その3:看護婦さんの恋愛模様
「はぁ~疲れたぁ~」
優美はそう言ってナースセンターで椅子にドカッと座り込む。
緊急手術で応援要請を受けて夜勤明けからずっとシフトが入っている。
今日はこれでやっとあがれるので、二日ぶりに自宅に帰れる。
「予備の着替えとかも持ち帰らなきゃねぇ~」
言いながら更衣室へ向かう。
緊急や今回のような応援でいつも着替えは数着置いている。
勿論下着類もだ。
優美はそれらを手に取り、勝負下着を見て思う。
「当面使う必要ないからなぁ~。とりあえず持ちかえろうかしら?」
先日彼と別れて、この勝負下着など使う必要性が薄れる。
と、蓮華が更衣室に入って来た。
「あら? 優美も今日はあがり?」
「うん、やっとだよ。帰ってシャワー浴びて寝るわ~」
「あ、そっか。彼氏と別れたんだっけ? ねえ、それじゃ今晩暇??」
「暇と言えば暇だけど……」
「合コンで面子足りないのよ、優美来てくれる?」
「合コンかぁ~。どうしようかな??」
「今回はうちの病院の先生たちよ。若いのもいるから来ない?」
「おっ? それは聞き捨てならないわね! イク、イクぅっ!」
「言い方がいやらしいって。Ok、じゃあ夜の七時に駅前のこの居酒屋でね。遅れないでよね?」
「了解!」
そう言って優美はいそいそと自分の部屋に戻るのだった。
* * * * *
「ぐっふっふっふ、うち病院の先生たちかぁ~。網野先生とか長澤先生、あと前田先生とかも来るかなぁ~」
優美はそんな事を言いながらしっかりとシャワーを浴び、香水を振りかけ、勝負下着に身を包み、清楚系の洋服をチョイスする。
姿見の鏡の前でチェックをして頷いてから家を出る。
出かけにしっかりと栄養ドリンクを飲んでおくことも忘れない。
「上手く行ったらホテルだもんね~。頑張らなきゃ♪」
バックに忍ばせてある避妊具の確認もしっかりとして嬉々として指定された居酒屋に向かうのだった。
* * * * *
「「「「「「かんぱーい!」」」」」」
居酒屋で面子が集まってとりあえず乾杯が始まった。
優美が狙っていた先生は来なかったが、若手の新人医師ばかりだった。
「へぇ~みんな年上だったんだ。そうには見えないよね」
若手の医師は優美たちを前にしっかりとリップサービスをしている。
そんな彼らに聞こえない様に優美は蓮華に言う。
「ちょっと、若い子ばかりじゃないの? 網野先生たちはどうしたのよ?」
「中堅所は私たちより若い看護師たちと飲み行っちゃったのよ! くそう、まさか
こそこそと優美と蓮華は後ろで話すが、優美は若い看護師と言われてその中にいた智沙を思い出す。
今回は彼女の発案で合コンになったらしいが、もともともっと多くの人数が集まる予定だった。
しかし寸前の所で中堅所の先生たちの都合が悪くなり、若手の医師をこちらに振り分けられたらしい。
確かに将来有望かもしれない。
しかしまだ大学を卒業したばかりの医師ではもうじき三十歳になる優美たちにとっては年下と言うだけではなく、経済的にも頼りにならない。
「くっ、今回は喰うだけで終わりにするかしら」
「そうね、せっかくだから私はあっちの子が良いわ」
「じゃああたしはこっちの子ね!」
優美たちはこそこそとターゲットを絞ってそれとなくこの場からフェードアウトしてゆく。
もちろん若い医師を連れて。
そして翌日腰が立たなくなった若手の医師たちが集団で休みの申請をするのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます