「死ね」「死のう」の独り言
明鏡止水
第1話
辛い思い出というより、自分の失敗を思い出すと。
「死ね」
と独り言を言ってしまう。
周りの人から見たらいきなり三十代の癖毛の小太り、脱毛もしてない冴えない服装の女が
「死ね」
と独り言を言ったようなもの、というかそのものだ。
頭の中では辛い記憶と己の失敗、せめぎあって。
「死のう」
「死ね」
と呟いてしまう。
特にトイレに一人でいる時や車を運転している時に多い。
いじめとか辛い記憶と教師から受けた理不尽な責めに対して心が、顔の肉がぼってりと浮腫むような気持ちになる。気が重い、とかは可愛い言い方だ、ちと憎い、憎いのだ。
執念というか怨念というか。
私はそんなだから結婚も独り立ちもできず恋人もおらず、ズボラでいつも焦っていて、仕事できない奴で、ストレートに生きられる人間と比べたら欠陥品なのだろう。
両親も今はまともだけれどまともじゃない時があった。
でも三きょうだいいて長女の私がいちばんひねくれてるとか暗いとか考え方がわかってない、コツを掴めていない、と散々言われた。
そんならわかるように言ってくれたら伸びただろうに、余計に性格を曲がりくねるカタチにする言葉ばかり言ってくる。
自分が植物だとする。
クラシックや素敵な言葉を伝えたら植物の気分もいい。つける実や成長も申し分ない。
でも馬鹿にされる言葉ばかり言われたら、そりゃ、お前ら。
卑屈になるに決まってるじゃん。
いじめでも頭のおかしい教師からの指導から逃げるにしてもヒーローがいて欲しかった。
ヒーローは一人じゃなくても良い。
一人の不良とその他の取り巻きが私をいじめてくるなら、その他の生徒全員ヒーローになって欲しかった。
恐怖と気分で生徒を傷つける先輩教師に後輩教師の担任にヒーローになってもらって助けて欲しかった。
いろいろおもいだす。
死ね。
死のう。
自分に自分で言わなきゃいけない。
昔よく知らない男子生徒から通りすがりの廊下で「キモい」と言われていた。
私はキモいという言葉が大嫌いだった。
大人になってから小さな姪がキモい、という言葉を使った時。
私は怒った。
姪は泣いた。
泣かせてしまった。
私のトラウマのせいで小さな姪が傷ついた。
私が傷つけてしまった。
キモくない自分になりたい。
普通は嫌だけれど普通じゃないといじめられる。
女も男もみんな私をいじめてくる。
自宅近くの公園の遊具にも私のクラスと名前とキモいという落書きがあった。
引っ越してこなければ良かった。
たぶん引っ越さなければ私はメンヘラな友達につきまとわれたり仕返ししたりしてヤンキーになってたと思う。
でも、優しい人にはなりたかった。
優しい人間。
心優しい人。
将来の夢。
優しい人。
そう思うと、もう叶えてる。
これからは優しくて厳しい人間にもなりたいと思う。
いじめは許さない。
いじめてきた人間は一生許さない。
私もいじめをしたことがあるけれど忘れてる。
でも、自分のことだけ覚えてても、しょうがない時はしょうがない。
それだけ恨みが強いとか視野が狭まっているとかは言わない。
単純に死にたくなった。
死にたいとまで思わせた相手や環境や出来事が憎い、辛い、恨んでる。
堂々巡りだと分かっていても、ドードーが絶滅しても。
人類は人や景色や映画やポツンとを体験しなければならない。
だけど。私は。
大家族に囲まれて死にたい。
金がいる。伴侶がいる。早めに子供を産まないと閉経だってある。実現できない夢を思い描くことの辛さ。
でも、それで
「死ね」
「死のう」
とは呟かない。
だって、私の幸せのための思い描いた想いなんだから。
捨て鉢にはならない。
はやく、見つけたい。出会いたい。借金返したい。
毎日思うのは、こういうことで良いじゃないか。
お腹が空くと碌なことを考えない。
幸福が必要だ。
焼肉が食べたい。
命に感謝することが無くなったけど、いただきますは言える時には言うようにしている。
人生や、人生よ、ごちそうさま。
「死ね」「死のう」の独り言 明鏡止水 @miuraharuma30
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