
「ふぅ、ちょっと時間かかったな。やっぱり身体が鈍ってるか」
「ティオさま、凄いです」
「ははは。もっと褒めろ、ナディア。俺はお世辞でも俺を称賛する奴が大好きだからな」
「いや、あの、ティオ様。お世辞とかじゃなくて本当に凄いですよ!? ティオ様ってちゃんと人間ですよね!?」
幼い子供のように目を輝かせているナディアに対し、ポカーンと口を開いたままのアヴィア。
ナディアと一緒にアヴィアを攻め堕として以降、アヴィアからは俺に対する遠慮が失くなったように思える。
「失礼だな、アヴィア。またお仕置きしてやろうか」
「ええ!?」
「ティオさま、アヴィア姉さまだけずるいです。ナディアもお仕置きしてください」
可愛い奴隷たちである。
「よし、じゃ帰って飲むかー」
「ティオさま、お酌します」
「わ、私もします!!」
「うへへへ、酒の後はおっぱい三昧だな」
「「――ッ♡♡♡♡」」
俺は懐からスクロールを取り出し、封を切って開いた。
これは魔法を封じ込めているアイテムで、少しお高めな代物だ。
今回用意したスクロールは転移魔法。
遠い場所へ一瞬で移動できてしまう古代の魔法技術がふんだんに使われている。
倒したライトニングドラゴンの死体も一緒に帝都まで飛び、冒険者組合に買い取りを依頼して金貨がどっさり詰まった袋を受け取った。
その足で酒場まで向かう。
高級レストランで食事するのも悪くないが、俺が新人だった頃はクエスト終わりを同じ酒場で過ごしていた。
帝都の大通り沿いにある大きな酒場だ。
俺はお高めな酒を注文し、ナディアとアヴィアに酌してもらう。
「ぷはあっ、うまうま。やっぱクエスト終わりは酒だよなあ」
「ティオさま、素敵な飲みっぷりです。カッコイイ」
「うへへ、ナディアのおっぱいもでっかくて可愛いぞぉ」
俺は片手にジョッキを持ちながら、もう片方の手でナディアのおっぱいを揉みしだいた。
柔らかい。デカイ。手に収まらない。
「むむぅ」
俺とナディアがイチャイチャしてると、それを見ていたアヴィアが頬を膨らませた。
そして、俺に椅子ごと近づいてきて――
「ティ、ティオ様!!」
「お? おお!?」
「うぅ、ちょっと恥ずかしいです……」
俺がジョッキをテーブルに置いたタイミングを見計らって俺の手を取り、自らの大きなおっぱいを揉ませてきた。
両手に華どころの話ではない。両手におっぱいである。
両手が二人のおっぱいで塞がってしまったので、酒はアヴィアに飲ませてもらい、料理はナディアに食べさせてもらう。
あー、最ッ高!! このまま二人とエッチしてぇ!!
「おいおい、いつからここはガキが女と乳繰り合う場所になったんだあ!?」
と、俺がアヴィアやナディアと楽しくアルコールを接種していたら、そう言って柄の悪い男が話しかけてきた。
知らない顔だ。もしかしたら最近帝都にやってきたばかりなのかも知れない。
俺は帝都で活動している冒険者の顔は全て覚えているからな。
というわけで――
「おらぁ!!」
「ふぎゃっ!?」
俺は絡んできた冒険者の顔面をぶん殴った。
そのまま倒れ込んだ冒険者に跨がり、その顔面を執拗に殴りまくる。
冒険者は舐められたら終わりだ。
こちらを侮ってきた相手を放置しておいたら「ああ、あいつは言い返す度胸もないのか」と周囲にも侮られる。
だから暴力で黙らせる。
酒、金、暴力!! 冒険者はその三つが揃ってようやく一人前だと俺は思っている。
最近までギルドマスターの仕事で忙しくしていたせいで、酒や金はともかく、暴力を披露するタイミングがなかった。
なので今日は思いっきり暴力を使わせてもらう。
中途半端にボコボコにするのは良くない。それは報復を招く。
必要なのは理不尽なまでの暴力!!
逆らう気力すら叩き潰すまでの絶対的かつ圧倒的な暴力なのさ!!
「ふぅ、いい汗掻いたわー」
俺は顔面が変形した冒険者の身体を蹴っ飛ばしながら、額の汗を拭う。
こちらを見ていた冒険者たちが一斉にサッと視線を逸らし、目を合わせなくなった。
やっぱり暴力は素晴らしい。
鬱陶しい視線を向けられることが無くなるし、自分の力を周囲に誇示することができる。
っと、いかんいかん。
酒の勢いで喧嘩を売ってきた冒険者を半殺しにしてしまったが、今はアヴィアたちがいることを忘れていた。
俺が二人の方に振り向くと――
「ティオさま、カッコイイ♡」
「え、ええ、そうね♡」
「むむ……」
ナディアとアヴィアが俺を見てうっとりした表情を浮かべていた。
多少は引かれるかと思っていたが、そういう様子はちっとも見られなかった。
俺が疑問に思っていると、アヴィアは苦笑して理由を話す。
「意味なく手足を切られたり、目や喉を潰される理不尽を知ってますから」
と、アヴィアは語った。
俺の前に二人を所有していた貴族は、リョナ性癖の持ち主だったらしい。
女の苦悶に満ちた顔や声、身体の機能を失った状態に興奮する生粋のド変態で救いようのないゲスだったとのこと。
その貴族はリョナった娘の父親に惨殺されて亡くなったらしいが……。
世の中ヤバイ性癖持ちもいたものである。
その貴族と比べたら、周囲に侮られないようにするためという意味ある暴力を振るう俺は十分にカッコイイそうだ。
ちょっと二人の感性は分からないが、怖がられていないなら文句はない。
「よーし、飲み直そーっと」
俺はアヴィアとナディアのおっぱいの柔らかさを堪能しながら、楽しい一時を過ごした。
しかし、ここで更に一つトラブルが起こった。
「ティオ・カスティン。話がある」
見覚えのある女が話しかけてきたのだ。
一ヶ月前、S級ギルド【闇夜の星】所属の冒険者たちから嘆願書を集め、俺をクビに追いやった女。
カレン・スカーレットだった。
相変わらず素晴らしい爆乳をしており、思わず揉みしだきたくなる。
しかし、どうも久しぶりに会うカレンは余裕がなさそうだった。
装備の一部がボロボロで、何か問題が起こったであろうことは一目見て分かってしまう。
「ティオ様、こちらの女性は?」
「……もしかして、前に言ってたティオさまを追放したギルドの人ですか?」
「あ、そうそう」
察しのいいアヴィアとナディアがカレンの正体を知り、警戒心を露にする。
ナディアに至っては敵意を向けていた。
「……もう新しい仲間を見つけたのか」
「おう。ま、奴隷商で買った奴隷だけど、おっぱい揉み放題でお尻は撫で放題。夜もエッチしまくりだ」
「そ、そうか」
「で? 俺を追放に追いやった女が何の用で話しかけてきたんだ? んん?」
大方予想はできるが、敢えて意地悪する。
嫌がらせとかじゃなくて、ほら。好きな子をいじめたくなっちゃう奴だよ。
俺の問いに対し、カレンは歯噛みしながら答える。
「最初は、順調だった。でも次第にギルド内でのいざこざが増えて、いくつかのパーティーがギルドをやめてしまった」
「ふむ?」
「人が減り、そのうち組合から回されるクエストの処理が追いつかず、『紅玉の剣』も駆り出したが、それも最近は休息がロクに取れず、上手く行かなくなってしまって。書類仕事は事務を雇ってみたが、結果は芳しくなく……」
「評価が下がってS級ギルド資格を取り上げられたとか?」
「……うむ。今はA級ギルドになってしまった。それを機にギルドが落ち目になったと判断したのか、優秀だったパーティーも抜けて、私の『紅玉の剣』以外のギルド幹部が率いるパーティーも抜けてしまって。今では一桁のパーティーしか所属していない。そのわずかに残ったパーティーも問題ばかり起こす奴らで……」
「そっか。で、お前は俺にどうしてほしいの?」
想定より悲惨だった。
まさか一ヶ月でA級ギルドに降格した上、問題のあるパーティーが一桁しか残っていないという事態になるとは。
精々クエストに手が回らなくて半分くらいに規模が縮小するくらいかと思っていたが……。
正直ざまあ!! って感じ。
俺はあまり表情には出さないで平静を装いながらカレンの話に耳を傾ける。
「勝手なことだとは、承知している。今さらどの口がと言われても仕方ない。でも、その、【闇夜の星】には貴殿が必要だった。この通りだ。戻ってきてくれ」
それは誠意のこもった謝罪だった。
しっかり頭を下げて、自らの過ちを認めていることが分かる。
だからこそ、俺は普通の謝罪では満足できなかった。
「ちょっと頭が高いんじゃない?」
俺は更なる謝罪の意思表示を要求した。
え? 別にカレンを可哀想な目に遭わせたいとか思ってないよ。ないったらない。
―――――――――――――――――――――
あとがき
どうでもいい小話
作者「敢えて普通の謝罪→土下座の方がいいと思った。作者がそう判断した」
テ「だな」
「両手におっぱいとか最高かよ」「うらやまけしからん」「敢えて普通に謝らせてから土下座させる鬼畜っぷり」と思った方は、感想、ブックマーク、★評価、レビューをよろしくお願いします。
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