第25話 蜂蜜

和やかな朝、優雅に朝食を食べていると街の方で煙が上がっているのがわかる。


「青い煙、低レベル魔物使いの招集だな」


俺達もギリギリ低レベル魔物使いに入っている。何事かと街へ。煙は各地の広場で炊いていた。


「緊急事態発生! 破獣ブラッドビーが大量発生しました、余裕がある方は破獣退治をお願いします」


前のカエルと同じ様に大量発生、しかし今回は凶暴な破獣。彼ら自体は美味しくないが、巣まで辿り着ければ蜂蜜等を手に入れることができる。強制ではないが放っておいては危険なのは確か。討伐とついでに戦利品目当てで戦ってみようかな。仲間は多いほど良い、エン、王子、王女に話をして協力し合うことに。皆同じくらいのレベル。なかなか大所帯のパーティを組むことになった。明日からブラッドビー狩り、巣はかなり大きい。荷車を用意。今日の夜は交友を深めようと食事会、王子王女はエンとは初顔合わせだったかな、歳が近いし話も合う、うまくやれそうだ、心配無用だな。翌日、現地に向かう。


「いっぱいいるな」

「強くはないが飛んでいるから気をつけるんだ」


蜂がそのまま大きくなったような破獣。虫ってでかくなるだけでもモンスターって感じがするんだよね。多くの魔物使い達が巣を求め破獣狩りをしている。俺達も生息域に進行、破獣と戦闘に。前回多数対策をしていたから問題なく倒していくことができた。倒していくと蜂蜜の甘い匂いがしてきた。木をくり抜き中に巣を作っていた。


「あったぞ!」


盛り上がるメンバー、蜂を倒し木を切り倒して巣を手に入れ、荷車に乗せ拠点に持ち帰る。四日間、四つ巣を手に入れたところで緊急事態解除、見事蜂の破獣の脅威から街を守ることができた。


「ありがとうございました。これもひとえに魔物使い皆さんのおかげです」

「さーて蜂の巣を解体しようか」

「そうしよう。皆お疲れ様」

「またねー」


終戦後、それぞれ拠点に戻り、巣から蜂蜜を。


「大きな巣」

「木丸々一本巣だからな」


巣一つから大量の蜂蜜が採れる。見た目が特殊で赤い色をした蜂蜜。花を咲かせる破獣から蜜を取っているらしくその蜜が赤いとか。物は普通の蜂蜜と全く同じで保存性が高い。腐らないから現実でもファンタジー方面な食品ではある。圧搾機を作り次々と蜂蜜を絞り出す。大きなツボ四つ分の蜂蜜を採集できた。これならしばらく糖分には困らないな。密閉してそのまま置いておく。大量の搾りカスは蜜蝋にしていく。水を張った鍋を用意、カスを鍋に入れ溶かす。ざるでこし、固まるのを待つ。固まったらもう一度溶かし今度は目のこまかい布でこす。これを固めて蜜蝋の完成。大量の蜜蝋を入手。ろうそくの他様々なものに使える。


「さて、本番」


蜂蜜の酒、ミード作り。容器に水とはちみつを入れ混ぜ合わせる。酵母を入れて十日くらいで完成。通常の蜂蜜酒は黄色なんだけどこの酒は赤い、ワインと間違えないようにしないと。こうして数日経過。


「ミード完成!」


試飲してみる。あれ、予想していた味と違うな、そんなに甘くない。ああ、糖分を分解してしまうからかな? 専門的なことはわからないけど。食事に合わせるなら丁度いいかも。飲みたくなったら蜂蜜から作っていく。蜂蜜の使い方を相談しながら歩いていると牛を飼っている酪農家が大声でこちらに呼びかける。


「牛が脱走した! 気をつけてくれ!」


どうやらエサの草がなくなったため柵を破壊して牛が移動しているようだった。そして柵を破壊した際に怪我をした一匹の牛が興奮して付近で暴れていた。巨大な牛は一度暴れ出すと一般人では制御不能。かといって俺達も無理に抑え込んだりすると怪我を悪化させてしまうのではと考えて無闇に動けない。迷っているとシロが牛に向かって走っていく。


「ガウッ!」


牛がビクリと体を震わせ驚く。その後落ち着きを取り戻し、元の場所へと戻っていった。ひと鳴きで制してしまったシロ、かっこいい! ウチのコなんですよ! なるほどね、そういう止め方があったか。そういえば牧羊犬、牧牛犬なんてワンちゃん達もいるな。犬ってすげえ。


「ありがとうございました。これは家でとれたミルクです、持っていってください」


大量のミルクを手に入れる。この世界では飲料品ではない、主にチーズとバターに加工される。ミルクを見ると70%と表示される。そのままだとお腹を壊すかも。加工してしまおう。チーズ用の素材を分けてもらいチーズの作成。ミルクにレンネットを加え固まってできたものを型にはめ圧搾し水分を出す。後は熟成。半年以上待つことに。バターはすぐ作って使えそうだ、制作するとしよう。ミルクを一晩おき、分離された上澄みをすくいスライムペットボトルに。後は振る、とにかく振る。すると分離されバターのできあがり。塩を混ぜて完成。日持ちはしないみたいだな、欲しくなったら買うか作るかするしかないか。朝食に手作りバターとはちみつを使う。焼いたパンがテーブルの上に。バターと蜂蜜を塗ってかじりつく、うまい。魚のソテーも作ってくれた。こちらも美味しい、上品な味わい。朝からいいもの食べてるな。

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