第4話 ウチの子

パンを焼き終えると眠くなってきた。ちょっと早いが眠ろうか。土の地面、毛布もないところだが疲れていたためかすぐに意識がなくなり眠りの世界へ。


「……ゲーム通りとはいかないか」


余裕だと思っていたが思わぬ方向からの攻撃が俺に突き刺さる。非常に寝心地が悪かった、ベッドが欲しいな。ゲームならなくてもHPが減ったりしないから作る必要はないが現実だと必須といえるかも。慣れてしまえば土のベッドでも問題ないかもしれないがまだまだ時間がかかりそうだ、作ってしまおう。油断は禁物というここへ送った神様からのメッセージかな。さて、今日は島を探検してしまおう。そこまで大きい島ではない、半日とかからないだろう。歩き回るだけで自動で画面の地図を埋めてくれるマッピング機能がある。地図を書く必要がないし正確だから非常に便利だ。草鍋で水筒を作り食料を持って準備完了、いざ無人島探検へ。海辺に移動すると、近くの無人島から緑色の煙が上がっているのがわかった。二つ上がっているな、この煙はギブアップのサイン、もらった木筒をひねるだけで煙が出る。どうやら一日で諦めてしまったようだ。俺も予備知識がなかったらどうなっていたかわからない。特に夜の暗闇は意外と精神力を削る。大丈夫だとわかっていてもやはり闇は怖い。島の探索を開始する、海岸を一周し内部の森の中へ。少し歩くと自由に森の中を歩き回る生物を発見、しかも複数いる。いた、魔物だ。魔物を見ると画面が反応、情報が表示された。


「彼らは狼のような魔物、フェザーファミリア」


群れで生活し大きな特徴としては五芒星に頭を突っ込んだ様な星型のタテガミを持つ。他、鋭い爪と大きな牙を持ち、もふもふで白い体毛、ガウッという鳴き声というほとんど犬の魔物。ゲームでは犬だから馴染みがあり人気ナンバーワン、しかも強い。運が良いな、始めからフェザーファミリアを引くなんて。ウィズでは最初の仲間はランダム、数種いるうちから一種が選ばれる。彼の「特徴」は二つあり、力が強い、素早いの特徴を持っている。特徴は最大二つまで、ない場合もある。この二つの特徴は戦闘において力を発揮、ゲーム内でトップクラスの実力をもち、序盤どうしてもクリアできない人のためのお助け魔物。それだけ強い。


「かわいい、今すぐ仲間にしたい。だがここは我慢だ」


今は島の探索中だ、仲間にしたい気持ちを抑えつつこの場を通り過ぎる。魔物の性格は種族、個体によってそれぞれ違う。フェザーファミリアは非常になつきやすい。通り過ぎている今も興味津々でこちらを見ている。中には襲いかかってくる種族もいるから気をつける必要がある。全体的に野生の獣よりは友好的といったところ。探索を続け、マップを埋める。川辺で粘土の層を発見。粘土があれば様々な加工品を作ることができる。他、新たに食料や素材を発見。探索を終えパンを食べベッド作りをする。先ほど見つけた紐として使える「草紐」を使い製作開始。木の棒を組み紐を編んでいく。こうしてベッドが完成、横になり試す、適度に反発、眠り心地が最高だ。夜になり、砂利の抜けた貝を焚き火に突っ込み直火焼きして食べる。こいつはうまい。食後眠り次の日。体に痛みはなくとても調子がいい、ベッド最高!


「おっし、今日は三日目!」


サバイバルは順調だ、このまま生活を楽しむとしよう。今日の予定は土器づくり、粘土を運んで焼いて土器を作る。物資のは搬入搬出はなかなか大変、そこで魔物の出番。魔物は荷を持つことが可能、しかも人間よりも多くの荷を持つことができる。昨日見つけたフェザーファミリアを仲間にして手伝ってもらおう。彼らの住処へ移動。相変わらず各々自由に行動している。画面からステータスを確認、個体によって差がある。彼らの場合は力と素早さのパラメータが高い個体を選ぶといい。みつけた、腹天しているこの子が狙いのステータスを持っている。かわいい。魔物を仲間にする方法は種族ごとに違う。フェザーファミリアの場合は気が済むまで遊んであげること。


「一緒に遊ばないかい?」


声を掛けると起き上がりこちらに近づいてきた。勧誘スタート! 木の棒を持ち遠くへ投げる。それを走って取りに行きくわえて持ち帰ってくる。何回か繰り返した後はつるを使って引っ張りっこ。すごい力だ、こちらが負ける。しかしいいぞ、相手は楽しそうだ。砕いたどんぐりパンを手の中に入れお手クイズ等、様々な遊びを魔物に披露。遊んでいるとフェザーファミリアが淡く光りだす、この状態が契約可能なサインだ。赤色の宝石を彼のおでこに近づけ契約をする。


「強靭なる魔物の子よ、我と共に来るか?」

「ガウッ!」


返事をすると宝石は霧となり彼の頭に吸い込まれていった。こうして契約は完了、見事仲間になった。近づいてきてスリスリと頬をこすりつけてくる、かわいい。名前を決めよう、大量の白い毛、そうだな、シンプルにシロにしよう。決まりだ、お前の名前は今日からシロだ。


「ワウッ!」


気に入ってもらえたようだ。そうだ、どんぐりパンがかなりお気に入りだ、大量に作っておこう。今日はこの後どんぐりパンの製作をすることに。作ったパンをあげると嬉しそうに食べるシロ。よーし、たくさん作っちゃうぞ!

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