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憲兵と騎士の役割はそれぞれことなる為に、ヘリオスフィアは以前より第一王子の東部魔境戦線送り最後通牒は一任されていた事を説明した。

そこにプルトゥ卿も絡んでおり、詳しくは王城で確認して欲しいと告げると何人かの憲兵達が事実確認の為去って行った。

憲兵達からは、決闘を吹っ掛けたのは第一王子であることが食堂に居た生徒達から証言は得られていると告げられた。

その為、まぁ、やり過ぎであったがヘリオスフィアへのお咎めは無し。

たまたま食堂に居合わせ、見守り人をかって出たプルトゥ卿と同級生達も同様、ということになるそうだ。

そもそも公式の決闘とするにはあまりに杜撰だった為、第一王子の暴走ということになるそうだ。

ヘリオスフィアは残して来たフレックのことが心配だったので、本当は同級生のひとりに言伝を頼むつもりだったらしい。

けれどヘリオスフィアの魔力暴走が第一王子があんまりにも駄目すぎて、速攻で暴走してしまい、誰も動けなくなってしまったそうだ。

その点についてヘリオスフィアは大変反省しているようで、現着が至難であったと言う憲兵に「ロッカ卿はトリノ殿と一緒に居ることをもっと意識しては如何か」と苦言を呈されていた。

演習場の結界を一部壊し、周囲の生徒にもやや影響を与えてしまったからだ。

その辺りはヘリオスフィアに害が及ばぬように処理してくれるとのことで、ヘリオスフィアはますます反省、フレックを抱き締めた。

話は以上ですよねという雰囲気を出ヘリオスフィアに、憲兵達は第一王子の従者と補佐候補、いわゆる腰巾着達をどうするのかと問うた。

彼らに対しても何か決まった処置があるのだと憲兵達は思ったのだ。

ところがヘリオスフィアはそちらにお任せしますと、憲兵達に丸投げした。

一任されると大して罰せなくなるが良いのか?と問われたヘリオスフィアは「本命が済んだので」と冷淡な答えを返した。

つまりそれは、ヘリオスフィアに第一王子への最後通牒を託した者達が、彼らには何の期待も情も愛も無いと言う事だった。

そうとは知らずに、聖女カッコカリに踊らされ続け増長する未来しかない彼らの、分水嶺はここなのかもしれない。

それが分かってか、憲兵達は同情の色隠すこと無く、まだ意識の無い若者達を回収していった。


それらを見送って、ヘリオスフィアはフレックを抱えたまま急ぎ旧生徒会室へと戻った。

眠ってしまったのかと思う程、フレックが大人しくなってしまったからだ。

けれど瞬きしている気配感じられる。

先ほどまでは色んな反応があったのに、どうしたのだろうか。

具合でも悪いのか。

また発熱してしまうのか。

ヘリオスフィアは様々な心配を胸に抱きながら舞い戻った旧生徒会室、ソファにフレックを座らせようとした。


「…フレック、疲れただろ?すまない、今何か軽食を…フレック?」


ところがフレックがしがみついて離れない。

座らないって、断固拒否の姿勢で抱き付いてくる。

もちろん引き剥がせない事はない。

ヘリオスフィアの方が力はある。

けれど、そんなこと、彼には出来なかった。

出来ないからヘリオスフィアは、フレックを抱いたままソファに座ることにした。

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