8-2

フ、と違和感でフレックの意識が浮上する。

胸元に触れる気配に薄目を開けると、ジェゴがシャツの前を開けていた。


「こちら、少し前を、その、はずしますね」


「ひゃぃ…」


申し訳なさそうに言われ、フレックはお気になさらずよろしく願いますと頷いた。

ゆっくりシャツのボタンを外され、すぅっと涼しい、気がしたがそれは一瞬で終わって熱い。

うん、熱い。

フレックは溜息を吐いた。


高熱が出て身体がいうことをきかないなんて情けない。

仕事中は耐えられると思ったんだけど情けない。

解熱剤効かなかったのかぁ、情けない。

ひとまず横になって休まないと、と深く長く息を吐く。


「頭、冷やしますね」


ジェゴがハンカチを濡らし額に乗せてくれた。

手慣れた介護に流石騎士だなぁと、冷たさも相まってフレックはなんでか涙を流してしまった。


「っ…眼帯…濡れるといけないので外してもよろしいですか?」


耳元でそう囁かれたフレックは、しばらく結構考えた。

だってかんがえまとまらない。

ついでに眼帯をしている意味を思い返す。

毎朝見てる素顔の左目。

見慣れているフレックには問題無いけど、見慣れれぬ者には多分グロい。

だからヘリオスフィアが眼帯を、くれたんだと。

思い出してからジェゴを見る。

視界がぼやける。

だいぶ、熱でやられてる。


「めぇ、ないよぉ?」


「私も騎士です。慣れております」


フレックの返答を膝付き待っていたジェゴは、大丈夫ですともと優しく返す。

その響きにフレックは、じゃあ濡らしたくないからと頷いた。


「うん、じゃぁ、とってぇ」


はい、と言われた気もしたが、フレックは意識が朦朧とし始めていた。

久し振りの高熱に、すっかり平和ボケした精神が撒けてしまってて、情けなくて、申し訳なさが募る。

そんなフレックの眼帯をジェゴが外す。

大事なの、無くなった。

視界は良好にならないかわらない。

でも大事、それは、大事なの。


どこおくの?

テーブルに置いておきます。


フレックは落ちかける意識の中漂いながらも、これだけは伝えないとと口を動かす。

口を動かしただけじゃ駄目なのに、いけるいけるとフレックは呟いた。


「あぃがと…じぇごきょぉ…」


言葉にもなってないのに「いいえ、お気になさらず」ジェゴが頭を撫でてくれた。

おお、優しき騎士。

願わくばそのまま騎士名授かれ頑張れ。

答える様に頬を撫でられる。

やさしい。

でもあつい。


「…ロッカ卿を、呼んでまいりますね」


「ぅん…」


ジェゴに声援を送っていたフレックは、その名を聞いてあっという間にヘリオスフィアの事ばっか、考えて、意識を手放した。

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