第32話 現代の食べ物

「アレスさん。お届け物です」

「ご苦労さま」


協会の宅配サービスを利用、いつもなら高くて滅多に使わないが、便利アイテム発光石の入手のため奮発。発光石は蛍光灯くらいの明るさを放つ石。今回は原料を大量に宅配してもらった。おかげでかなりお金が飛んだけど。


「まあ明かりだからね、非常に有用な道具になる」


あるのは知っていたが結構なお金がかかるから様子見していた。十分資金が整ったので距離があったが無理矢理にでも入手することに。


「これだけあれば一生分?」

「そのくらいあるかも」


他素材を集める。発光石の元は特殊な砂、これを他素材と混ぜ合わせながら好きな形の型にはめ固める。完成、発光石!


「こいつを水につければ、お、光った」

「眩しいくらい」


白色の石が水の中で光り輝いている、光を感じると自動的に光を発さなくなる。水から出せば明かりは消える。性質からして基本放置でいい。水につけてから半年ほどは発光を続ける。透明なケースに水を入れて石を入れればランタンのように使える。天井に吊り下げると部屋内を明るく照らした。いいね、夜でも明るいって。今までは松明やランプ、ろうそくだったがこれからは発光石を使っていこう。夜の作業がはかどる。特にアリーが喜んでいる。


「いつも見づらかったんだ」


ランプは明るめだが油によっては臭いが部屋にこびりつくからね。臭いが気にならない植物性の油は高いし。安全性を考えてもやはり発光石の圧勝。火事になる可能性はほぼゼロ。明かりの革命が起きパーティを。翌日、朝食後に水車の動きが悪かったから小屋へ。


「もうちょい下に下げるかな」

「ねえ」


水車を調整しているとアリーが猫なで声でおねだりを。


「自動の石臼が欲しいな~」


石臼は長時間回し続けることもあり結構大変だ。そこで水車を動力とした石臼を作ることに。大きめの歯車を作り軸に取り付ける。もう一つ歯車を作りそちらは石臼に取り付ける。一気に入れられて少量ずつ石臼に入っていく機構を作り完成。これで手間も時間も節約できる。他にも食物の繊維を叩き潰したりできる杵を製作。水車はやっぱり便利だな。


「服のボロをそのまま捨てるのはもったいないから紙を作りたい」


アリーの提案で、紙を作ることに。ボロ布を切り刻み、植物の繊維と一緒に発酵させ臼と杵で粉々にして水に溶かしすく。すいた紙を乾燥させ破獣で作ったニカワを塗り完成。じゃあペンでなにか書いて、ペンもインクもないな。ペンは羽ペンでいい。インクの作成。ススをスライムの樹脂で練り、水に溶かし完成。現代の紙のようにとはいかないが思っていたよりもスムーズに書けるな。作った紙を倉庫にしまい、食後眠る。翌日は魔物使いは休日。お互い自由に過ごす。


「そうだ魔法通信のシステムで」


発光石で思い出した、そういえばダンジョンに挑戦できるようになっていたな。ダンジョンと言っても魔法通信を使った仮想のダンジョン攻略。クリアするとポイントが貰え、そのポイントと交換でアイテムを入手できる。どんなアイテムと交換できるか確認。どれも簡単に手に入るな、正直魅力は薄い。一人で魔物使いをやっている場合はありかな、高い製品を買わなくて済む。一人用の救済措置的なところもある。一応やってみようかな。すでに攻略法は知っている。ダンジョンは俺達のデータをそのまま使うことができる。


「スタート!」


地下ダンジョンだから暗い、発光石を頭に巻き進んでいく。何も考えず進んでしまうと罠を踏み抜く可能性がある。槍で地面、壁、天井をつつきながら進む。ダメージや死んでも本体には影響ないから強引に進むのも手ではある。部屋がある、入って宝箱を発見、当然罠付き。知恵を上げてある場合は解除できるが脳筋の俺は無理。この場合は武器で破壊することになる。確率で中身を手に入れることができる。破壊して宝箱の中身、500ポイントの入手に成功。破獣も出るが余裕で倒せる。宝箱を漁ってボス部屋に到着。ボスも余裕で撃破、1000ポイントを入手。ダンジョンクリア! もっとポイントを多く入手できるダンジョンがあるがそれでも普通に狩りをやったほうが断然効率がいい。まあ何事も経験だということで。夕日が差してきた、そろそろ晩御飯か。


「へー、それなら一回くらいやるだけで良さそうだね」

「だな」


アリーと食事をしながら会話。もう彼女とは付き合いが長いな。そろそろ異世界から来たことを伝えても問題ないだろう。


「真面目な話がある」

「え、う、うん、いいけど」


話があると二人きりになり彼女に俺が異世界人であることを伝える。


「ああ、そっち系の話か! なんとなくは皆と違うなとは思っていたけど、いいんじゃない、アレスはアレスだよ」


すんなり受け入れてくれた。そもそも違う話と思っていたようだけど。その後もいつもどおりの魔物使いの生活を送る。しかし俺の体に異変が起こる。


「うっ!」

「どうしたの」

「大した事ないから」


一種の発作だろうか、心臓の鼓動が強くなった。心配そうな顔をするアリー。心当たりがある、そう今は不可能なこと。


(ポテチが食べたい)


チョコを食べたい、醤油ごませんべいを食べたい、和食が食べたい! ああ、特に体が醤油を欲している。大豆ってこの世界では激レアだから作れないんだよね。希少というか存在を確認できていない。作り方もわからないし詰みだ。急に食べたくなることってあると思います。別になくてもいいけど。命に関わることでもないし。


「本当に大丈夫?」

「自分が居た世界で食べていた食べ物を思い出していたんだ」

「あーそういう」

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