10-4
急に震え始めるフレックを、ヘリオスフィアが背中を撫でて慰める。
「ねぇ、フレック」
「ぅ、ん…」
「君は私が嫌いなの?」
フレックは顔色一つ変えずに悍ましい事を問うヘリオスフォアに、縋りつく。
「すき、すきだよぉ!すきだから!しあわになってほしいから!糞屑になったんじゃん!!」
好きだから。
全部。
好きで。
幸せに。
だけど。
こんな。
嘘だ。
フレックは、身体の中から崩壊しそうになっていた。
だってこんなのどうしてこれじゃあ。
何の為にヘリオスフィアに嫌われようとしたの?
いくら、なんぼなんでも、楽観的なフレックでも。
それは内部を激しく揺さぶる現実だった。
なんのために?
一個。
ぶれないひとつ。
なのに。
ぜんぶがむいみに。
「フレック」
「り、お」
ふんわり鋭く名を呼ばれ、フレックは夢から覚めたように目を瞬かせる。
妙にスッキリしているのは、細かな氷雪が頭の中が過ぎ去ったから。
そうなったフレックは、目の前のヘリオスフィアのことしか考えられない。
ヘリオスフィアはそんなフレックの両頬を優しく両手で包み込んだ。
暖かった。
どちらとも。
それがどうしても嬉しいから。
フレックが笑う。
それにつられてヘリオスフィアも、笑った。
「フレック」
「うん…」
「私も、ずっと、ずっと、君が好きだ。あの日から、今も、ずっと、ずっと、だ」
「…ぅ、ん」
「私と結婚してくれ」
「っうう」
先ほどまでのフレックだったら、駄目だ出来ないそれは違うと叫んだだろう。
でももう今のフレックは、ただヘリオスフィアが好きなフレックだったから。
「私の幸せには君が必要なんだ。君が居ないと、私は、凍えてしまうよ…?」
「り、おぉ…」
「結婚、しよう?」
「けっこん、すゆ…ぅすきぃ、りおぉ…」
心の思うままに応えられた。
それは本来のフレックだった。
楽観的な明るいことばかり信じるフレックだった。
ヘリオスフィアが愛してやまない、フレックだった。
ようやく会えたと、ヘリオスフィアが安堵の息を吐きながらフレックを抱き締める。
フレックもまた嬉し泣きで顔をぐしゃぐしゃにしながら、ヘリオスフィアの胸に顔を埋めた。
「りぉ、りぉお…」
「うん」
「す、すきでごめんん、今までごめんんっ、ばかで、あほで、くずしてごめんんんっ」
「…可愛いフレック…いいんだ。それに、指輪、大事にしてくれていて嬉しい」
「いづもだいじ、じでだぁ」
フレックはあの日持ってたのに見せられなかった辛さを癒すように、ネックレスを引っ張り指輪が二個仲良く絡んでいるのを見せつける。
「…知ってたよ…君がいつも、失くさないようにしていたのも」
指輪と手を一緒にして、ヘリオスフィアがフレックの指先にキスをする。
お礼のようなそれに、フレックはただ名前を呼ぶことしか出来なかった。
「りお…りぉお…」
知っててくれていたの?
大事にしていたのを。
御守りにしていたのも?
そう泣きながら訴えるフレックの、濡れた眦口付けて、ヘリオスフィアが「全部全部、分った。全部、私の為に、こんなに、頑張ってくれていたんだね」頬に、鼻先にキスをする。
フレックは、頑張った、ご褒美。
最高のご褒美だと、喜んでもっと欲しいと顔を差し出した。
「ありがとう、フレック」
「あ、あ、ま、って、だ、めぇ…」
口の端キスされたフレックは、流石にそれ以上は駄目って思った。
思っても欲望に身体は忠実。
今やわがままフレックしか居ないから、抵抗なんてただの空虚な建前でしかない。
「フレック」
長い人指し指が唇に添えられ、ヘリオスフィアがしーって囁くもんだから。
フレックは素直に黙った。
黙ったけど口は結ばず、ちょこっと突き出す。
胸ときめかせ黒の瞳輝かせるフレックに、ヘリオスフィアは微笑み。
そっと、唇を重ねた。
フレックは炎のような口付けに溶かされ、全てをヘリオスフィアに、委ねた。
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