9-2
兄に相談した結果がいつもと同じだということにフレックが気付いたのは、週が変わってからだった。
作業中に気付いた為フレックは「兄上めっ」と声を発してしまい、ヘリオスフィアに大層心配された。
説明するに憚れたフレックは「兄上が全部悪いのです」と兄に全責任を押し付けることにした。
そしたらヘリオスフィアは「トリノ先生とよく、話しておくよ」と微笑んだ。
こあい、えがお。
だと思ったけど、兄の相談結果が適当だったのが悪いのだ。
ヘリオスフィアに詰め寄られて四苦八苦すればいい。
そうしてフレックは、与えられた仕事を粛々とこなすことに集中した。
いつも通り記録板に入力を勤しみ、その入力速度はみるみる上がった。
それをヘリオスフィアに褒められたフレックは、むふむふしながらミスチェックしている。
少し任せる量を増やそうか、と言われて有頂天にならぬ文官この世に無し。
何の才能もない自分が、天才に認められた。
嬉しくて嬉しくて、あ、ミスってる危ない危ない。
調子に乗るとミスする己をよぉっく知ってるフレックは、きちんとチェック。
次の作業に移行した。
そろそろ昼時。
フレックはヘリオスフィアが、今日はどんなランチを与えてくれるのか内心ワクワクしていた。
本来は自前で用意すべき昼食。
けれどフレックはもうずっと、ヘリオスフィアに頼りっぱなしであった。
以前フレックが自前でと申し出たら「遠慮しないでくれフレック」ヘリオスフィアに両手を取られ微笑まれ、持ってきたらそれごと食うぞ的な圧を掛けられた。
魔境戦線とはまた違う種類の脅威に、フレックは震えながら愛想笑いで耐え凌いだ。
それからずっと、ニューノ家専属シェフのランチを楽しませて頂いてる。
「フレック」
「はい」
「今日は学食で食べようか」
新しい提案に、フレックの胸中は不安と不満と期待の三つ巴総決戦。
旧校舎に学食は無い、つまり行くのは新校舎、不安だ。
学食と言う事はニューノ家のランチじゃない、不満だ。
新校舎、行ってみたかった建物、期待大。
負の思考感情は楽観的なフレックの中ではつねに劣勢だ。
だから期待が、我が儘フレックと手を繋いで飛び跳ね行こう行こう。
それでも表層だけは取り繕って、
「…私が行っても大丈夫なのでしょうか?」
おずおず、こわごわ、フレックは確認を取った。
「何が問題なんだ?」
夏の制服もお似合いのヘリオスフィアに、キョトンとした顔で問われたフレックは、部外者がー、とか、元婚約者だー、とか、言われても思われても平然としていようと、覚悟を決めたのだった。
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