10-6
大きなシャツをフレックに羽織らせながら「どおりで再会した時からよそよそしい筈だ」珍しく悲し気にしょげるヘリオスフィアに、フレックはべちょっと抱き付いた。
「だって!破棄されてると思ってたから!だから文官としてっ!」
「ああ…、なるほど…そうだったのか…。すごく頑張ってくれていたんだね。ありがとうフレック」
びだびた張り付くフレックを、ヘリオスフィアはぎゅうっと抱き締めた。
「寂しかったけど、君が文官として努力しているからと、受け入れていたんだ。…もっと早くに説明しておけばよかった…」
寂し気な声色にフレックは、だから名前の呼び方ひとつで感情的になってたのかぁ、と合点が付いた。
でもでも、と思う。
思ってしまうのだ。
だって再会してすぐ仕事の話だった。
婚約がどうのなんて話、ひとつもなかった。
だから「でもリオだってすぐ仕事の話してきたじゃんっ」フレックは今更ながらヘリオスフィアの説明不足だったと非難する。
「そ、それは…」
言い淀むヘリオスフィアに、フレックはぷすぷす追及説明求む。
「最初、説明、欲しかったぁ!なんでしてくんなかったんだよりおのばかぁ!」
「うっ、すまないフレックっ」
「わぷ」
ヘリオスフィアがぎゅっと、フレックを身動き出来ぬくらい抱き締める。
けど、フレックはむしろその密着を堪能するかのようにムフふす鼻と口を蠢かす。
「君に…東部魔境戦線に送ってしまったことで嫌われていたらと、思って…つい…言えなかったんだ…」
ヘリオスフィアの実に弱気な本音に、フレックはますますをもって懸命に張り付き返す。
そういう気持ちは分かるから。
ずっと有耶無耶にしておきたかったの、すごく共感出来るから。
でも心外であった。
「俺がリオのこと嫌う訳ないじゃんっばかっ!」
ヘリオスフィアに嫌われたって、世界を敵に回したって、フレックの想いは不動と相場が決まっていた、フレックの中では。
そんなこともわからないのっと、わがままフレックがのさばる。
けど理解が及ばず申し訳無いって、ヘリオスフィアは猛省。
大事大事と、フレックにたくさんキスの雨を降らす。
「…文官での派遣だからと甘く見た結果、君を深く傷つけてしまった非は私に。一生涯君の傍で君を支え守ることを誓おう」
そうして再び誓った。
騎士として、フレックを愛する者として。
その真剣な眼差しと口調に、フレックはふひゅうと歓喜で息荒げる。
「そーして、そおして!」
「うん…」
はじめてその誓いを受け取れた喜びに、すんなり受け取って貰えた悦びに、ふたりはぎゅううっと抱き締め合う。
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