第13話 アリー

「魔物使いになって帰ってきました!」


アリーが試験に見事合格しこの街に戻ってきた。まだまだ魔物の数は足りてない、魔物増加の狙いもあり追加で魔物使いが来たのかな。隣の土地が彼女の住まい。


「合格しましたよ!」

「おめでとう」


魔物を一体連れこちらに挨拶に来たアリー。美しいサンゴが積み重なっている魔物、コーラルナイト。名前はペザンテ。魔法系の盾役でなかなか強い魔物だ。手に持つさサンゴで自らを叩くことで木琴のような音色を出す。無人島で仲間にしたんだな。着替えてきたようだ、無人島で作った服か。


「これからよろしくお願いします!」

「よろしく。それから敬語はいいよ、歳も近いしね」

「わかった、よろしく!」


手に杖を持っている、魔法系にしたか。魔法は木の棒に魔法の紋章を刻むと使えるようになる。彼女から相談を受ける、家をどうしようか考えているようだ。俺と同じ日干しレンガの家なら作ってやるという話に。喜ぶ彼女。


「流石にただというわけにはいかないが」


与えるだけでは彼女のためにならないからな。対価の品物を頂かなくては、つまり物々交換だ。ふむ、見るに糸を紡いで服を作ったか。


「なに? まじまじと見て」

「欲しいな」

「ア、アナタにその気があるなら別にいいけど……、責任は」

「服一式を作ってもらおう」

「そっちか、いいよ!」


着ていた服はもうボロボロ、毛皮の服は擦れて痛いから普段着としてはきついんだよね。革の手袋もお願いする。知力を全く上げてないから繊細な作業のクラフトが開放できない。作れないものは店で購入することになる。日干しレンガの家はもう三回目。慣れたもので十日で建設完了。編んだ服とズボンができたようだ。着心地がいい、普段はこちらを着用するとしよう。アリーが戦闘する前に毛皮の服をプレゼント。


「ありがと!」


フラワーフルートの生息域へ。気合の入った笛の音が彼女を迎える。演奏会をした後パットを仲間に加える。拠点に戻り畑をしながら三体使役できるまでレベル上げ。


「使役できるようになったよ」


三体目の魔物の仲間はハープキャット、名前はアル。ヒゲが長く後ろ足の爪でヒゲを張って尻尾で弾くことでハープの音色を出すことができる。


「やってみたいことがあったんだ」


三体を連れ俺の家に。協会で調べているときに他にも音楽ができる魔物がいることを知って仲間にしようと秘かに画策していたという。演奏会が始まる。心が踊るような楽しげな楽曲、そこに合わせて歌うアリー。美しい歌声に思わず聞き惚れる。たまには音楽もいいものだな。


「よーし、戦技の熟練度上げをしよう」


戦技は使うほど微量ではあるが強くなる。しかし通常の戦闘ではMPはそこまで無く、奥の手として残しておきたいためほぼ使わない。しかも一晩寝ないと回復しないから連発は不可能。そこで魔法通信の出番。魔物使いが二人いる場合は魔法で作った仮想空間で戦うことができる。ここで戦い戦技を使えば熟練度が上がる。しかも接続しなおせばMPが全快の状態からまた戦える。


「こんな使い方があったんだ」

「小技だな」


協会のシステムに繋げば誰でも戦いを見ることができる。これらを使ったランキングシステムがあり、日々力を磨き切磋琢磨する人々がいる。数々の強敵を倒し世界の頂に立つことがゲームの大きな目的の一つ。一位になるとエンディングがある。ただ当然ながら敵は皆高レベル。今はまだ足元にも及ばないだろう。


「どのくらい熟練度上げ?」

「MPマイナス1が取得できるまで。十日くらいかな」


MPマイナス1が熟練度上げの目玉、それ以上はきりがない。食料と飲み物を準備。魔物達にはしばらく遊んでいてもらうか。ではバトルスタート!


「最近二人を見ないな、心配だから様子を見に行ってみよう。ん? 家の中から声が聞こえるな。二人は中にいるのか」

「まだ続ける? もう許して」

「もちろんさ。さあて耐えられるかな?」

「あうっ!」

(こ、これは! 院長先生に知らせないと!)

「なるほど(編んだ服は目が粗く色々見えてしまうけれど意中の殿方を落とすのによいという話をしましたが、実行して成功したようですね)。わかりました、準備をしましょう」


戦技を互いに打ち合う。おっと、HP0になったか、接続し直そう。バトルは朝早くから、夜は寝静まるまで、ずっと単純作業の繰り返し。アリーが音を上げだしてるが強ければ強いほど死のリスクは減る、励ましながら続ける。そしてMPマイナス1を取得。きつかったとその場に倒れ込むアリー、頑張ったねと魔物達が慰めている。立ち上がり伸びをする。協会を覗いてみるか、仕事が入っているかも。ずっと引きこもっていたからな。二人で街に出ると街の入口に居た衛兵さんが声をかけてきた。


「お二人共こちらへ」


何が起きているのかはわからないが言われるがまま後をついていく。着いた先は孤児院。なにかの催し物だろうか、家の中は飾り付けられていた。


「おねーちゃんおめでとう!」


アリーが顔を赤らめ院長先生を連れ奥へ。誕生日かな? それで恥ずかしがっているとか。二人が奥から出てくる。


「色々勘違いがありまして。まあいいじゃないですか、楽しく過ごしましょう」


よくわからないまま子供達とパーティをする。楽しければいいか、魔物達も喜んでいるし。

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