第5話 泥んこ

 パンを大量生産し夜もふけ就寝の時間。寝ようとするとシロもベッドに乗ってきた。通常、枕を置く場所に丸まり上目遣いで待機。ふむ、わかるよ、来いってことだな。ではお言葉に甘えて。


「こ、これは!」


首元のもふもふに埋まる俺の頭。ゲームでもネタにされるほどの毛量。どこまでももふもふの海に落ちていく。こうして俺はもふもふに包まれながら眠りにつくのだった。翌日。最高の眠りだった、体の奥底からエネルギーが溢れてくる、犬好きなのもあるだろうな。今なら空を飛べそう。さて土器づくりをしよう。魔物用のかごを作成、装着させる。粘土層に行き粘土を収集。何度か往復し途中粒子の細かい砂も収集、必要材料が集まる。後は俺の仕事だ、お疲れ様と川でシロを洗う、粘土の運搬のせいで泥まみれ。現実社会で泥んこプロレスをやられた日には絶望するところだが大自然のここなら問題なし。いつでも洗ってやるぜ。ついでに水遊び。ほらほらどうした、水を浴びせ続ける俺、体の構造上水のかけっこはこちらが有利。シロは満足し川から上がりブルブルすると凄まじい量の水しぶきを撒き散らした。痛い。


「それじゃシロは遊んできてくれ」


返事をし森の中へ。土器の鍋作りを開始する。粘土と砂を混ぜ合わせ練り上げる。粘土をボール状にし、床に置き押しつぶして底を作る。粘土を紐状に伸ばし輪にする。それを繰り返し積み上げて表面をきれいに整え焼いて完成。しかし成功率が低めだ。失敗してもいいようにいくつか鍋を作る、通常の土器とコップも作る。制作したものを焚き火の周りに置き乾燥させる。灰の上に土器を置きあぶった後薪を置き本焼き、焼き終えたら一気に冷まさないよう注意しながら取り出す。三つが割れ二つ生き残る。とにかく鍋ができた、これで料理の幅が広がるぞ。シロが帰ってきたら一緒に喜びの踊りを。五日目、今度はかまど作り。石を並べそこに粘土を重ねていく。二つ穴が空いたかまどの完成。これから塩作り、塩用の鍋に海水を入れ煮立たせていく。もう一方は料理用、製作にはないがコーヒーを作ってしまおう。有名なドングリコーヒーだ。ドングリを細かく砕き、炒めて煮出す。上澄みをコップですくって飲む。


「うまい!」


とても香ばしく砂糖がなくてもほんのり甘みを感じる。素材そのものの味だ。この世界にはまだコーヒーは流行っていない。ここなら周りを気にせず作ることが可能な食品かな、あまり目立ちたくないし。今後もこっそりと作っていこう。海水を煮詰め続けて塩が完成。品質二の塩、にがり入りだから現代の塩には遠く及ばないがこれで直接味をつけることができる。罠にかかった魚を追い込み二匹捕まえる。鱗を取って内蔵を取り出し、木の串を突き刺し塩をまぶして焚き火へ。鍋料理も、魚の切り身と貝、野草等を入れ作る。海鮮スープと焼き魚ができあがる。焼き魚にかぶりつく。うまい、やはり魚はいいね。刺身も食べたいけど確率で当たるみたいだから今はやめておこう。海鮮スープもイケル。食に満足して眠る。朝起き六日目が始まる。


「ここまで意外と時間がかかった」


先に脱出の準備をしておくことにする。丸太を並べてつなぎ合わせてイカダを作る。時間ギリギリに作ってトラブルが起きて脱出できませんでしたでは洒落にならない。イカダはもう製作可能、ポイントを使い開放。さかのぼって石斧作りから。木の棒に穴を開け、先端を鋭く加工した石をはめ込み石斧の完成。次に木を切り倒し長さを揃えた丸太を十本用意。木のオールを削って製作。後は海に浮かべてつなぎ合わせるだけ。海の近くまで丸太を引きずって置いておく。こんなところか。そこそこ大きなイカダだ、シロも余裕を持って乗ることができる。


「魔物使いは戦闘もあるからな」


七日目は武器の作成。木の棒の先端に尖った石を取り付け槍が完成。次に弓矢の作成、木の棒に紐をつけ弓が完成、矢は先端に尖った石をつけて品質一の矢が完成。槍は狙ったものを突き刺すことができたが問題は弓矢。的を作って撃ってみたが狙った場所に飛んでいかない。実戦ではまだ使えないな、最悪同士討ちになる。必要最低限の素材なのが影響している、矢羽って大事なんだな。マップを確認、野ウサギが居たところへ移動、実践で弓を試してみる。撃ってみるがやはり当たらない、しかも動く的、無理だよこれ。しかし久しぶりにお肉を食べたい、その執念が神に届いたのか、時間がかかったがうさぎを一匹仕留めることに成功、やったぜ! 


「レベルが上がりました」


脳内にアナウンスが流れレベル2になる。野生の動物と戦うことで微量ではあるが経験値が得られていた。レベルアップしポイントが得られステータスに振ることで自分を強化できる。HP、MPは勝手に増えている。ステータスの効果をまとめてみた。


力  上がると特に力を使う加工品の時間短縮 持ち物運ぶ量が増える 物理攻撃アップ

体力 加工時間短縮 HPが上がる

速さ 移動速度上昇 回避に影響

知力 精密さが必要な加工品時間短縮 魔力アップ MPが増える

幸運 死にステ


力仕事、物理戦闘が得意な力タイプと魔法、複雑な細工が得意な魔法タイプに別れる。弓は力が関係している、力があると安定するという考えだろうか。幸運は振らなくていい。魔物勧誘時間に関係するだけ。むしろ時間がかかったほうが魔物との交友を楽しめるまである。

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