第26話 乗り物

破獣討伐を続けてレベル20に上がる。魔物使いの間では中級者と呼ばれるレベルに達した。魔物を八体仲間にできるようになった。拠点に戻り一夜明け今日はお休みの日。外で魔物とたわむれながらのんびりする。そろそろお昼、今日はエン達とBBQの予定だ、そろそろ来るかな。


「アレスー!」


エンが手を振りながらこちらに近づいてくる。バイクの様な乗り物に乗っている。蜘蛛型の魔物が糸をタイヤのように回して走っている。


「どうだ、いいだろう。空も海も行けるんだ」

「へえ、見せて」


タイヤから降りて糸を吹き出す蜘蛛の魔物。今度は糸を手に持ち振り回しヘリコプターのように空を飛んだ。速度もそこそこ、なかなかに面白い乗り物だ。


「あーもう、エンったらはしゃいじゃって」


遅れてレンは空から現れる。魔法のほうきに見えるが彼も立派な魔物、先端はよく見ると頭、顔になっている。全体的に見た目はそのまま魔女っぽいな。更にこの魔物も海中を進むことができる。レンが魔物から降り地上に。


「はは、仕方ないさ。男の子にとって乗り物は浪漫なんだ」

「そういうものなんだ」


乗り物に乗って今日はどこへ冒険に行こうってなるものだからな。初めて自転車を手に入れたときはワクワクしたものだ。


「空はいいぞ」


BBQをしながら談笑、満腹になり魔物に乗ってエン達は帰っていった。


「俺達も乗り物が欲しいな」

「うん」


協会の資料室で調べる。乗り物として利用できる魔物は騎乗の特徴を持っている。ステータス地形の隣に陸、空、海と対応する地形が書かれている。魔物は全て一人乗り。できれば戦闘が可能な魔物が良い、破獣と出会ったらそのまま戦闘に移行できるからだ。そして空と海に適性を持っていることが望ましい。陸はなくてもいい、空を飛んで移動でいい。人間は空を飛べないし早く泳げない。このままで戦えない、ということで我々は乗りながら戦うことになる。獣人には空を飛び海を高速で泳ぎそのまま戦闘できる種族がいる。羨ましい限りだ。


「私はこの子がいいなー」


ふむ、イルカに似ている魔物ブルーバブルか。空、海適正、戦闘も可能、泡を吹き出しドラムのように楽器にする魔物。はは、アリーの好みの魔物だな。俺はどうしようかな。あの子もいい、この子もいい、時間が過ぎていく、気がついたらもう夕方、悩みすぎて決めきれなかった。拠点に戻り一夜明け翌日。


「とりあえず乗り物講習を受けよう」


空飛ぶ乗り物に乗ることで非常に危険な事故が起こる可能性がある。そのため現代の自動車講習のようにある程度の規則があり、免許性になっている。魔物使いならほぼ空飛ぶ魔物をもっているからね、必要な制度だ。ただそこまで難しくはない、講習後そのまま試験を受けて余裕で受かった。主に走行する場所と常識的な問題だった。


「いい子見つかった?」

「まだ迷ってる」


免許を手に入れたがまだ決まっておらず、とりあえずアリーの要望の魔物を仲間にすることに。


「わー、キレイなところ」


草は海藻に近い見た目、特殊な泡が上空に向かって飛んでいく陸上だが海中かと勘違いしそうな不思議な場所だ。ブルーバブルを見つけ仲間に、グランと名付ける。ついでに付近の魔物の情報を得る。


「む、ホースジェットか。好みだが適性が空だけなんだよな」


別名飛ぶ馬と呼ばれているが名ばかりで、見た目は水上バイク、近未来型のタイヤのない浮いたバイクのような形状。馬の魔物が進化した結果手足が変形してなくなったんだろうな。収斂進化というやつか? 空を滑るように飛ぶなら手足はいらないよね。前面には馬っぽい顔がある、そこから鳴き声が聞こえる、呼吸もしている。特徴で力が強いを持っていて攻撃力が高いが、空だからやめておこう。引き続き魔物の情報を収集。近くの川に移動、魔物を探す。川で泳ぐ魔物を発見、近づいて情報を得る。


「エイに近い見た目の、バリアントレイ。水中を泳いでいるこの子は海の適正だけ、素早いの特徴を持っているがダメだな、残念」


そろそろ夕方、一旦近くの宿場町に引き上げる。集めた情報を確認、交配はどうだろう。


「む、この組み合わせは」


ホースジェットとバリアントレイを組み合わせると空と海に適応する魔物が生まれることがわかった。しかも力が強いと素早いも付いた。すごい、これ以上無いと言える付き方じゃないかな。戦闘能力が非常に高くなる、決まりだな。まずはフライジェットを仲間に、川へ行きバリアントレイを仲間にして交配。バリアントジェットが産まれた。


「今日からお前はジェットだ!」

「ブルル!」


早速乗ってみる。三本角があり、うち二本がこちらに向かって伸びておりハンドルになっている。もう一本が先端についていて太く鋭い、突き刺したり切り裂いたりして武器になる。尾とヒレがエイのそれ。背中にちょうど背びれが来る、乗り心地がいい。素晴らしいね、空の旅!


「風が気持ちいい」


グランに乗り背びれにつかまって風を感じているアリー。泡を爆発させる等魔法攻撃をする魔物だ。これでかなり行動範囲が広がった。今後は近場は今まで通り、遠出はジェットに乗り移動することになる。目的地近くの街まで移動、そこから準備して出発。狩りが終わって戻るとき、大量に手に入れた素材アイテムを持ち帰りたい時は協会に拠点まで送り届けてもらう配送サービスを使う。大量の物資はジェット一体では流石に持ち運びできない。配送サービスは結構高い、かなり稼げるようになったが送ってもらう物資は厳選しなくては。節約節約。

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