8-7
それは、ヘリオスフィア、だった。
「良かったな、ジェゴ卿。君には必要だろう」
覗き込むように屈まれたので、フレックは顔の近さに心中あったふったした。
近いヘリオスフィア近い息が耳に。
紅潮は止まらない。
だから誤魔化すようにフレックはポケットから魔石を取り出した。
そう、両方のポケットに入れていたのだ手のひら大の魔石を。
ヘリオスフィアに渡すタイミングを計っていたそれは、大振りで透明度が高い魔石を選んで作成した物だ。
「その、ロッカ卿も、その、良かったら…ありますが…その、よければ…」
数個作った中のとっておきの1個を恐る恐る差し出すと、ヘリオスフィアが愛おしむように手に取ってくれた。
フレックはこの時初めて自分が作った魔石を、ヘリオスフィアが所持しているのを見た。
役立て、役に立ってくれと、一念を魔石に願う。
「ありがとうフレック。私には君が居るけれど、戦場にまで君を連れて行けないからな…有事の際はありがたく使わせてもらおう」
ヘリオスフィアが何故か後ろから抱き締めてくる。
感謝のハグだ、とフレックは飛び上がりそうなのを抑え込んだ。
「えと、その、良ければ、戦場、ついてけます、よ?」
抑え込みながら、平然とそんなことを言うフレックに、ヘリオスフィアとジェゴが瞠目した。
「ふふ、君は本当に頼もしい…ありがとう…ジェゴ卿、君は、魔石は、遠慮なく使うと良い」
ヘリオスフィアが耳元でなんか言ってる。
耳元すぎてフレックの脳に届かなかった。
ただジェゴには伝わったようで「は、はい」慌て立ち上がり背筋を伸ばしている。
そんな様子をじっと見てから、ヘリオスフィアが優しく囁く。
「後で有事の際のフレックの扱い等決めよう。君の特異体質も無限ではないのだから、誰彼構わず無力化してはいけない」
まるで言い聞かせるような、呪文だった。
だからちゃんと今度はフレックの脳みそに響いた。
翻弄されている。
でもこの腕の中から抜け出したくない。
「それは、そうです。お邪魔にならないように、隅っこに、ロッカ卿の補佐をしますとも」
フレックはカクカクしながらも、きちんと返答した。
「ああ、頼もしい」
ぎゅむっと抱き締められ爆発しかける。
かろうじて、耐えられたのは、ジェゴが気まずそうに佇んでいるからだ。
年上としてきちんとしてないと。
わがままフレック飛び出し禁止だ。
「お任せ、下さい。伊達に東部魔境戦線で文官やってないので」
飲み込んで愛想笑い。
ああって返答と共に耳に唇の感触を感じたフレックは、泣きそうになった耐えた。
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