7-8
あの模擬戦の後ブレイブ卿の不躾な呼び出しが無くなったと、フレックはヘリオスフィアか聞かされた。
なんでもヘリオスフィアが進めている作業が急務だっていうのを身をもって理解した、そうだ。
あの氷の花食らって改心したんだ、とフレックはヘリオスフィア信者度を深めた。
ただヘリオスフィアが騎士である事に変わりなく、そちらの仕事がある事も事実。
その為、
「ロッカ卿と魔法騎士団の橋渡しは、不肖、サード・ジェゴが承ります」
旧生徒会室でこなせる書類仕事をサード・ジェゴが運ぶ事と相成った。
ついでに大事な呼び出しも任されたとあって、サード・ジェゴの背筋はピンっと張って随分凛々しい。
初めて訪れた一直線元気りんりん、から一変した落ち着いた様子のサードに、フレックはさてはヘリオスフィアの真似してんな?とニコニコしてしまった。
それに本人の希望で橋渡し役を買ったとも聞く。
つまりはヘリオスフィアへの憧れを高めた。
フレックは同士が身近に増えた事を喜んでもいた。
「あい分った」
騎士然とした首肯をするヘリオスフィアを目に焼き付けてから、フレックはジェゴへ微笑んだ。
「よろしくお願いします、ジェゴ卿」
「あ、はい!」
自分とはまた少し色味の違う黒い目が以前より輝いてる。
これは増々同士とあって、フレックは気軽にジェゴに話し掛ける。
「ところでジェゴ卿は魔力暴走持ちのようですね」
先日の模擬戦の際、フレックは魔法騎士団に魔力暴走の者が多い事を知った。
一部からは危険な行為だと言われているが、そんなこと知らないフレックはこいつは一番いい方法だなーと、ヘリオスフィアを想い納得していた。
なにせ魔力暴走は暴走故に制御が出来ない。
創り出された魔力を消費するか、魔道具を頼るかしかないのだ。
ヘリオスフィアは強靭な精神力である程度制御できるようだが、完全とまではいかない。
フレックのような特異体質の者を傍に置くという手もあるが、それなら魔力を当然と消費する場所に所属する方が自然であり楽な筈。
それに同じ特異体質の者が居るという事は、彼らを気楽にしているに違ない。
きっとそんな感じだから、ヘリオスフィアも気が楽なんだろう。
フレックはそう考えた。
恐ろしいことにその考えは正解であり、ヘリオスフィアを頂点に軽度な魔力暴走持ちの者達の結束は固かった。
そしてジェゴもまた、軽度の魔力暴走持ちであった。
「お、おわかるになるのですか…?」
「私は魔力を吸収し無属性化する特異体質の為、割と魔力感知が得意なんです」
だからこそ、フレックはヘリオスフィアの魔力暴走に誘発された者の心を心配したのだ。
まさかジェゴもそうだったとは思わなかったが、あの場の雰囲気とこの好反応に、フレックはヘリオスフィアの信頼は損なわれてないのだと安心していた。
「そう、なんですね…私は魔道具で抑える程度なので」
そう言ってジェゴが腰に差したナイフに触れる。
実用性の無さそうな装飾が施されていた刃物、のような物。
今ってそんな感じなんだー、と以前ニューノ家にあった大きな魔道具を思い出す。
かなり高価な物でメンテナンスも大変なんだ、とヘリオスフィアが申し訳無さそうに言うもんだから、フレックは俺がずっと一緒に居るから大丈夫って返した思い出蘇る。
あれからこれ、随分進化したもんだぁと思ったが、魔道具だって限界はあるだろう。
だからおもんばかって気を遣う。
だってこれは巡り巡ってヘリオスフィアに繋がることだから。
「お困りの際は是非頼って下さい。ああ、魔法騎士の方々も勿論」
「各員注意しあっておりますので、ご心配頂き誠にありがとうございます…何か、あれば、お頼り申し上げます」
深々一礼の後、上がった顔の瞳はすごく優しかった。
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