第3話 サバイバル

こうしてシェルターが完成し評価が表示される、五段階中二。かなり簡単なものだが雨を防ぐことが可能、十分な性能と言える。製作は最低限の必要物資があれば作ることができる。シェルターの場合は木の棒だけでも制作が可能。当然雨に濡れ放題、骨組みだけの最悪なシェルターができあがる。その場合は五段階中最低の一になる。脳内でアナウンスが流れクラフトポイントと熟練度と経験値を得る。クラフトポイントを使うと制作を取得可能。このポイントを貯めてイカダを取得、製作してここから脱出というのが基本の流れだ。ちなみに制作を取得しなくても作ることは可能。その場合はポイント等は入らないからただ損をすることになる。できるだけ制作があるものを作る方が良い。熟練度が上がると制作時間が短くなったり品質が良くなったりする。更に関連スキルが上がる、今回だと建築スキルが上がった。経験値は貯まるとレベルアップする。ポイントを得られステに振れる。


「お腹が空いたな」


そろそろお昼、貰った干し肉にかじりつき、川の水を顔をつけ直に飲む、澄んでいるから水道水よりも美味しいな。休憩後森の中へ。


「いいもの見つけた」


ツルを発見、編むことでかごを作ることができる。ベルトに掛けた鉄のナイフを抜き切り取ろうと思ったが、ナイフも自作できそうだった。この世界特有の石、刃石が河原に転がっている。加工してナイフとして使うことが可能。せっかくだからサバイバル生活を楽しむとするか。出した鉄のナイフをしまい石のナイフを作ることにした。製作は簡単、石を叩きつけて割って鋭そうな部位をざらついた石で軽く研ぐ。こうして石のナイフが完成。切れ味は通常の石以上、金属のナイフ未満ではとゲームでは考察されている。試しに木を削ってみる。鉄のナイフほどではないがなかなかの切れ味だ。つるを引っ張り必要な長さで切り、かごに加工、背負って森の中を移動。


「木の実だ」


これもまたこの世界特有の木の実の無休どんぐり。一年中採れる美味しいどんぐり。世界中に分布しており食料を確保するならまずはこのどんぐりを探せと言われているほど。他にも野草、豆、スパイス、ハーブ、果物がある。食に関してはもうクリアしたといえるレベルだ。草鍋を発見、盛り上がって膨らんでいる葉をひっくり返せば鍋として使える。鍋良いね、材料をチェックする。海水を使ったワイルドな鍋料理ができるな。草鍋とその他素材を採っていく。森の中を歩いていると傘のある大きなキノコを発見。良い出汁が出る、鍋にもよく入っているからいれたいところではあるが。


「うまそうだけどね」


見ると80%と表示される。食用にできるキノコだが非常によく似た毒キノコがある。20%の確率でハズレなわけだ。これは結構な確率で数を集め食べると高確率で当たってしまう。死ぬほどの毒ではないがもし食べたらサバイバルは失敗となるだろう。見極めが難しいキノコだ、やめておくほうが無難。講習でもやめておけと説明があったしね。


「海も探してみるか」


海辺に移動すると多数の貝殻が転がっている場所を発見、これは期待できそうだ。潮干狩り開始、穴が空いているところを掘ってみると生きている二枚貝が出てきた。画面を開き調べる、こいつは食べられそうだ。製作の焼貝を見る、下処理として砂利抜きがある。砂に生息する貝はこれをやらないと美味しくないんだよね。一旦貝はそのままにして岩場に移動、魚用の罠を作る。穴を掘り石で周りを固めため池を作成、木の葉で返しを作る。一度ため池に入ると出られなくなる作り。潮干狩りをして貝をゲット、ため池に貝を入れておく。


「そろそろ食事の準備をしよう」


落ちているどんぐりを大量に拾う。川に落とし虫食いをチェック、拠点に持ち帰る。皮を剥き中身を取り出し石ですりつぶしペースト状にして固め、これを焼いてパンに。平らで大粒の物体が残っている、パンというよりはほぼクッキーだけど。火を起こす、木の棒を手に持ち擦る原始的なやり方だ。全力でこすると火の粉が発生、燃えやすい物を突っ込んで火を育ててなんとか火を起こせた。薄い板上の石を焼き、その上にどんぐりパンを乗せる。焼き目がついたらひっくり返ししばらく焼いたら完成。焼きながら鍋料理を作る。石を積み上げて草鍋を置ける場所を作り、きれいな海水を選び草鍋ですくい上げ豆に野草、スパイス、ハーブを入れる。そのままでは塩分が多いから水を足す。後はそのまま煮るだけ。焼けたパンの匂いが鼻腔を通り抜け食欲を刺激しお腹が鳴り出す。早速どんぐりパンにかじりつく。


「あつっ」


焼き立てはやはり熱い。味は非常に良い、渋みがなく甘い、油分があり濃厚な味わい。スープもできた、塩気が強めなスープ、うまい。豆がホクホク、野草がしゃっきりしていて美味しい。塩味だけだから正直味の方は覚悟をしていたがスパイスとハーブが味をサポートしてとても美味しく仕上がっている。汁物はいいね、体にも心にしみる。パンを食べながらのスープ、食後はデザートに果物を食べる。サバイバル初日から豪華なものを食べているなと思わずクスリと笑ってしまった。食の心配はなさそうだ。最悪パンだけ作って食っていれば大丈夫。砕いた分のどんぐりをパンにしておく。


「無人島攻略は見えてきたな」


ゲームで散々やっていたこともありかなり余裕がある。本気を出せば三日くらいで脱出できそうだ。RTAをやってる人だと島についていきなり木を切り出して半日とかからず脱出してたな、早すぎる。サバイバルの訓練が目的だから脱出はすぐにしないほうがいい。


「問題があるとするとホームシックか」


暗闇の中、焚き火の明かりに映るのは俺だけ。家族とペットに囲まれて暮らしてきたからな、正直少しさみしい。両手もさみしい、モフモフの中に指を突っ込みたくなる衝動に駆られる。まあいつかはこんな日が来るだろうとは覚悟はしていた。家から離れて一人暮らしとなるとペットを飼うのはきつくなりそうだからな。その日が早まっただけさ。魔物使いだからいつかモフる日が来るだろうけど。

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