第2話 魔物使い

「魔物使いは危険な職業です。そのため試験があります」


この世界には大きくわけて獣が三種類いる。現実社会にもいる普通の獣、仲間として一緒に戦う魔物、人類の敵、破獣の三種。魔物使いの主な仕事は魔物を仲間にし破獣を倒すこと。当然、破獣との殺し合いになるから非常に危険な職業。しかし見返りも大きくかなり稼げて国からの支援も厚い。過去には農民から国の王様にまで成り上がった者もいるとか。それだけ金も名誉もある仕事。協会は国からの補助金で運営している。


「試験合格後は一年間協会の下で活動してもらいます。その間どんな人物か見定めます」


魔物を使役し、レベルが上がると本人も強くなる、強力な魔物使いの力は使い方を誤ると非常に危険。悪人には魔物使いになってもらいたくないところ。


「皆さんにはこれから無人島で生活してもらいます」


試験は無人島で生き残り、三十日以内に自力で島を脱出するといった内容。魔物を仲間にするとき、破獣を退治するときは街から遠く離れ数日そこで活動することもある。そのためサバイバル能力は魔物使いにとって必須。大昔は誰にでも魔物使いの免状を発行していたが、怪我人や死者が後を絶たなかった。特に駆け出しの魔物使い達は知識もなくお金もなく準備不足だが強引に出発、そのままも戻ってこないという事態が多発。このままではいけないと国が動き最低限のサバイバル能力がなければ魔物使いになれない試験制度を導入、同時に魔物使い達のサポートをする協会を発足。


「1日分の飲料と食料、棄権用の木筒、魔物との契約アイテム、それから各自欲しい物品を一つだけ持って無人島に入ります」


着の身着のままでは流石に大変だからと多少協会からの支給品がある。無人島生活はサバイバルだが破獣はいないし基本的には安全な場所。ゲームでは何度も攻略したから無事合格できると思うがやってみないことにはね。配られた用紙に欲しい物を記入し提出。


「今からは講習、明後日の朝に港から出発となります」


講習の内容は無人島での立ち回り方、能力の使い方、無理だと思ったときのギブアップの仕方等、ゲームのチュートリアルでやったことだな。講習を終え協会が用意した宿屋に泊まる。翌日、記入した物品が届く。俺が選んだのは鉄のナイフ、一つあれば物体を様々な品物に加工が可能、サバイバルの必需品だろう。


「交配を確認しておこう」


説明文を読む。色々書かれているが二体以上居ないと発動ができないようだ。もう少し後で使える能力だな。協会へ行き資料室で調べたが交配なんて能力はこの世界には存在しないようだった。もしかしたら俺だけが持っているのかも、まだ試せないけど楽しみだ。そして一日経って当日、朝早起きして眠い目をこすりながら港へ。そこには海を泳げるタイプの魔物達が多数いた。今日一日分の飲料食料を受け取りボードに書かれている番号へ移動。武器防具を身に着けた魔物使いと魚の形状をした魔物が海上いた。


「落とされないようにな。では出発!」


魔物使いの男性が魔物を操る。とても速い、水を切るようにかっ飛んで進んでいく。あっという間に無人島に到着。


「頑張れよ!」


手を振ると男性は港へ帰っていった。すぐ近くにも二つ無人島がある、そこにも魔物使いの受験者が送られている。おっと、人のことを気にしている場合ではないな。見事生き残り街に帰って魔物使いにならないと。


「さてと」


まずは安全な場所の確保。立ち降りた場所は砂浜の海辺、もろに日があたり、地盤が悪く海水が迫ってくる可能性が高い、ここは却下だ。少し歩くと川を発見、飲み水を確保。そのまま川沿いを歩き島の中に入っていく。小高くなっていて草が少ない開けた場所を見つける。ここを拠点にしよう。逆に土地の位置が低い場所はとても危険、雨が降ると増水し付近一帯が浸水する可能性がある。講習でしっかり教えてくれていた、ゲームでも基本的なことだ。これから雨をしのぐシェルター作り。雨は意外と体力を奪われる、若くて元気だからといってシェルターを作らないのは自殺行為だ。画面でシェルターを開くと必要素材とその数が表示される。木の棒と屋根材が必要。木の棒はその辺りに落ちている木でいい。屋根材は葉、落ち葉、草。落ち葉は少ないから青々となっている葉にしておこう、木から枝ごと引きちぎって葉を集める。


「必要分集まったな。シェルターを建てるか」


画面でシェルター製作を実行。空間に仮に出来上がったシェルターが薄く表示される。邪魔な物体があると建てることはできない。広い平地、ここに作るとするか。必要時間が表示され、決定を押すとシェルター作りがスタート。自分が勝手に動いているような不思議な感覚、ゲーム的な感覚だな。いつでも途中で止めることができる。当然必要時間が止まる。止められないタイミングもある。その場合で止めてしまった場合は失敗となる。拾ってきた木の棒を地面に突き刺し組み立てていく。枝の分かれ目を利用し積み重ねる。骨組みが出来上がったら葉を乗せていく。


「よーし、完成だ」

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