第34話 世界の秘密

「壱星を加工できる様になったよ」


今のレベルはレベル35、ようやく加工が可能となった。この間にもう一つ壱星の種を入手、2人分上下の服を作ることができそうだ。種を植えて繊維を取りたいところだが畑作りも一筋縄にはいかない。特殊素材のオンパレードだ。まあそれでも作る価値はあるけどね。「燃える土」、溶岩のように高温でドロドロ、永久にその温度を保っている土。「重力金属」、磁石のようだが金属以外もくっつく、独自に重力を持っている。これらを畑に混ぜて種を植え一ヶ月待つ。


「変わった植物」


星のような見た目、キャベツに近いかな、何枚か葉が重なり合っている。葉はふにゃふにゃだがちぎろうとしても微動だにしない。根ごと掘り出し特殊な溶液をかけ風車の杵を使ってとにかく叩き潰す。繊維を取り出せたら編み込んでいく。


「できたよー!」


完成、壱星の服! 布の切れ端を木に貼り付けて強度をチェック。鉄の槍を使い戦技を使って壱星の布に攻撃を加える。突き刺さったと感じたが傷一つ付いていない、後ろの木はノーダメージ。しかしペラペラで柔らかい。かなりの衝撃を吸収してしう不思議で特殊な布のようだ。魔法にも強い。とにかく強力な防具を手に入れた! それを上下二着作成。柔らかいから好きなように加工できるのもいいね。ただ残念ながら武器用の強力な隕石は手に入らなかった。かわりにもう一つ虹色の隕石を入手。黃隕石以上の武器は限られてくる。上位の武器陣の素材入手難度は高い。金もとんでもなくかかる。そこからは一生物の武器になるしね。もっとレベルが上ってから考えるか。いつものようにレベルを上げ続ける。破獣を討伐した帰り道、アリーが破獣の死骸を眺めながら話をした。


「前から思っていたんだけど、破獣って有用だよね。捨てるところがないというか」

「ふむ、偶然じゃないかな。破獣を使えるようにいろいろ考えた結果とか。人間に便利な破獣だけ生き残ったとか」

「ふーむ、やっぱり偶然なのかな」


なかなか鋭い意見だ。実はゲームをやり尽くしているからその件についても知っている。彼女には言えないかな、この世界の成り立ちについては。戦利品を協会に売払い拠点に帰る。


「いけない、調味料がなかったんだ。レンからもらってくるね」

「はいよ」


拠点からでていくアリー。改めて家の中を見渡す、そうだな、破獣を使った食べ物や製品が本当に多いな。


「まさか自分達で作り出した世界とは今の人達は知らないだろうな。協会なら知っているかも?」


大昔、平和が長く続いたこの世界の人達は全てのものを愛し、ついには動物を殺して食べるということもしなくなってしまった。栄養がかたより弱っていく人々。このままでは人類が滅びると考えた一部の人達は獣にコントロール装置を取り付け人を襲わせるように仕向ける。彼らが協会の元となる組織。流石に向こうから攻撃してくるのであれば抵抗せざるおえない、殺すことを悲しんだが、死体を無駄にするのはということで人々は獣を食べるように。協会の思惑通りに事が運び、次第に襲ってくる獣の種類を増やし、いつの間にか食料以外の人を襲う獣も作られた。こうして破獣が生まれた。しかし予想外の出来事がおこる。破獣がコントロールを受け付けなくなり力をつけていった。制御装置の影響だと思われる。黒い石を取り付けた個体が死ねば騒ぎは終わるだろうと思っていた協会の人間達はパニックに。一般人ではもはや敵わなくなり、追い詰められる人類。対抗策として人類に強化装置をとりつける。新型でコントロールの精度が高い装置を作り出し、獣に取り付ける。魔物使いと魔物が誕生。こうやっていびつな世界が生まれた。


「ただいまー」

「おかえり」


装置の詳細やどんな人物達かは詳しく語られていない。当時は今よりも科学や魔法の技術は高かったようだ。今では失われた技術があるとか。設定はあるが古代の技術等はゲーム本編では出てこなかった。ふむ、言わないほうがいいだろうな。皆混乱してしまうだろうし。


「レベルアーップ」


それから戦い続けてレベル40、俺達もついに高レベル魔物使いの仲間入りだな。そうだ、ランキングの魔物使いと試しに戦ってみようかな。ランキング戦、百位までの魔物使いのデータと対戦することができる。中身はいないのでAIとの対戦になる。魔法通信でランキング画面を出す。一位から百位まで強そうな魔物と魔物使いがずらりと並ぶ。うひょー強そう、こりゃ簡単に負けちゃうかな。百位の魔物使いと対決。


「いくぞ!」


基本は一体ずつ倒していく。倒しきれないと回復されジリ貧、負けが濃厚に。セオリー通り一体に攻撃、シロの攻撃で一瞬にしてHPが溶ける。はは、シロは強いからな。このまま戦い続けランク100を倒してしまった。いやー、俺も強くなったものだ。楽しくなって下から順番に戦っていった。強敵達を倒していくと強くなったことを実感する。半分の五十位まで到達、そろそろきついかもな。言っても世界の強者達だから、はは、そろそろ圧倒的な力の前にひれ伏すことになるんじゃね。時間を忘れて戦い続ける俺、そしてとんでもない出来事が起こる。


「ご飯できたよー、ってどうしたの呆けちゃって」

「倒しちまった」

「誰を?」

「ランキング一位を」

「は?」


強いと思っていたがやはり交配は強力だったか。まあそうだよな、最低でも二体分くらいの強さはある。誰もが認めるチートだ。圧倒的な強さで一位の魔物達を蹴散らすシロ。良かった、ランキング戦に本格参戦しなくて。ここで戦うだけならデータは残らない。こっそりと世界一位を達成、皆と喜びあった。

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