第10話

「あの時みたいに、キス、してほしい///」


 よーちゃんはそう言って、私の首に巻いた腕で私を抱き寄せると、背中から倒れ込みました。

 急な出来事で呆然とされるがままになってしまいましたが、この構図、今の状況を第三者の誰かが見たら間違いなく私がよーちゃんを押し倒したと勘違いされるような、そんな危険で淫らな体制。


 よーちゃんのすぐ真横に手をついて、彼女の顔を見下ろせばその表情は火照り息遣いもいつもとは全然違くて、私は背中にゾクゾクっと刺激が走る感覚を得ます。


 あぁ、忘れようと努力している感覚が、また燃焼されて身の内側からふつふつと湧き上がってきてしまいます。


「ねぇ、美月のせいで傷ついたんだからね?責任とってよ」

「っ//せ、責任ってなんですか。キスをすることが責任をとることになるなんて、到底思えませんけど」


 私が体制を変えようと起き上がろうとすると、よーちゃんは逃がさないと言わんばかりに私の首に回している腕の力を強めます。


「あーもうっ!どうしてそこで、すんなりとキスしてくれないわけ?私にここまでさせといて、美月だってムラムラしてるはずなのに、どうして美月は踏みとどまるの?ほんっとに意味わかんないんだけどっ///」


 ………だって。

 だってキスですよ?この前のことだって、頭がごちゃごちゃしてて私がおかしくなっていただけで、本来はキスって、好きな人とするものでしょう?そんな簡単に唇を差し出すとか、奪うとか、頭がおかしくないと出来ない行動ですよ。


 なんで、どうして。よーちゃんは私のことを恋愛的な意味で好きとかじゃ無いはずで。私だってよーちゃんのことは、きっとそういう目では見ていない。


 多分、私はよーちゃんのことを恋愛的な意味で好きではない。


 だからキスしちゃ、ダメなはずなのに。

 どうして、私は今こんなにもドキドキして、よーちゃんの唇から目が離せないんですか!

 顔が熱いです。頭の中がごちゃごちゃして、ポワポワしてきて、視界がぼやけてきます。あぁ、身体が、あっついです。


「ダメです。離して、ください」

「いや。キスするまで離れない」

「い、いい加減に―――」


 少し強引にでも彼女から離れようと試みたとき、よーちゃんは「あーもう!」と苛立たし気に呟きながら起き上がろうとする私の頬を両手で掴み、そして、、、


「―――んっ」


 キスを、


「んっ」


 キスを、、


「んっ」

「ちょっ、な、何回するん――」

「――んむっ」


 何回も何回も、触れるだけのキスを、啄むようなキスを。


「………どう?美月もしたく、なるでしょ?」


 あぁ、もうどうして彼女はこうやって私の心を搔き乱すんですか。

 彼女の荒っぽい吐息が、私を悶々とさせていること、気付いているんでしょうか。きっと気付いてるんでしょうね。気付きながら、私をこうして挑発してる?煽ってる?


 悶々とした気持ちは昂るばかり。


 これはもう、発散するしか………。


「ほんとうに、良いんですね?」


 本当に良いんでしょうか。

 この身体よりも前へ行こうとする気持ちの名前も分からないまま、本当によーちゃんとこんなことしても良いんでしょうか?


 分からない。

 頭がごちゃごちゃしてます。

 分からない。

 身体が熱っぽいです。


 もう、この気持ちの名前は後で探しましょう。

 今は、目の前の愛しくも小悪魔なよーちゃんで、この悶々を晴らすことだけ考えましょう……。


「ぁむ。……はむ。………ぅん」


 今までの人生で一度も性的興奮を外に発散してこなかった私は、その全てをぶつけるように彼女の唇を貪ります。

 やわらかい唇を舐めるたびにパチパチと視界がはじけて、クラクラしてきます。


 知識ばかりが身についたけれど性には悉く経験の浅い私はキスに夢中で、よーちゃんが私の手を取り彼女の胸に誘導していたことにも気付けないまま、私は無意識によーちゃんの胸を無我夢中で揉んでいました。


「んぁ//………んっ、ふぁ、……ぁ///」

「ん♡……なんて声を出してるんですか、よーちゃん」

「ぅる、ひゃい。……手、止めないで。……ちゅーも、続けて//………もっと、気持ちよく、してぇ」


 私の手や口で啼くよーちゃんを見て、気付くと私の手は彼女の服の裾を捲り、その柔肌へと直に触れ、滑り込ませてもっと彼女を啼かせたいと試行錯誤し厭らしい手つきを学習していくのです。


 そうやって『えっちなキス』も、『厭らしい手つきでの胸へのご奉仕』も私の性の捌け口として一身に受けたよーちゃんは、淫らな息遣いで言いました。


「はぁ……//はぁ……//………みつきぃ、こっちもしてぇ。最後まで気持ちよく、してぇ///」


 足を下品にも開いて、分かりやすく何処のことを言っているのかアピールするよーちゃん。


 グラッと、鈍器で頭を殴られたような衝撃でした。

 本当にそこまでしていいのか、再び私は考えます。


 自分で触って気持ちよくなれない箇所。

 増してや、痛くて怖いとすら思ってる部分を、私が?

 しかもよーちゃんのを?


 そこまで考えて、私はあの日見た百合アニメで一瞬だけ映されたえっちなシーンを思い出しました。

 とりあえずよーちゃんの履いている制服のスカートを手繰り、彼女のショーツの上から手をあててみます。


「んぅ♡」


 果たしてアニメで得た知識をここまで鵜呑みにしていいのか分かりませんが、私もここまで来たらよーちゃんを最後まで満足させたい。それで私は満足したい。

 だから聞きました。


 出来るだけ彼女が嫌がらないように。

 気持ちが冷めないように。


 厭らしく上目遣いで、チロリと舌を覗かせながら。


「よーちゃん。………舐めて、いいですか///」


 下には親がいるので、声、我慢してくださいね。

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ツンデレで小悪魔で掴めない小羊は今夜、淫らなネコに転職します 百日紅 @yurigamine33ki

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