第18話 先客
旅は順調、特に問題なくドンモルの街に到着、街に入り買った土地の近くまで来た。ここでは魔物使い達が多数暮らしている。思い思いの家を建てここに居住している。俺達もここで暮らすんだな、どんな未来が待っているのだろう。思いを巡らせていると、ここで異変が発生。
「あれ、誰かいるみたいだけど」
「本当だ」
年齢は俺達と同じくらいの男女二人組の魔物使いが俺達の土地で活動中。あれー、場所を間違えたかな、地図と書類を確認する。
「ここで間違いないはずだけど」
「だよねぇ」
そもそも一度来ているしね、間違いようがない。穴を掘り基礎工事をしている、本格的に建築をしている。空いてる土地を許可なく使用しているといった様子ではない。
「どうした、困りごとか」
途方に暮れていると、男の子がこちらに声をかけてきた。事情を説明すると奥で仕事をしながら話を聞いていた女の子がこちらに近づいてくる。
「もしかして例の?」
「かもしれないな」
「何かあったのかい?」
「ああ、不動産屋が詐欺事件を起こしてね」
聞くと俺達が契約した不動産屋の男だということがわかった。詐欺を働き海外に逃亡した。賭け事が好きでいつの間にか多額の借金を作り詐欺に走ったとか。詐欺師じゃなく本業の不動産屋にやられたらどうしようもないな。多数の被害者が出た大きな事件だから国や協会が本腰を入れ動いている。
「荷はとりあえずここに置いて森と畑の確認をしてみると良い。この二つは問題ないと聞いた。それから協会へ」
彼らは信用できるか? 家を建設中だ、その状態で持ち逃げはしないか。荷を置かせてもらおう。
「荷を頼む」
「任せときな」
契約した森の確認に向かう。看板に使用者の氏名が書かれている、魔物達が溢れているといった様子はない、問題はなさそうだ。ここにシロ達を放す。畑も使われている様子はない。協会へ行き相談、状況を説明する。
「残念ながら詐欺にあったようだね、最近発覚したばかりでね。住む場所はとりあえず宿屋に泊まるようにしてくれ。調べが進めば宿代と代わりの土地が渡せると思う。泊まる場所は後で教えてくれ」
参ったな、来て早々に大きなトラブルに巻き込まれるとは。まあここまで順風満帆すぎた気はする。加工品も確率以上に成功してきたし。肩を落としため息をつきながら荷を取りに行く。
「やっぱり詐欺だったか」
「そのようだ」
「ここで会ったのもなにかの縁だ。しばらく俺達のところで暮らすかい? それに丁度人手が欲しかったんだ。手伝ってもらった分はもちろん返すぜ」
「いいかもね、魔物使いは協力し合うことも大切なわけだし」
ありがたい申し出だな。宿屋でいつ来るかわからない情報をうつむきながらただ待っているだけよりも気が晴れるだろうし。アリーを見る、そうしようと頷く。彼らとしばらく一緒に暮らすことを決める。
「俺はエンだ、よろしくな!」
「私はレン、よろしく」
髪が逆立っていて日焼けの肌、非常にワイルドな雰囲気のエン。握手をすると満面の笑みに光る歯。反対に落ち着いた感じのレン。こうして俺達の共同生活が始まる。荷を置きテントをたてる。そろそろご飯時、四人でバーベキューをすることに。記念にお酒とパンを出す。
「へぇ、もうお酒を作ったのか」
「どっちも美味しい」
二人にも好評。話をしながら楽しいひと時を過ごす。どうやら二人は幼馴染のようだ。レンは魔物使いになる気はなかったが猪突猛進の彼を放っておけなかったとか。レンは気にしすぎなんだよと笑って返すエン、お似合いな二人だ。夜もふけ話は終いにして眠ることに。初日から悪いことも良いことも起きて刺激の強い一日だった。翌日は畑の準備、種をまいておく。協会に寄り今住んでいる場所を伝えておく。欲しい土地に関しても話をしておいた。次の日から建築の手伝い、街の外に出て木を伐採、運び出し、加工、積み上げ。いわゆるログハウスだな。木材の運搬中に破獣が出る。一般人には入れない場所だ、魔物使いは多数いる。
「伐採を頼む」
「わかった」
魔銅製の斧で木を伐採。枝を切り運べる大きさにカット、ソリに乗せる。エンが運搬、アリーとレンが加工。加工した木材を俺とエンで積み上げていく。壁ができて後は屋根。骨組みを作り、木の板を張っていく。石を薄く切り、屋根板ととして乗せていく。一面を薄い石の板で埋め尽くす。
「できたぞー!」
大部屋2つの家が完成。もっと大きくできるよう拡張性も残してある。この日は豪勢な料理が並べられる。アリーの演奏会まで開かれた。
「アレス達はどんな家を作るんだ」
「木材とレンガで作ろうと思っている」
「ならもうレンガをつくっておこうよ」
「いいね!」
粘土を見つけエンに粘土の掘り出しを頼みレンが粘土運び、俺達でレンガ造り。レンガ生産用の大窯を二つ作成、とにかく大量に欲しい。焼成煉瓦はかなり大変。1日中焼き続けることになる。レンガを作り数日間寝かせる。乾燥したレンガを釜に入れ火を入れる。半日じっくり焼いたらアリーと交代、徐々に火力を上げていく。焼き終えたら冷やす。その間にもう一つの窯でレンガを焼く。この繰り返し。数日間作業をしていると協会の人がこちらに。
「お待たせした。協会に来てくれ」
エン達に作業を任せ協会へ。
「不動産の男が捕まった」
金はすべて使い切っており、逃げることもできなくなっり食事もできず痩せた哀れな姿で発見されたとか。被害額は膨大だが国と協会がすべて持つことに。太っ腹だな、被害者の多くが魔物使いというのもあるかも。
「土地の準備ができた、そちらに住んでくれ」
ここから近く、森も畑もそのまま使える。手続きを済ませ拠点に戻りエンとレンに話をする。
「よかったな。よーしこのまま家を作ってしまおうぜ!」
木を切り出し加工。木材で骨組みを作り、隙間はレンガで埋めていく。屋根は同じように作って完成。
「できたー!」
「うおー!」
お互いの家ができあがり、今夜はパーティー。こうして問題を一緒に乗り越え友情を育んだ。
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