9-3
いつも通りヘリオスフィアにエスコートされ、辿り着いた新校舎はまさしく新品、綺麗だった。
白を基調とした清潔かつ荘厳、そして親しみやすさを持たせる木目調の廊下や扉がフレックの目に飛び込んでくる。
ついでに生徒も当然居て多いから、奇異の眼差しに居たたまれなさを感じた。
フレックは不安になってヘリオスフィアを見上げてしまう。
空色の瞳が優しくフレックを見つめ返してくれた。
それだけでフレックは安心出来た。
「新校舎は、初めてだったか」
「はい、新築って感じで綺麗ですねっ」
「…見た目はな」
その小さな呟きからは、生徒会のあれこれ、貴族的なそれこれ、色々渦巻く人間関係に辟易しているのが感じられた。
何か、出来ないか。
でも、フレックには、なんにもなくて。
無力で。
ぎゅっと、手を、握ってしまった。
「少し疲れたか?ゆっくり歩こう」
違うのだが。
気遣わせるつもりはなかったのだが。
フレックは「うん…」素直に頷き足取りを遅くさせた。
それはさきほどから向けられている眼差しを多く浴びる結果になるのだが、フレックはもう、気にもならなかった。
ヘリオスフィアがあらかじめ予約していた個室、庭園が望めるテラス席にフレックは座っていた。
一緒にカウンターで料理を取りに行きたかったのだが、人が多い大食堂から個室まで距離があり、そこを両手が塞がったフレックが歩く事をヘリオスフィアが良しとしなかったのだ。
一緒にメニュー見て選びたかったフレックは、大人しく待っているようにと頭を撫でられた。
それでも無理についていこうとはしなかった。
やっぱり生徒が多い場所に一緒に居るのは、得策ではないと思うから。
覚悟は決めている。
どんな事を言われても聞き流せる。
でも、自分は平気でもヘリオスフィアは?
彼は、優しくて、優しいから、きっと傷付くに違いない。
自分が傷付いたと思って、苦しんでしまう。
いくらフレックが本当に平気だと言っても、ヘリオスフィアは楽観的では無い。
気に病んでしまうのが想像出来た。
優しい騎士。
フレックを守らんとするその姿は、強くて美しい。
「…はぁ…」
本当に。
本当に。
自分は何も出来ないのだなと、フレックは溜息を吐いた。
ふいに強い風が吹き込んで、それが夏にしては冷たくて。
フレックは妙な胸騒ぎ、覚えて胸元の指輪に無意識に触れていた。
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