第7話 恐怖
魔物も一緒に乗れる馬車で指定の街まで移動。街に到着、馬車から降りて協会へ。
「よく来てくれた。これからこの街で一年間生活してもらう。それから機能を開放する。すぐ終わる、座っていてくれ」
俺の後ろに立ち、先端に宝石がついた杖を俺の首元に近づける。呪文を唱えると機能が開放、最大で五体まで魔物を仲間にできるようになった。以降レベルが上がると最大数が増える場合がある。現在は連れて歩いて一緒に戦える魔物は二体まで。他の魔物は拠点に置いていくことになる。だが魔物を圧縮して持ち運びが可能なビーストボックスを使えば残りの三体も持ち運び可能。状況に応じて入れ替えができる。ビーストボックスはタバコと同じくらいの大きさの小さな箱、非常に便利なアイテムだ。弱点もある、食料メーターが付いていてこれがなくなると自動的に開放、契約が切れ、魔物が元いた場所へ帰っていってしまう。これだけは避けなくてはな。他様々な機能が追加された。
「今から一年間は、魔物使いとしてふさわしい人間かどうか調べる期間だ。だがかなりゆるい、余程の悪人ではない限り合格になるからそちらのことは忘れるくらいでいい。肩の力は抜いて魔物使いとして活動してくれ」
試験に受かればほぼ魔物使いといわれているほどゆるい。落ちる人間は滅多にいないとか。
「国と協会から君に土地が与えられる」
街の地図を取り出し指で丸く囲った街の端にある森を抜けた先の場所が俺の土地。もらった土地まで移動、なかなかに広い、そしてそこには何も無い。うん、そうなんだ、まだサバイバルは終わっていない! 協会からテントがもらえた。風が吹くと吹き飛ばされそうなほどオンボロだ。早い段階で対策しなくては。
「街の中の森は自由に使ってもらって構わない。外部の森には魔物がいる。そして破獣もいる。十分気をつけるように」
ここからは戦闘がある、破獣には注意しなくては。外の森は危険なため一般人には開放されていない。
「仲間にした魔物は売ることができる。協会に売ってこの街を豊かにしていってくれ。今ならどんな魔物も必要とされている。他、困った時は協会に来るといい」
一般人も魔物を使役可能。この場合制限があり一人一体まで、レベルは1まで落とされる。更に資格が必要、おかしな人間に魔物の力を使わせるわけにはいかないからね。荷物持ちから仕事の手伝い、ペットまで。魔物は人々の生活を豊かにしてくれるため非常に重宝される。話が終わり協会の人は帰っていった。さてと、まずは情報収集からかな、協会で調べ物をするか。そういえば魔物がすぐにでも欲しそうな話しぶりだったな。現在の状況はどんなものか。
「こちらは現在街の人から欲しいと要望がある魔物の一覧です」
ふむふむ、付近にいる全魔物の需要があるな。一応魔物を売るならリストを確認してからにするか。それからここで仕事を得られるようだ。破獣退治や探しものまで、よくある冒険者ギルドに近いかな。
「フェザーファミリアですね、エサを入れておきます」
シロ用のビーストボックスを買っておく。種族によってエサや大きさ、環境が違うため、専用のビーストボックスを買う必要がある。エサは魔物使い個人で追加、廃棄が可能。食べ物はそのままなのでできるだけ日持ちする食料が望ましい。ビーストボックスには魔物が死の寸前のダメージを受けた場合、自動でボックスに収納するという機能がある。戦闘前には買っておきたい。今後は仲間になるたびに買うことにする。
「ご利用ありがとうございました」
協会には他にも様々な施設がある。今のところは使わないな。街に出て衛兵さんに話しかけ付近のことを聞く。木の棒で地図を書きながら詳しく教えてくれた。
「魔物がいる場所はいずれも破獣の生息域、もしくは通る必要がある。破獣はこの線を越えたところから現れ始める。水なら井戸水を飲むといい」
魔物、破獣の情報、他情報を入手。
「良い情報が手に入った、それにしても今のところ運がいいな」
ゲームでもお世話になった強い魔物が近くにいる、彼らを仲間にしてしまおう。これから破獣との戦闘がある、槍と弓、矢を何本か持ち準備をする。魔物には通常攻撃とMPを消費するいわゆる必殺技の戦技がある。シロの場合は通常攻撃は噛みつき、戦技は大牙噛みつき、爪斬り、と魔物は二種の技を持っている。戦技は闘気を纏う必殺技、MPを消費するから乱発はできない。シロが使うこれらの技は物理攻撃。魔法攻撃をする魔物もいる。人間にも戦技があり同じように武器によってそれぞれ二種の戦技を持っている。魔法もある。聞いたところ付近には弱い破獣しか居ないから普通の戦闘は余裕なはず。しかし殺し合いになる、気合を入れなくては。頬を軽く叩き奮い立たせるとシロも鋭い目つきになり戦闘モードに。これから危険地帯に足を踏み入れるということがわかってくれたようだ。拠点から森の中へ、入ってすぐに森の奥から草をかき分ける音が聞こえてきた。音が徐々に近づいてくる、見えてきた、破獣だ。
「ゴフッ!」
角が生えたイノシシに似た破獣「スモールホーン」が現れた。角が生えていて大きさはイノシシの子供ほどの破獣。気性が荒く、目の前の個体も目が血走っていて鼻息が荒くいかにも獰猛な獣といった姿。人間を見ると襲いかかってくる危険な破獣。こちらを睨みつけながら突っ込んでくる。体が重い、嘘だろこんな大事なときに。
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