第24話 アリーの恋

「えーっ、まだ付き合ってもないの?」

「声が大きいよ……」


エン達とバーベキュー中。奥から聞き取れないがアリーとレンの声が薄っすらと聞こえてきた。はは、相変わらず仲が良さそうだ。焼いていた肉から肉汁が滴る、炭に落ち煙が発生。良い焼色だ、もう食べられるだろう、串を持ち肉と野菜の串焼きに噛みつき引っ張りぬき口を上げ豪快に食べる。胃に収まったらすかさずビールで追撃。プハー、最近ビールの良さがわかってきた、これで俺も大人の仲間入りかな。エンも満足気に飲んで食べている。


(衣食住男女が一緒なわけだよ? 一時的な仕事とかならまだしも。あの鈍いエンですら一緒に魔物使いをするってことになったらお付き合いを始めたのに)

(言い返せません)

(こうなったらこちらから仕掛けていくしかないね)

(どうするの?)

(ふふ、女の魅力を教えてやるのだ)


次の日、今日は街の市に来ていた。


「人気商品だよ!」

「新発売だ、食べていって!」


非常に活気がある、市を訪れている通行人も多い。生活用品、衣料品、料理屋。様々な店が品物を売っている。ここでウインドウショッピングするだけでも楽しい。


(レンが見守ってくれてる、頑張るぞ)


アリーが店の前に止まる、美味しそうな果物だ。彼女が袖を掴み果物を指差す。


「ねぇ、あれが欲しいなー」


いつもはしない行動にドキッとする俺。動揺を隠せずにいる。


(上目遣いのおねだり、大抵の男はこれで一撃)

(ふふ、動揺してる、ここで髪をかきあげてトドメ)


白目をむきながら髪をかきあげるって一体。動揺が加速する。


(……ダメかもしんない)


他いくつか食べ物を買って公園で食事。少々ぎこちなくなるがしばらくして心が落ち着く。再び市へ。アクセサリーを売っている店に寄る。アリーに合いそうなのものを見つけ購入。


「どうぞ」

「う、うれしい、大事にするね」


機嫌が悪いのかなと思いプレゼントをすることに。嬉しそうにアクセサリーを身につけるアリー、喜んでもらえてよかった。


(ふふ、効果抜群、ありがとねレン)

(絶対勘違いしてる、後で修正しなきゃ)


拠点に戻りくつろいでいると魔物達が外で元気に転がり楽しそうに遊んでいる。盛り上がっている魔物達、激しい音を発生させる。特に規制はないが結構響く。一軒一軒がそこそこ離れているので大丈夫ではあるがやりすぎるとご近所迷惑になるかも。彼らもそこらを理解していて普段は大人しくしている。


「騒いでも問題ない場所を作るべきか」

「うん」


アリーと話し合い防音室を作ることに。すでに防音対策を施している魔物使いのお宅に訪問、試しに演奏会を開く。


「楽しげで良いね。音は結構漏れてしまうけど。防音材だけでは駄目かも、地下室にしてはどうかな、もしかしたらそれだけでいけるかも」


なるほど地下室か、ナイスアドバイス。それなら加減なしの演奏会でもいけそうだな。お礼を言い土地について調べる。地下室を作っても問題なさそうだ。


「始めるか」


大きく深めに穴を掘る。石を積み壁を作りモルタルで平らに。天井はアーチ状にレンガを重ねる。演奏会を開く、まだ漏れるな、もう少し対策が必要だ、初期の予定通り防音材を作って貼ろう。防音材は特殊な素材を使うことで作ることができる。様々な物に加工が可能な便利素材なのでエン達も誘い現地へ。


「あれがスライムマウンテンか」


破獣のスライムが大量に湧き、死んでいく場所。スライムの死骸が山を作っている。


「べたべたしてるな」


地面には粘液が張り巡っており足を取られ滑りやすい非常に動きづらい場所。スライムは弱いが戦い方に注意しなくてはならない。スライム達を倒し目的地まで進む。山に到着。様々な色が混ざり合っているゼリー状の物体が山を作っている。


「ぐっ、足を取られた」


素材収集に夢中になりすぎて山に足を踏み入れてしまったエン、腰まで埋まってしまう。ロープを投げて皆で引っ張り上げ救出。一人だったら沈んで死んでしまっただろう、思っていた以上に危険な場所だ。掘ってツボに入れ拠点に戻る。いくつか素材を混ぜジェル状にし板と板の間に入れ防音板に、板を壁や天井に貼り付け地下室の完成。演奏会の開催、地上にいても音が聞こえてこない、地面が多少振動するがそこは御愛嬌。こうして地下コンサート会場が完成。音を発する魔物達は喜んでいる。残ったスライムをつんつんとつつく。


「便利なんだよな~」


スライム素材を使いプラスチックのような物を作る事ができる、ゴムに近い素材も作成可能。透明ではなく毒々しい色をしているから使い所は限られる。有益ではあるが厳しい制限がある。魔物使い以外は収集不可、売買も駄目。限りある資源として制限が取り決められている。ゲームもここくらいからこの世界特有のクラフトアイテムが多数作られるようになる。


「プラスチックと言えばやっぱりこれか」


スライム素材で水筒を作る。軽く水漏れの心配もほぼない。ゴムの方はタイヤを作るのもいいな。

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