第6話 脱出

「えーっと」


新規はまず力をある程度上げるといい、力仕事は必ずある。持ち物を運ぶ量アップは重要ではない、魔物に運んでもらえばいいからそのために力を上げる必要はない。体力はまだ上げなくていいかな、速さはそこまで必要ではない、回避に影響するが少し上げるだけでは焼け石に水、効果は薄い。移動速度も同じ理由。力を上げることにする。


「いよいよお肉を」


石のナイフを取り出しうさぎを解体開始、下腹部からナイフを突き刺し喉まで切り上げる。思ったよりもキレイに切れるな、もっとちぎれちぎれになるかと思っていたが。どろりと血と内臓が流れ出る。うっぷ、結構グロいんだよね、それでもゲームとか結構ひどいやつを見てたから耐性がついたかも。ニオイもなかなかきつい、口で息をしてごまかすとするか。まあ数やればいつか慣れるだろう。うさぎの解体が完了、今日は肉鍋だ。一口大にカットした肉と野草を鍋に入れ、スパイスやハーブを石で揉み潰し鍋へ。完成、ウサギ肉のスープ。うん、美味しい。獣臭さもほぼなくなっている。肉はいいね、エネルギーの高まりを感じる。ああ、魚もいいけど肉も最高! 自然と合掌、食と命に感謝する。満足しお腹を擦りながら眠りにつく。翌日、魚の様子を見にため池へ。


「うお、大漁だ」


バシャバシャと水しぶきを上げる魚達、沢山の魚がため池に入り込んでいた。群れで泳いでいた魚達が一気に突っ込んできたのかな。全て食べようとするとその間に何匹か死んでしまうかも、しかし逃がすのはもったいない。そうだ、燻製を作るか。方法はと、魚をさばき塩を塗り込み乾燥させる。塩を抜きまた乾燥させいよいよ燻製。時間が掛かるが作っておこう。さばき終えると森へ、歩いていると鳥の死骸を見つける。腐りかけで食料にはできないが羽は使えそうだ。むしって矢羽として使うことに。


「さてと、ここからが本番だ」


食料は十分、後はクラフトポイント上げをすることに。序盤の最高効率は椅子を作って分解、また椅子を作成の繰り返しだ。作り続けると紐がちぎれたり棒が折れたりするが材料は目の前にあるからすぐに集まる。ゲームでは有名な方法で、プレイヤーの皆が椅子作り名人とネタにされるほど。講習では椅子の話はなかったな。一番の狙いはレベル上げ、レベル5になるともう一体使役できるようになる。魔物は最大三体を同時に使役可能。数日分の食料と水分を準備、木の棒と紐を目の前に置く、さあやるぜ! ゲームを徹夜でやり込む準備のようで少しテンションが上った。木の棒を紐で繋ぎ、椅子を作って分解。こうして目標のレベル5まで椅子製作を来る日も来る日も繰り返す。そしてサバイバル生活21日目。


「よし、レベルアップだ」


目標達成、アナウンスが入りもう一体使役できるようになった。ステータスは力と体力に振る。途中、島での動きがほぼなくなったため試験官が確認に来るというハプニングが発生。拠点にこもって椅子ばかり作っていたからな、心配をおかけしました! さて日数的にも丁度いいか、無人島から脱出しよう。丸太を海に入れ、紐でつなぎ合わせイカダが完成。シロは海で泳いで遊んでいる、もしいかだが途中で潰れても問題ないな、泳いで陸地まで行けそうだ。水と食料を積みシロが乗りオールを手にしていざ無人島から脱出を。


「出発!」


勢いだけは良かったが、うんぎぎ、進まないぞ。出発早々トラブル発生、オールを漕ぐのは想像以上に難しかった。なかなか進まず焦る俺。しかし時間が経つと熟練度が上がり慣れていった。安全に行くなら先に練習しておくべきだったか。思ったよりも浮いていないのもなかなか怖かった。半分以上丸太が沈んでいる。横につなげただけではこんなものか。苦戦はしつつも少しづつ前に進んでいる。俺の無人島脱出チャレンジに試験管達が気が付いたようで陸から応援してくれた。周回遅れで頑張って走って応援されている子の気持ちがわかってきたな、元気が出るけどちょっと恥ずかしい。


「照れくさいよな、シロ」


返事がない、あれ、シロがいない。いつの間にか試験官に混じって俺を応援する側に回っていた。こうして漕ぎ続け、ついに対岸の陸地に到着。


「おめでとう!」

「ありがとうございます」


試験は合格、試験官や魔物使い達が拍手してくれた。シロが飛びかかってきて喜びを全身で表しながらベロベロ攻撃。負けじとボディにモフり攻撃。サバイバル中にかなり仲良くなったものだ。


「合格者は今のところ三十人だけ。無人島に残っている者はもうそんなにいない」


参加数から計算して合格率一割か、魔物使いへの道は意外と狭き門、サバイバルが大変で毎回合格者は少数。落ちた者は能力を封印され一般人に戻される。何度でも試験をすることはできる、一発合格は珍しいとか。ははっ、ゲームで予習してあるからね、むしろ一発で合格できなかったら恥ずかしい。街に帰り一泊後、サバイバル試験の合格証が授与される。


「これから他の街に行ってもらいます。そこで更に魔物使いとしての腕を磨いてください」


試験に合格し魔物使いになった者は協会が指定した街に派遣され、国と協会の保護の元、力をつけていくことになる。指定された街はここからかなり遠い街。そこから俺の魔物使いとしての人生が始まるわけだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る