第30話 不穏な街

「えーっ、この子がシロ?」


驚くレン。強くはなったけど見た目が結構変わったな。よく一緒に行動するし流石にもうごまかせない。仲が良いし、彼らには俺の力のことは伝えよう。


「へぇ、それでね。強いならいいんじゃない」


納得してもらえたようだ。前からスパイクシューターがちょっと違うなとは思っていたようだ。奥からアリーが料理を運んでくる。


「今日はチーズ料理だよ」

「楽しみ!」


作っておいたチーズが完成、様々な料理に使用。まずは先方、串にさし焼きチーズ。ああ、濃厚! お酒が進む! 次鋒クラッカーアンドチーズ! やはりそのままは最高! こうしてチーズ料理を堪能する俺達。


「そういえば最近悪い噂が流れているのを知っているか?」

「久しぶりに帰ってきたところだからわからんな」

「それはそうか」


街を作る、もしくは作ったから一緒に行かないか、という活動をしている人達がいる。それ自体は別にこの世界では普通のこと。街の歴史をたどっていくと、初期の頃はそうして人々が集まり街が作られていった。この国もそう。


「人々を奴隷のように扱う者たちがいるとか」


悪い奴らがいたものだ。人間の歴史を見ると結局上の取り合いではあるな。仲良く皆働けばいいのに。


「恐ろしいのは彼らは率先して働いているのだとか。むしろ喜びながら。痩せこけ、力を失いそれでも彼らは働くことをやめない」


楽しそうに働くブラック企業の人って聞いたことはないな、普通ではない。うーん、洗脳か催眠とか? どちらにせよ危険な奴らがいるようだ。


「街作りの呼びかけには気をつけておいたほうがいい」

「そうだな」


ある日、破獣の戦利品を片付けていると協会の人に呼ばれる。アリーを帰し協会の人と話を。


「とある街の話なんだが」


エンから聞いたあの話だった。


「内部に入り調査をしてもらいたい。かなり危険な仕事になるから協会も全面的に支援しよう」

「有名どころの魔物使いに任せたほうが良いのでは」

「名が知れていては怪しまれる」


俺くらいが丁度いいという。幸いなことに魔物使いもいるが俺よりも皆弱い人達のようだ。万が一襲ってきても勝てそう。まあ魔物使い同士の戦闘は最後の手段、危なくなったらすぐに逃げる。


「呼び込みをしている者はわかっている。そこから先をこれから調査してもらう」

「わかりました」


拠点に帰り準備、2日後、呼び込みのいる公園へ。


「我々と魔物のための世界を作りませんか~」


いた、数人の呼び込みが公園入口付近に。彼らに話しかける。


「その話、興味があるんだが」

「詳しくお話しますね」


呼子が言った通り魔物中心の世界を作る街。条件としては魔物使い、あるいは魔物を連れている一般人。危険な団体な可能性があるからな、すべての話が怪しく聞こえる。


「どうします?」

「その考え方気に入った。俺も仲間に入れてもらえるかな」


調査のために街に行くことに。気に入らなければ街からいつでもでていっていいとのこと。一度街に入ってしまうと抜け出せなくなる自信があるということか? ここで考えてもわからない。アリーには数日出かけてくるとごまかし俺は魔物の街へ。ドンモルに来ている住人達と待ち合わせ。ファングだけを連れてきた。魔物の皆は変身済みが多いから連れて行くとややこしくなりそうだからね。彼らが待ち合わせ場所に、少し痩せていて顔色が悪い。やはり街にはなにかありそうだ。


「おー、立派なオーバーファングですね、触っても?」

「いいですよ」


嬉しそうに撫で回す男性、ファングも嬉しそうにエラ息をする。魔物が好きそうだな、彼は悪人ではなさそうだ。となると騙され働かされている可能性が? 馬車で街まで移動、豪勢な建物が見えてきた。かなり稼いでいそうだ。街に入り馬車から降り移動。


「我々が住む場所はこちらです」


見えていた豪華絢爛な建物とは違い、あばら家と言ったところ。あの建物にグループの首謀者がいるのかも。


「魔物はこちらで預かりますよ」


そうか、魔物を人質に彼らを働かせて? しかしどうする、ここでシロを渡してしまうと面倒なことになりそうだ。


「あ、わかります。その場合は一緒に」


あれ、そこはいいんだ。街の中を移動、言われるがままについていく。着いた場所の建物は半分は豪華な一軒家、もう半分はボロ屋。豪華な方に魔物が居住、人間の住む場所はオンボロ。


「あなたの場合はここがいいかもしれませんね。ああ、すみません、言い忘れてました。あのお金がかかっている豪華な建物は魔物達のための家です。彼をそこへ連れて行こうとしていたんですよ、説明不十分で申し訳ない」


彼らの正体が少し見えてきたかもしれない。引き続き調査をする。あの豪華な家を調査する。中に出入りするのは自由だ。門を通過し建物内に入ると、そこには王様のようにくつろぐ魔物達が。甲斐甲斐しく世話をする人々。


「クロちゃん今日も元気だね」

「ほーら、高級なご飯だよ、お食べ」


やはりそうか、この街の正体はわかった。三日ほど過ごし俺とは合わないと街を後にする。合わないことはないんだけどね。


「どうだ、なにかわかったか」

「はい」


魔物達が豪華絢爛な建物で生活し豪勢な食べ物を食し、痩せこけようとも自分達のことはかえりみず世話をする。自分達よりも良いものを食べさせ、良い場所を提供する、現代にもそんな人達は居た。そう、彼らは。


「ただの魔物好きです」

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